民主主義,政党政治はどこに行ったのか

 昨日,消費税を上げる法案が衆院で可決した。増税は3年前の選挙での民主党マニフェスト(選挙公約)には掲げられていなかった。どころか野田総理自身,自らの選挙演説において,増税はしない,やるとしたらまずは天下りなどの無駄を徹底的に省いてからだと明言していた。つまりは選挙公約違反であり,投票した国民への裏切り行為,詐欺みたいなものである。

 いずれ消費税を上げなければいけないであろうことは多くの国民が理解している。しかしそれには国民を納得させるべき手続きが必要だ。国民に痛みを分かち合ってもらうためには,先にやるべきは膨大な無駄使いの見直しであり,国会議員の定数削減や歳費の切り下げなど,課題はたくさんある。最高裁に違憲判断をされた定数是正もうっちゃられたまま,災害復興も押しやられたまま,ただあるのは財務省主導による増税のみだ。民意はないがしろ。民主主義は一体どこにいったのだろう。

 しかも肝心の民主党は分裂だ。野党自民党・公明党一致の賛成で,いわば密室での談合協議は,政党政治を完全に逸脱している。野田総理は国民への説得を放棄し(というより,はなから念頭になかったのであろう),党内向け説得に終始していた。政治生命を賭けるとか,私が全責任を取るとか,福島の復興なくして日本の発展はない,など言葉の軽さもまさにここに極まれり。大体,この人が総理でいるのは一体いつまでか,そもそも次の選挙で落選するかもしれないのに,である。

 野党の頭にあるのはただ一つ,「解散・総選挙」。民主党に幻滅した国民が自分たちに戻ってきてくれると,本当に信じているようである。しかし,国民はひとり民主党に幻滅しているだけではなく,既存の政党に,日本の政治システムそのものに幻滅している。総選挙になったら,どこに入れたらよいのだろうと,皆真剣に憂えている。その受け皿が橋下新党であり,石原新党であり,そこから擁立されるであろうおそらくは有象無象の新米たちというのは悲しい図柄だ。どんな職業であれ,経験が必要である。それが政治ともなれば,財政・外交・防衛その他多くの分野にわたる多角的な経営が必須であり,百戦錬磨の経験が必要だ。暗澹たる思いがする。

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