このところ大相撲に嵌っている。7年ほど前から縁あって国技館に誘ってもらえるようになったのがきっかけだ。枡席だと飲み食いをしながら楽しめる。砂被り席では飲み食いはできないけれど、身近に力士を見ることができる。観客も一体となって楽しめるのは、他のスポーツにはない感覚のように思う。つまりスポーツではあるが、本質は興業であろう(だから、八百長云々を厳格に言うのは当らないと思うのだ)。今場所は幸い2回も国技館で観戦することができた(3日目と13日目)。
さて当初から安馬はいた。後に転じて、日馬富士。大きな力士が占める中、100キロに満たない安馬はひとり目立って細身で、これではいくら技があっても上に行くには無理であろうと思っていた。なにせ相撲には体重制限がない。大きな力士のほうが得なのは明らかだからだ。しかし、彼はいつの間にか体を大きくし、130キロを超えた。顔つきもずいぶんと変わった。そしてついに、白鵬との全勝対決を制した前回の名古屋場所で、全勝優勝を遂げた。
今場所の成績次第では横綱昇進の期待がかかる中、彼は一番一番、「全身全霊」で勝ち続けた。全勝で迎えた千秋楽結びの一番。白鵬が右手で回しを掴み、明らかに有利な態勢になったのを腕をまき変え、こらえにこらえて、最後下手投げで試合を制した。1分50秒の熱戦。直後、土俵に額をつけたのは「土俵の神様にお礼を言った」らしい。130キロ超えは白鵬の150キロ超えより20キロも軽い。身長188センチは、白鵬の192センチより6センチ低い。明らかに一周り小さい力士が、強い横綱に勝ったのである。努力、執念…それが彼をここまでにした。
幕内力士約40人中、日馬富士は今でも下から二番目の軽量だ(一番軽いのは、96キロの隆の山。チェコ出身)。軽量力士でも頂点に上り詰めることが出来る。日馬富士は、やはり軽量級だった初代貴乃花を尊敬し、ビデオを丹念に研究していたそうである。ちなみに、大関で2場所連続全勝優勝を遂げたのは、双葉山、二代目貴乃花に継いで3人目の快挙だという。とにかく、すごいことである。
モンゴル力士2人の横綱ではちっとも嬉しくないと言っている人も、たしかにいる。しかし、国際化の時代である。日本の国技とはいえ国籍は関係ないであろう。どころか、チャンスは日本人力士にも同様に与えられているのだ。願わくば日馬富士の根性を見習って、みなが相撲道に邁進してもらいたい。それこそが日本の国技をもっとずっと面白く、盛んにしていく原動力になるはずである。