色々あった1年でした

 あっという間に今年も残すところあと3日。その早さにはただただ唖然とするばかりである。国内外で実に色々なことが起こり,私自身にも色々なことが起こったのだが,振り返って私には特別な年になったような気がする。一言で言えば「成長した」。この年になっていまさら成長もないだろうが,きっと人は死ぬまで成長ないし変化を続ける生き物なのだろうと思う。

 近頃ふと(一部の人を除いて)大方はみなそれぞれに一生懸命に生きているのだ,とつくづく思うようになった。今年のベストセラー「置かれた場所で咲きなさい」(渡辺和子著)の実践である。気がつけば,大方の人は丁寧で礼儀正しく,かつ優しいのである。私の身近にもいくつもいい話があるのだが,報道されたものから一つ。飼主を10日間待ち続けて痩せてしまった犬のことが報道されると問い合わせが相次ぎ,引取り希望が60件,うち最適者と思われた家からは3人が犬を迎えに来たという。犬は早速新飼主の手を舐め甘えていたという。優しさは気持ちの余裕の表れである。自分のことで精一杯の者・もともとの自己中心主義者は他者を思いやれない。そう,世の中には優しい人,故に立派な人が多いのだとつくづく思うようになったのだ。

 持って生まれた性格というのはなかなか変えられないものだし,長所と短所は紙一重であったりもするので(短所がない人は往々にして面白味がないものだ),変える必要がないこともあるだろうが,結局大事なことは自らの性格を知っていることなのだと思うようになった。そうしたいとかしたくないとか自分が思うとき,その理由が分かっていれば(すなわち冷静な分析ができれば)的確に対処しやすいのである。「短気は損気」は至言だが,腹が立つ理由ないし腹を立てたあとどうなるのか(例えば,どうせ一過性ですぐに腹を立てたことも忘れてしまうのだとか腹を立てた後にきっと後悔するのだとか)が分かっていれば,抑える方向にと向かうはずである。まあ言ってみればこれが成長,つまり自分を操る方法を知るということである。世の中の多くの人はこれがきっともう出来ているのであろうが,私はようやく今からという感じである。

 今年はマリンスキーバレエ団の「ラ・バヤデール」を観たのをきっかけにバレエに嵌った。生まれ変わってどんな才能をも与えられるとしたら何になりたいか?の答えはかつて指揮者だったのだけれど,バレリーナも良いなと思うようになった。読書では英語の本を読むようになった(今さら何だといわれそうだが,安易なことには出来れば翻訳本を選んでいた)。中でベストセラー作家ジョン・グリシャム著『The Litigators』(直訳すれば訴訟人だが,法廷弁護士とでも訳すべきだろうか)は実に面白くて,ついつい夜中になってしまった。アメリカでは8割の弁護士が法廷に行かず日本で言えば行政書士・司法書士・税理士といった仕事をしていることは知っていたが,この主人公も大手法律事務所で企業法務の仕事に携わり法廷経験がなかった。それがあるとき急に仕事が嫌になって辞め,弁護士が2人しかいない町弁(street lawyers)事務所に勤めるようになったのをきっかけに法廷に行かざるをえなくなる。言ってみれば主人公の成長ストーリーなのだが,登場人物にそれぞれに癖があって引き込まれるし,アメリカの訴訟社会の病んだ一面も見れて実にお勧めである。

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