前に『インド寄稿』を送ってくれた友人が、今度は(たぶんヨーロッパ出張からの帰途飛行機の中で)徒然草を紐解いて、以下の文章を送ってくれました。この方は工学部出身で海外出張が多く極めて多忙であるにかかわらず、昨夏会ったときはマイケル・サンデルの「正義とは何か」を原語で読んでいて話が弾んだし(もっとも私はテレビで見、本は翻訳しか読んでいないけれど)、この春に会ったときは現代歌人の歌集を持っていたし、今回はオランダでラシュディの小説2冊を買って私にまで送ってくれるし、相当な読書家である。年をよく重ねていく人というのは向上心を持ち、勉強及び読書を怠らない人であると、今は確信している。カラオケやバカ話はかつてはよかったが、今はもう耐えられず、付き合う人も自ずと選別されてきた。人生とはつまるところ天から与えられた有限の時間であり、無駄には出来ない。自らを向上させることに使いたいものである。
1)いでやこの世にうまれては願はしかるべき事こそ多かめれ。・・・ありたき事は、まことしき文の道、作文(さくもん)・和歌・管弦(くわんげん)の道、又有職(いうそく)に、公事(くじ)の方、人の鏡ならんこそいみじかるべけれ。・・・・、下戸(げこ)ならぬこそ、男(おのこ)はよけれ。
(さてもこの世に生まれたからには・・・本格的な学問の道、漢詩・和歌・音楽の道、行儀・作法もよくでき人の手本となり、・・・全く飲めないわけではないのが男としてはよい。)
感想: ・・できたのは・・『下戸ならぬこそ』・・くらいかな・・。
2)よろづにいみじくとも、色好まざらん男(おのこ)は、いとさうざうしく、玉の巵(さかづき)の当(そこ)なき心地ぞすべき。
(万事に優れていても恋心の情緒を解しないような男はまことに物足りなくてまるで底のない玉の杯のような感じがするに違いない。)
感想: 同感・・。
3)世の人に心まどはす事、色欲にはしかず。・・・・久米の仙人の、物洗ふ女の脛(はぎ)の白きを見て通を失ひけんは・・・さもあらんかし。
(この世の人の心を惑わすことで色欲に及ぶものはない。・・・久米の仙人が神通力を失ったのは女性のふくらはぎを見て・・・。)
感想: 久米の仙人はその後、又、やり直して久米寺ひらいたらしいけど・・後藤田さんはどうかな・・・。
4)折節(をりふし)のうつりかはるこそ、ものごとにあはれなり。・・・六月(みなつき)の比(ころ)、あやしき家にゆふがおの白く見えて、蚊遣火(かやりび)ふすぶるもあはれなり。六月祓(みなつきばらへ)又をかし。七夕まつるこそなまめかしけれ。
(季節の移りかわるさまこそは、何事につけても情緒深いものである。・・六月の大祓の行事(邪気払いの行事)も又、趣のあるものだ。)
感想: 同感・・それにつけても・・政治家・・大祓(おおはらえ)・・したい・・。
5)しづかに思へば、よろづにすぎにしかたの恋しさのみぞせんかたなき。
(心静かに思えば、何事につけても過ぎ去った事の恋しさばかりがどうしようもなく切なく感じられる。)
感想: 同感
6)或る人、法然上人に、『念仏の時、睡(ねぶり)にをかされて行を怠り侍る事、いかがして、この障(さは)りをやめ侍らん』と申しければ、『目のさめたらんほど、念仏し給へ』と答えられたりける、いと尊(たふと)かりけり。
(念仏のとき、眠気におそわれて勤行(ごんぎょう)を怠る事がございますがどうやってこの妨げをなくしましょうか?と申し上げたところ『目の覚めている間、念仏なさい』とお答えになったのは大変尊いことであった。)
感想: ・・こういう社長いないかな・・・。
7)『すべて何も皆、ことのととのほりたるはあしき事なり。し残したるを、さてうち置きたるは、面白く、いきのぶるわざなり。内裏造らるるにも必ず作り果てぬ所を残す事なり』と、或る人申し侍りしなり。先賢の作れる内外の文にも、章段の欠けたる事のみこそ侍れ。
(およそ何事もみな、完全に整っているのは悪いことである。し残したことをそのままうっちゃっておいたのは、趣があり命の延びる気持ちのするものである。昔の賢人の著した書物のも章や段の欠けている事がずいぶんあります。)
感想: ・・そうか・・し残しいっぱいあるけど・・良かった・・。
8)寸陰惜しむ人なし。これよく知れるか、愚かなるか。・・・その余りの暇幾(いとまいく)ばくならぬうちに、無益の事をなし、無益の事を言ひ、無益の事を思惟(しゆい)して時を移すのみならず、日を消(せう)し、月をわたりて、一生を送る、尤も愚かなり。
(わずかの時間を惜しむ人はいない。これはよくわかっているせいなのか、それとも愚かであるためなのか。・・役にも立たぬことをして、役にも立たぬことを言い、役にもたたぬ事を考えて時間を過ごすだけでなく、月日を過ごして一生を終えるのは愚かなことである。)
感想: ・・そんな事言われても・・役にも立たない事が面白いのに・・・。
9)思ふべし、人の身に、止むことを得ずしいとなむ所、第一に食ふ物、第二に着る物、第三に居る所なり。人間の大事、この三つに過ぎず。餓えず、寒からず、風雨にをかされずして、閑(しづか)に過ぐすを楽(たのしひ)とす。ただし人皆病(やまひ)あり。・・・薬を加えて四つの事、求め得ざるを貧しとす。この四つ欠けざるを富めりとす。この四つの外(ほか)を求め営むを驕(おご)りとす。
(人間に大事なことは居、食、住に薬。これ以外を求めてあくせくするのはぜいたくである。)
感想: ・・まあ・・暑いのぐらい・・我慢するかな・・。昔はエアコンなかったし・・。
しかし、裁判所にまで冷房が入らないとなったのは、おそろしいことである。昨日は午後いっぱい尋問。Tシャツでよいのだが、扇子で煽ぎながら水も飲みながら、それでも熱中症になりそうだった。この間裁判官は法衣を着ておられるにかかわらず、ずっと行儀よくされていて、扇子も水もなし。頭が下がる思いであった。明日は午前午後ともに調停。木曜の大学も冷房は入らないし、金曜午後の調停ももちろん冷房はない。