代議士の性的スキャンダルに思うこと

先月末発売のメジャーな週刊誌に載った、自民党代議士2人のいわゆる下ネタスキャンダル。1人(60歳)はキャバクラで知り合った女子大生(20歳)に対し、今年1月来ラブホで20回買春を重ね、各4万円を支払ったという。尾行されて写真も撮られ、相手の女子大生も事細かに情事の内容まで喋っていて申し開きが出来ず、国会の要職にあったのをすぐさま辞任、それでもってこれは一件落着となったようである(この代議士は以前、やはり安倍内閣で閣僚になった折り、架空の事務所経費7000万円余の計上問題が明るみに出て閣僚を辞任、その際に初めて顔が売れたようである?)。

もう1人(50歳)は、昨年夏ベトナムに公務で赴いた際、カラオケバー(日本人がよく行く店であり、女の子の売春が公然と認められているようである。)に行って7人を、宿泊中の5つ星ホテルのスイートルームに持ち帰ったうえ3人を残し、共にシャワーを浴び、同時にマッサージをさせ、そのあとそれぞれと性交渉に及び、6万円位をチップとして支払ったのだという。彼らが諜報部員でないという保障はどこにもない。しかもベトナムでは(日本やタイとは違い)依然売買春は刑法犯であり、国会議員が罪を犯したという重大な事案であるにかかわらず、依然政府の要職にある。官房長官の弁では、本人は事実を否定しているというのである。

まずもってマスコミが国会議員の私生活(後者については公務出張中のことであり、公務として提供された場所を使っているので私生活ともいえない。)を暴き立てることは、その事実が虚偽でない限り名誉毀損にはならない(刑法230条の2)。私人については、指摘事実がたとえ真実であったとしても名誉毀損は成立するが(同230条)、公人(議員、公務員ばかりか議員候補者も含む。)については、憲法の定める「表現の自由」(21条)に資する国民の「知る権利」を保障するため、指摘事実が真実でありさえすれば報道側の違法性は阻却され、名誉毀損は成立しないのである。真実であることの立証まではできなくても、十分に取材した結果真実であると誤信したことに相当な理由があれば名誉毀損の故意を欠くとされ、犯罪が成立しないという結果は同じである。

この理は民事の損害賠償請求にも妥当し、報道側は以上の証明ができさえすれば、たとえ訴訟を起こされても損害賠償(慰謝料)を支払う立場にはない。もちろんその手法として望遠レンズで寝室まで覗いたというのであればプライバシーの権利を侵害しているので損害賠償が発生する(名誉毀損とは別の問題である)。こうしたことはよく知られており、賠償額もだんだん跳ね上がってきて1000万円クラスの慰謝料もさほど珍しくなくなったので、今時報道側もまったくのねつ造などはしないのが実態である。

さて弁解通り、報道された事実が真実ではないというのであれば(根本部分が真実であるか否かであり、細かい部分の相違を問わないというのは判例上確立している。)、報道側を名誉毀損で告訴しなければならない。それとともに損害賠償請求も起こすのが通常であろう。しかし今に至るもそうした報道はなく、何のリアクションも起こしてないこと自体が事実を真実であると認めている証左というべきである。

報道事実が真実であると知って、報道側を名誉毀損で告訴すれば虚偽告訴罪となる(刑法172条)。「3月以上10年以下の懲役」であり、名誉毀損の「3年以下の懲役・禁固又は50万円以下の罰金」と比較して格段に重い犯罪である。という以前に、肝心の週刊誌が発行される前に発行禁止の仮処分を打つべきである。いったん発行されてしまえば、あとでいくら謝罪記事が出ても遅いのはいわば常識だからである。もちろん報道事実が虚偽であるとの資料が揃えば、の話であり、真実である限りもともと議員に関する報道については名誉毀損が成立しないので、発行禁止にはしようがない。

はてさて、そうした法律的な議論はさておいても、嘆かわしいほど品性の低い人たちである。普通のオジサンでもまっとうな人は、自分の娘よりも年下の女性相手に買春などしない。もし相手が小遣い欲しさに誘ってきたならば、説教をして道を踏み外させないようにするのが大人の務めというものであろう。売買春はそもそも互いの人格を貶める行為である(恋愛とは違うので、同じレベルのスキャンダルではありえない)。ただ自らの欲望のままに立場も自制も欠くような人が国民の代表者では国民も貶められてしまう。国会議員であるからこそ報道の対象にもなり、またその報道内容は世界中にネットで配信されている。大阪市長の発言などもこれあり、こうした言動をする政治家をもつ国であること、そしてまたその非行に対して何らの措置もとらない国というのが、世界でどのように見られるか、それがとてもこわい。

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