『兄の消息が分からず、遺産相続で困っています。』

自由民主党月刊女性誌『りぶる』2024年12月号

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トランプ圧勝、玉木雄一郎氏の不倫スキャンダルについて思うこと

 ある程度予想していたが、共和党トランプが当選した。8年前はヒラリー・クリントンに得票総数で負けながら、州総取りというアメリカの選挙制度のおかげで選挙人獲得数で勝ったのだが、今回は得票総数でも圧勝し、揺れる州(スウィングステート)7州もすべてトランプが勝利した。一時はリードしているようにも報道されたハリスの敗因は、予備選を経ていないこと、また能力的に根強い懸念があること(経済については答えられなかったし、副大統領としての実績も何もない)、またハリス個人が魅力に乏しかった。なんという笑い方…! やはり女性初の米国大統領になるからには、エレガンスが欲しい。サッチャークラスの出現は望むべくもないが、やはり女性としての魅力があることが人間としての魅力にも繋がる。なにせ国の代表、どころか世界の代表になるのである。

 トランプのやり方は皆がもう知っている。アメリカ第一主義で国際協調などどうでもよい。日米同盟など歯牙にも掛けないだろう。ウクライナ支援からも手を引くだろう。日本はこの後どうするのだろうか。安倍さんとは個人的に仲が良かったが、石破さんとはケミストリーが合わないし(自民党の中でも友達が本当にいないと言われている)、まして長くもちそうもないときては、カウンターパートとして重宝されるとはとうてい思えない。政府を支える外務省はもちろん民間にも是非支援をしてほしいと願っている。

 ところで今回の総選挙で俄にキャスティングボートを握る立ち位置に立った国民民主党の玉木さん。11日の特別国会召集に合わせて、ウェブフラッシュに女性関係のスキャンダルが掲載された。相手の女性は39歳(玉木さんより16歳下)で元グラビアアイドル、高松観光大使を務めている。掲載内容は、この7月末、高松のホテルで同宿したこと、加えて10月30日(総選挙の3日後)新宿のワインバーで密会したこと(フラッシュなので当然ながら写真付きである)。玉木さんは即日釈明会見を開いたが、二人の関係は結構長く(記事では2年来噂になっていたとのこと)、自ら相手に好意を抱いていたことなどが明らかになった。玉木さんは結婚指輪をしておらず、実はずっと前からしていないとの指摘もある(よく見ているなあ)。

 私の周りの男性は、「モテ期だね」「羨ましい」「いい男だし仕方がない」(←全然思わないけど、それは個人の趣味なので)…女性のほうは「奥さんに選挙区守らせて、老いた両親の面倒も見させて(立派な日本家屋に同居しているようである)、自分は勝手なことをやってひどすぎる」「9月に催された政治家15周年パーティには奥さんも女性もよんでそれぞれ挨拶させているって、気持ち悪すぎる」と不評である。おそらくこの記事が総選挙前に出ていれば、玉木さん個人の党ともいえる国民民主党がここまで票を伸ばすことはなかったはずだ。有権者もすっかり騙されていたわけである。

 ここで話を整理しないといけないと思うのだが、不倫は民法では「不貞行為」(770条)といい、配偶者以外との性行為はすべて不貞行為となって離婚原因になるのである。不法行為なので、もちろん慰謝料も取れる。「ええっ? トルコに行くのもそうなんですか!?」と聞いてきた知人がいたので、「もちろんよ」と答えたら本当にもうびっくりしていた。つまりそういう一過性のものは単なる性欲の処理であって離婚原因になどなりようがなく、対して不倫というのは恋愛感情などを伴う継続的な関係を意味し、許されないと思っていたようなのだ。この感覚だと、例えば女性から誘われてたまたまそういう関係を持ってしまったことは後腐れさえなければよいのである。もちろん政治家がハニートラップに引っかかれば由々しき問題であり、玉木さんもハニートラップに引っかかるのはダメだと公言していた。

 配偶者以外の異性と親しくなり、継続的に性関係を持つ場合は、徐々に家に帰らなくなり夫婦関係にもひびが入っていく。なにせ今は3組に1組の夫婦が離婚するのである。玉木さんは自分でも認めていたし(奥さんにとっては辛いことだが)、そうでなければ何年も続かないので、彼女を好きなのである。大好きなのであろう。だからこそ、総選挙後の、皆に注目されている最中でもわざわざ彼女に会いに行くという危険を冒したのであろう(仕事をドタキャンまでしたらしい)。夫婦がたとえ熱烈な恋愛で一緒になったとしてもそんな感情などいつまでも続くはずはなく、そのうちに別の人に恋愛感情をもつに至ること自体はよくあることである。夫婦の間にあるのは「生活」であり、よくて「尊敬」であって、これは恋愛感情という大きなエネルギーとは比較にならない。玉木さんが一般人であれば、妻との間は自然と遠ざかり、離婚して新しい女と再婚するということは十分にありえると思われる。

 ところが、彼の場合はそうはいかない事情がある。高松に選挙区を持ち、そこに妻子がおり(成人して大学を卒業しているはずの一人息子はもう家を出ていると思われるが)、なんと妻には自分の両親と同居してもらい、面倒を見てもらっているのである。もちろん彼が東京にいる間、妻はいわば城代家老として選挙区の活動に鋭意関わっている。断っておくが、地方に選挙区がある国会議員の場合それが普通の形態かといえば、全くもってそうではない。そもそも女性国会議員であれば夫に選挙区に詰めてもらうことなどできないし、男性議員でも独身あり、やもめも離婚した人もいる。また普通に妻がいても選挙には一切関わらないと公言して表には一切出てこない人もいる。それはそれでいろいろな人が政治活動を手伝い、当選もさせているのである。まして老親と嫁を同居させて面倒を見てもらうなど普通のこととは思えない。娘がいれば娘と同居するのが世間一般の風潮だし、長男だから親と同居して面倒を見なければならない道理もない。玉木さんの奥さんは滅私奉公的な、本当に出来た人だと思う。まあ、それだけ玉木さんを好きなのだろうし、尊敬もしているのであろう。それこそが彼女の選んだ生き方なのである。

 玉木さんがその妻の特別な厚情に心から感謝し、一個の人格として尊重しているのであれば、誰にも恋愛感情をもたないままでいるべきだった。もし誰かを好きになっても決してそれ以上深入りすることはないよう精神的なものに留めておくべきであった。もちろんそうはいっても相手もいることだし、もちろん政治家以前に人間ではあるのだから、不幸にもそうはいかなかった場合は、決して周囲にばれないように、細心の注意を払うべきだった。もしずっとばれなければ、それはなかったことと等しいし、それだけの努力をしたことは尊重に値すると考えるからである。だが、今回明らかになった行動を見ていると、容易にばれる。つまり、本人がどう弁明したところで、ばれてもいいやくらいには思っているのであろう。はっきりいって浅はかである。政治家以前に、そもそも人間として信頼できないなあというのが率直な感想である。

 自分の欲望の赴くままに行動し、奥さんに(たぶん相手の女性にも)多くの負担を強いている人が、国民の面倒は見られるのかといえば、およそ違うだろう。最も身近にいて大切にすべき人を裏切る者が、直接には関係のない国民を大事にできるはずはないのである。自分はとても優秀でこの国を率いていくだけの力量があるとおそらく考えているのであろうが、それが自惚れに過ぎないということが今回図らずも露呈されたと感じる。夫婦間の話であるから妻が形だけは許してこれからもやっていくという結論を取るのかもしれないが、いったん生じた夫婦間の大きな亀裂は修復できるものではない。奥さん次第として、ここはきっぱり別れて人生をやり直すという選択肢もあり、もちろんそうなったら、もう当選は難しいだろうが、それは身から出た錆というものである。人間は誰であれ自分のやったことに責任を取らねばならない。中でも国民の代表たるもの、当然そうであろう。

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総選挙が終わり、いろいろ思うこと

 もうずいぶん前のことのように感じるが、まだ1週間余である。先月27日総選挙の結果、自民党は惨敗した。選挙前勢力247議席から191議席に(小選挙区132+比例区59)。公明党も32議席から24議席に(新代表まで埼玉の小選挙区で落選した)。自公合計215議席は、選挙前目標の自公で過半数(=233議席)を大きく割り込んでいる。片や立憲民主は98議席から148議席に大躍進、同様に国民民主も7議席の4倍、28議席となりキャスティングボートを握る立ち位置となった。

 自民党惨敗については、非公認議員の政党支部口座宛に自民党本部から2000万円が振り込まれたという、選挙終盤報道が大きく影響したと思われる(赤旗へのリークらしい)。立憲の枝野さんいわく、それを境に空気が変わったと。たぶんこれがなければ、ぎりぎり自公で過半数はクリアしたのではないか。この原資は政党助成金で、各支部口座宛に年に何度か振り込まれており、支部=現議員ではないし、選挙の際の公認非公認とは別物であるが、こんな時期に振り込まれれば誰だって、非公認にしたのは選挙向けの体裁だけで実際は違うんだよね、インチキだと思うはずだ(変な話、選挙後に振り込まれれば少なくとも選挙に影響することはなかった)。総選挙は、国政をどう進めるかが争点になるはずなのに、立憲の野田さんは金の問題に絞ることにし、結局はそれが効を奏したことになるが、そもそも野党共闘の姿勢はほぼ示されず、政権奪還の意図もないことが明らかだったので、今回議席が増えたことは敵失による消極的勝利ということになるだろう。

 新総理が掲げた目標が達成出来なかった以上、普通の組織と同様、彼は総理を辞めるのだろうと思っていた。となると、総裁選をまた実施しなければならないが、今度は9月のような大がかりなものではなく、両院協議会を開いて進めればよいのである。しかし、そんな動きはまったくなかったし、11日召集の特別国会(首班指名)もすぐである。つまり、このまま自民党(公明党も)は一致団結して石破さんを指名することになる(心情的に嫌な人も多いだろうが)。一つには、この政治資金不記載問題は岸田さんの時に起こったものであり、石破さんの責任ではないということ(岸田さんが総裁に再選され、解散を打った場合、これ以上負けていたかもしれないのである)。また一つには、今総裁を引き受ける者がいないということだ。先の総裁選で次点だった高市さんの同志は安倍派が多く、今回その多くが落選したし、また他の誰もこんな時期のいわば泥船には乗りたくない。悪くすると、総理どころか、野党の党首になるかもしれないのである(そういう自民党党首もいた)。

 報道によると、自公と国民民主との政策協議が始まっている。党首の玉木さんはもともと自民党寄りであり、自公と連立を組んで主要大臣ポストが欲しいかもしれないが、党自体一枚岩ではなく立憲同様の連合寄り議員も半数いるので、そんなことをすると党が割れるおそれもある。来年は参院選でもあり、今のところは急いで連立を組むことなく様子見をするのが得策であろう。よって、首班指名の最初の投票で過半数を占める者はおらず、上位2人(石破・野田)の決選投票に持ち込まれることになる。野党が全員示し合わせれば野田総理が誕生しそうなものだが、そんな気配はまるでなく、決選投票でも各党それぞれの党首の名前を書くそうである。つまり当然のようにそれらは無効票になるので、母数が小さくなる結果、石破さんが首班に指名されるらしい。おそらく、来年通常国会での予算審議・成立と引き替えに石破さんは辞めることになるのではないか。来春には都議選があり、また7月には参院選がある。各党ここは党勢拡大の正念場なのである。

 落選議員は、議員会館事務所を10月末日限り退所せねばならなかった(議員宿舎も同様であろう)。なので、30日に親しい議員方を挨拶に回ったら、フロアに大量の段ボールが積まれ、どこも大騒動であった。こんなに一気にメンバーが替わったことはこれまでなかった。いわゆる実力者まで落選し、肩で風を切る姿ももはや見られない。秘書も一瞬にして失職し、落選議員が多いのだからよその秘書ポストも空かないし、次の就職先を見つけるのも容易ではない。議員自身、この際議員を辞める決心がつくのであれば、いろいろなことを整理し、今後の自身の身の振り方を考えていけばよいが、捲土重来を期す場合はそうはいかない。東京事務所は議員会館が使えないのでどこかに見つけることになるだろうし、秘書もある程度は残しておかないといけない。何よりも自らの議員報酬も公設秘書給与も、政党助成金や文書交通費も一切なくなるのである。寄付だって、現職の時ほど集まるはずもない。無料のJRパスもない。

 とにかく定額収入がなくなるのだから、これほどの大打撃もない。次の選挙はいつなのか。衆参同日選挙になるのであれば1年弱だが、万一解散を打てなかった場合、4年近い長丁場になる。その間の厖大なお金はどうするのか。次回は絶対に当選するかといえば、選挙は風の影響も多々受けるので、その保障などありはしない。落選はまさに地獄なのである。外に出るのも嫌になる、人に会えなくなるとも聞く。とにかく健康に気をつけて、それぞれにとって最善の道を選ばれ、進まれることを切に願っている。

 

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『老後が心配で、まとまったお金が欲しいのですが…。』

自由民主党月刊女性誌『りぶる』2024年11月号

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総選挙今日公示、「袴田事件」に思うこと

 今日15日公示、27日(日)総選挙である。衆院は12日しかないのだ(参院の場合は告示といい、17日ある)。この1日に臨時国会が始まり、9日には解散(史上最短)。自身も最初言っていたし野党の要望でもあった予算委員会を実施しなかったのは、やればやるほど埃が出るからだろうか…? とはいえ何もしなければご祝儀相場で支持率が上がるというわけでもなく、自公併せて過半数維持(=233議席)の目標が達成できるかどうか、なかなか厳しいようである。そもそもこの目標は本来低めの設定のはずである。解散時、自民256、公明32と併せて288議席、つまり55議席を失う計算なのだから。

 なぜこれだけ厳しくなったのか。根本的な理由は、総理がブレているからだと思われる。当初思いつきのように、裏金議員は全員非公認にすると言い、すぐに訂正した。この件についてはすでに4月、党紀委員会で一定数について処分済みである(計39人。500万円以上不記載をボーダーラインとして一番軽いのを「戒告」とした)。故にもうそれはなしということになったのに、世論調査の結果が良くないからと覆し、戒告にもならず幹事長の厳重注意で済んだ議員についてまで、比例重複立候補を認めない措置を執行部は決めた。この措置は、選挙区での当選が厳しい議員については生命線に関わるが、当選すれば禊ぎは済んだとするのであれば、一応は成り立つ理屈である。非公認は6人(離党勧告を受けて離党済みの議員はもちろん除く)。

 問題はこの先である。9日、党執行部から一次公認リストが関係各所にFAXされたという。この中に、比例重複立候補禁止のうえにさらに非公認とされた議員が6人いたわけだが、当の本人には何の説明もなかったのである!! 自らに関する重大決定を、FAXを見た人から連絡を受けて知るなど、失礼にも程があろう。候補者を推薦し、党本部に公認申請をした県連にも何の連絡もなかったという。まさかあ、仁義を欠きすぎている…! 党の公認を受けるか受けないかは、公認料の有無や供託金の準備、政見放送の可否、ポスターの貼付場所その他、とにかく天と地ほどの差異があるのである。ポスターだってもう作成済みで、損害たるや半端ない。もし非公認にするのであれば、もっとずっと前にしなければならない。党が発表した「調査したら当選の見込みが全くなかったから」で済む話ではないのである。比例単独立候補者の場合はどうなるのだろうと思っていたら、出馬辞退という形を取らされたという。無念の涙、いや怨念があちこちに大量に散らばっているはずだ。こうした仁義を欠いた結末が、良かった試しは歴史上、ないと思われる。

 法律家故かもしれないが、私が大いに引っかかっているのは、自民党紀律規約第9条2項の規定である。党紀委員会の処分は、重い順に①除名、②離党勧告、③党員資格停止、④選挙における非公認、⑤国会及び政府の役職の辞任勧告、⑥党の役職停止、⑦戒告、⑧党則の遵守の勧告 となっている。この度非公認とされた議員が③以上の処分を受けている者であればよいが、⑤以下であれば(今回追加された6人は全員そうである。どころか党紀委員会の処分の対象でさえなかった議員もいる)、二重処罰の禁止(一事不再理)に触れる。岸田総裁の下でも石破総裁でも同じ組織である。これが妥当するのは刑罰の場合でしょうと言う人もいるが、懲戒処分でも理屈は同じであり、同じ事実で再度処分することは法的安定性を著しく害する。民事事件でも既判力が及んで同じ訴えは起こせない。そんなことは法治国家としては論ずるまでもなく当然と思われる。まるで北朝鮮のような独裁国家だよな、結局は安倍派パージだよ、党内分裂は必至、誰も石破さんを支えようなんて思わない…という不穏な空気が流れていては、この短期決戦を無事に戦えようはずもない。自公過半数が達成できなければ、野党のどこかと連立を組まざるをえないことになるが、もしかしてそのシナリオはすでに織り込み済みなのだろうか。

 さて「袴田事件」。1966(昭和41)年に静岡県清水市(当時)で発生した事件だが、マスコミで問題にされ始めた当初から私は彼は冤罪だろうと思っていた。動機がないのである。元プロボクサーである袴田巌さん(当時30歳)が、雇い主である味噌製造会社の専務一家4人を強盗殺人目的で惨殺したうえ、証拠隠滅のために放火したとされる重大凶悪事件なのに、奪われた金員についてもはっきりしない。残忍な殺害状況を見るに、動機は金ではなく深い怨恨だというのは捜査のイロハである。拷問及び見込み捜査で悪名高かった静岡県警はこの他にも再審無罪事件をいくつも起こしているが、パジャマを着て、こんな大それた罪を犯す者はいない。犯行に使ったとされるくり小刀ではこの深い傷は出来ない。令状を取り捜索場所とされた味噌工場から出てこなかった衣類5点(血染めというほどではないが血がついている)が、逮捕後1年2ヶ月も経った公判中に味噌タンクから発見された。すると検察は冒頭陳述をその旨変更したのである(信じられない)。そんな怪しさ満載の証拠関係なのに、静岡地裁は袴田さんの自白調書について1点を除いて排斥したうえ有罪認定をし、死刑を言い渡した。無罪を確信していた左陪席は裁判長と右陪席の説得が叶わず、良心に反した判決を書き、悩んだ末7ヶ月後に裁判官を辞職し、以後ずっと良心の呵責に苛まされた…。

 10年前に静岡地裁で再審開始決定が出され(衣類5点については捜査側の捏造の可能性が高いとされた)、死刑執行の停止ばかりか勾留の執行停止までなされて、袴田さんは48年ぶりに釈放された。以後なかなか進まず、今年9月末に静岡地裁が再審無罪判決を出すまでにまた10年の歳月が流れた。この判決では「可能性」には留まらず「捜査側(警察及び検察)の捏造」とまで言い切ったのには少なからず驚いた。その証拠もないのである。被告人に被せた罪が危うくなってきて焦った真犯人の捏造かもしれないのである。検察としては、そこは意地でも控訴したいところではないかと憂えていたが、結局人道的見地から控訴は断念した旨、8日、発表された。

 袴田さん、現在88歳。福々しくて見ていて有り難いが、半世紀以上に及ぶあまりに長すぎる戦いであった。弟を終始支えたのはすぐ上の姉、ひで子さん91歳。背筋がぴんと伸び、声もしゃんとしていて、長生きの見本のような人である。大事件の再審無罪判決が出る度に思うのは、真犯人はどうしたのか、ということである。杜撰な決め打ち捜査のために、肝心の真犯人は逃げおおせたわけだ。何しろ58年前の事件であり、死んでいる可能性も高いし、証拠とてもはやありはしない。どんな事件でも警察はある意味検察に送致をすればおしまいなのであり、検察としても???と思ったところでこの人は真犯人ではないでしょ、捜査をやり直してちゃんと捕まえてきてよとの指示も出せはしない。あとは裁判所が無罪とするだけである。だからといって警察は最捜査をして改めて真犯人を捕まえてくるわけではない。真犯人は逃げたままなのだ。もちろん遺族は浮かばれない。刑事司法制度はそもそも正しく的確な捜査なくしては成り立たない。

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