新年早々,サウジアラビアとイランの国交断絶,はたまた北朝鮮の水素爆弾発射?,などなど実に慌ただしい。国会は早や4日にスタート,7月には参院選を控えているので永田町の慌ただしさも半端ではない。
昨日(成人の日)は一日家にいたので,ネットであれこれ調べ物をしていた。国際問題は一見は国同士の問題に見えても,背後に各同盟者や敵対国,各思惑や利益が絡み合い,長い歴史や背景もあって,非常に複雑だ。中東には,イスラエルを巡る長い紛争に加え,このところシリア紛争とかイスラム国の台頭など多くの問題が起こっている。背景にイスラム教義の多数派であるスンニ派(サウジアラビア)と少数派であるシーア派(イラン)の対立があることはわりとよく知られているが,その実態は,宗教対立ではなく同地域における2つの国の覇権争いにあるのだそうだ。もちろんその背後にはアメリカを筆頭として世界の大国の思惑・利益が絡む。
翻って9.11時,ブッシュ大統領は同時多発テロを戦争だと宣言したが,昨年オランド大統領もこれに倣った。敵はどちらもイスラム過激派ということになるのだろう。つまり国境もなければ国籍も不問である。かつての戦争はのどかだった。当事者はあくまで国同士。互いに宣戦布告をしたうえ(しないと国際法違反である)軍隊同士が戦い,適当なところで仲介国を立てて講和条約を結ぶ(それができない場合には無条件降伏をせざるをえない)。しかし以後,近代兵器がどんどん開発され,核兵器もあれば,見えないドローンも多用される。おまけに国ではなくイスラム過激派という思想・行動を敵とするのであれば,誰が敵なのかはっきりしない。ということは,戦争に終わりもない。
今回フランスら多国籍軍がイスラム国支配地域を精出して空爆したことにより,人はたしかに少なくなり支配地域も小さくはなった。しかし,昔と違って,今は思想自体はネットでいかようにでも拡散するので,共感し行動を共にしようとする者を防ぐことは不可能である。多くの識者が言うように,テロを予防するためには,経済格差をなくし信条・人種差別をなくすことこそが肝要なのではなかろうか。フランスは移民に対して徹底的な同化政策を採っている故にか,イスラム女性教徒のベール着用の禁止などを徹底的に行ってきた。これで反発を招かないのか危惧していたが,広い大陸の中で,ほかでもないフランスが狙い打ちされたのにはそうした背景もあったのではなかろうかと思ったりもする。
移民排斥や愛国主義といった思想・信条をおおっぴらに掲げる政党がヨーロッパ各地で勢いを伸ばしている。今年大統領戦となるアメリカでは,共和党の一番人気はなんと依然トランプ氏である。彼は如実な問題・差別発言を繰り返していて,合衆国憲法に明らかに違反するイスラム排斥も明瞭に口にしている。その人気が下がらないということは,とりもなおさず,同調する国民が多いということだ。ロシアのプーチン大統領の支持率が90パーセントと異様に高いのも,強いロシアを目指す姿勢が国民の支持を受けているからであろう。ヨーロッパは単一のEUを目指したにかかわらず,結局のところ,世界中それぞれの国がナショナリズムないしはポピュリズムを鮮明にしてきたように思われる。
外交も経済も政治も,すべてが否応なく,多様化そしてグローバル化時代に入っている。偏狭なナショナリズムに陥ることなく,しかしそれぞれの根っこをしっかり持ちながら,これらに対応していくのは誰にとっても並大抵のことではないように思われる。