大相撲秋場所終わる

たまたま白鵬対逸ノ城、世紀の取組みを見ることができた。互いに1敗で迎えた14日目(27日)、結びの一番である。場内の異様な歓声、そして静けさ。息詰まる熱戦。結果はやはり白鵬、まさに横綱相撲での完勝であった。もし白鵬が新入幕に敗れるようなことがあれば番付制度の意味がなくなり、大相撲の長い伝統が根こそぎ揺らいでしまったであろう。場内の大拍手が完勝した白鵬に惜しみなく送られた。思っていることはみな同じなのであろう。

千秋楽での国技館観戦はここ数年の恒例になっていて、続く28日はその白鵬の優勝を見届けた。なんのことはない、終わってみればやはり白鵬だ。その日の中盤、逸ノ城が安美錦に難なく勝ったので(13勝2敗である!)、万が一結びの一番で白鵬が鶴竜に敗れるようなことがあれば逸ノ城との優勝決定戦に持ち込まれる。そうみなが期待し、鶴竜コールが起こったとき、5月場所最後の光景を思い出した。日馬富士に白鵬が敗れれば白鵬対稀勢の里の優勝決定戦が行われる。稀勢の里の優勝を期待して、それはそれは大きな日馬富士コールが起こったのである。しかしやはり白鵬が勝ち、白鵬が優勝したのだった。今年は鶴竜が初優勝をした3月場所を除いて白鵬優勝、今場所31回で千代の富士の優勝回数についに並んだ(千代の富士の引退は35歳だが、白鵬はまだ29歳である)。

片や鶴竜は11勝。この後横綱として念願の優勝がついにないまま引退することになるのやもしれぬ。ちなみに大関陣は琴奨菊・稀勢の里共に9勝、新大関豪栄道は昨日ようやく勝ち越しを決めた。プロの世界はおしなべてどこも本当に厳しいが、中で大相撲が一番厳しいように思える。怪我が多いし、リーグは一つだけである。日本中が期待している遠藤は今場所僅かに3勝(うち1勝は不戦勝)。最後2日共闘志がまるで見られず、あっさり土俵を割った。どこか悪いのかもしれない。来場所は番付を大幅に落とすが、気持ちを立て直し、一から出直すつもりでやってほしいと切に願う。

今場所私は全4回観戦した。オペラやミュージカル、バレー、かつては歌舞伎に精出して通ったけれど、どちらを選ぶと言われれば大相撲である。同じスポーツでもサッカーや野球より数段好きである。なぜ大相撲なのだろうと考えていて、昨日ああそうだと思った。場内の反応、歓声と土俵が一体となった、短い、素の力のぶつかり合いが単純に心地よいからである。引き分けはなく、取り口や決まり手も数多くある。そうした快感を求めて、来年初場所も私は必ず行くだろう。まさに趣味「大相撲観戦」である。

さて御嶽山の突然の噴火。なんの前兆も警戒警報もなく、ただ気持ちの良い週末に絶好の山登りを楽しんでおられた善良な方々が、一瞬にして天国から地獄に落とされた。一人でも多くの方の無事の救出を、心から願っている。しかし山は怖いと改めて思う。自然はやはり怖いのだということを忘れてはならないのであろう。

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