7月26日に少女は逮捕され、28日に送検された(その日が16歳の誕生日)。とても大事なことなのだが、少年法20条2項により、家裁の審判は、犯時16歳以上が殺人など故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪を犯した場合には、原則として刑事処分相当として検察官に送致をすることになっている(「逆送」という。もともと事件は検察官から家裁に送致されてき、それを送り直すからである)。もちろん、犯時16歳未満でも罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるときには逆送することができるが(同条1項)、少年の場合にはあくまで保護処分が原則なので、例外と原則が逆になるわけだ。
今少女は検察官による勾留により身柄を拘束されている。通常の少年事件であれば送検後10日で家裁に送致をし、その際に処分意見をつける。精神鑑定が必要であれば家裁が行う(期間は8週間を限度とする。少年法17条4項)が、事件の特異性に鑑みて地検が鑑定留置を行う方向のようである。そうしなければ処遇意見もつけられないのだが、ただ、少年法の趣旨に鑑みてそれほどの期間は取れないであろうことに加え、精神鑑定でどこまでのことが分かるか、あまり期待はできないようにも思われる。
報道合戦が凄まじく、新たにいろいろなことが明らかになっている。一番ショックだったのは、少女を診察した精神科医が児童相談所に電話をし、少女(匿名としたが特定可能な情報は伝えた)について人を殺しかねないとの危惧を伝えていたという事実である。6月のことらしい。いうまでもなく医者には守秘義務があり、めったやそこらにはそんなことはしない。少女は「人を殺したい」願望をも喋っていたのかもしれない。医者は当然ながら保護者である父親に伝えた。だが父親が意に介さず何らの措置を取らなかったので、やむにやまれず外部に報告した‥と考えるのが素直である。4月来の登校はたった3日。高校側も父親に対して一人暮らしはよくないと伝えていたという。
父親の再婚は今年1月との報道もあるが(妻が亡くなって3か月!)、5月説が多い。亡くなった後に婚活パーティで知り合ったとの報道もなされているが、知り合ってすぐに結婚に至るはずがなく、また妻が亡くなってすぐに婚活パーティーに出るという神経自体尋常ではない。3月に金属バットで襲われて入院するほどの怪我をした父親は、自らと新妻の身に危険が生じることを恐れ、危険性を知る娘をあえて外に住まわせたのは事実であろう。父親には今回の事件の予見可能性はあったし、結果回避義務があった。刑事事件の特質上父親に刑事罰を負わせるのは無理だが、民事上の責任は免れられないはずである。
急に脚光を浴びだしたサイコパス。反社会的人格障害者のことであり、残忍な事件を起こす人の大半がそうだといわれる。性格異常(ドイツ式には精神病質という)であり精神病ではないので、責任能力には問題がないとされ、故に成人であればよく死刑判決が下される。この事件は、サイコパスの中でも極め付けの快楽殺人者である。もともとの脳がそういう作りになっているのであろうが、環境次第ではそれをなんとか止めることもできたかもしれない。しかし母親が亡くなり、父親は新妻を娶って自分を放り出す。ストッパーが外れて怖いもの知らず、ただ自分の情欲に従って人を殺し、解剖をする。
成人であれば、死刑か無期懲役か。しかし年齢的に刑事処分になるのもかなり難しい。なったところで犯時18歳未満には死刑を科せられない(51条1項。18歳を僅かに越えていた光市殺人事件の犯人について死刑を回避すべきだとする理由はたった一点そこにあった)。また無期刑をもって処断すべきときにも10年以上15年以下の有期刑とすることができる(同条2項)。いずれにしてもいずれ社会復帰をしてくることは間違いがない。性格異常が治るとも思えないが、万全の環境を準備することができるのだろうか。もともと少年法は、こうした異常者に対応するようにはできていないのである。
サイコパス