この9日午後1時?青山葬儀所で中曽根康弘元総理夫人の告別式が行われた。享年91歳、綺麗な白髪の美しい遺影が飾られれている。喪主94歳。
まずは故人が生前大好きだったという「聖母(マドンナ)の宝石」がしめやかに流される。私も大好きな音楽である。弔辞は2人。引退して少し前叙勲された島村元大臣と婦人会の代表である。地質学者の3女だった故人は当時康弘氏が官僚だったので安心して?嫁いだが、夫はじきに選挙に次ぐ選挙の生活、群馬で留守を預かる夫人は大変なご苦労をされたという。夫が戻ってくると駅まで自転車に迎えに行き、小柄な妻が大柄な夫を乗せていたという光景。自転車はその後自動車になったが、その時間が夫妻には掛け替えのない時であったという。康弘氏が俳句も俳画も嗜む趣味人であることはつとに知られているが、中で島村元大臣の披露された一句がこれである。「眠り落つ妻の寝息や秋深し」。
俳句を嗜む友人にこの句を送ると、妻への情愛、感謝の念がよく表れている素晴らしい句であると感心した。そしてまた、日本にもかつて、総理になるべくしてなった方がいたのだなと。野田氏は、普通の人でも努力すれば総理になれるという見本ではあるだろうが、普通の人が総理になってはいけないのだと。中曽根元総理とは私が14年前に参院議員になって以来、派閥が同じということもあってお話を賜る機会も何度かあったのだが、いつも威風堂々、かくしゃくとされていた。教養と人格に裏づけされた深い言葉であった。懇親会で、みなが演歌を歌っているときに、フランス語で「枯葉」を歌われたとき、すでに氏は80歳を回っておられたのだと改めて思い起こした。
94歳の氏は椅子に座ってはおられたが、最後の御挨拶、一語一語しっかりと亡き妻に語りかけられた。蔦子の命名の意味を両親に尋ねたところ、しっかりと夫を支える意味で名づけたとの話も披露された。尊敬と情愛と感謝に満ちた結婚生活を全うされた、古き佳きご夫妻の姿であった。合掌。