この1年を振り返って

 誰もが思うことだろうが、あっという間の1年であった。
 とはいえ、昨夏弁護士業を始めた私には、実りのある1年であった。まずは、弁護士としても経営者としても、ちゃんとやれるという自信がついたのが、何よりの収穫といわねばならない。公私ともに支えてくださった多くの方々に、心から感謝したいと思う。

 この4月来大学で教えているが、これも想像していた以上に楽しくて、とても得をした気分である。
 週1回八王子にまで通うのは、事件が混み合って非常に大変な時もあれば、体調が今一つの時も実際あるが、いざ自らを励まして朝出かけてみると、夕方3コマ終わった頃には、疲弊しているどころかかえって元気溌剌になっている自分に気づかされる。
 これはどうやら、二つの仕事がそれぞれに気分転換となって、相乗効果をもたらしてくれているからだろうと思うのだ。どちらか一つの仕事に専念していれば、ストレスはうんと大きいのではないか。

 弁護士のやり甲斐は、依頼者に頼りにされ、喜ばれることである。この1年、嬉しいことがたくさんあった。
 もっとも、私自身がこれからの課題だと感じているのは、依頼者ニーズへの顧慮である。検事の時は、社会正義という絶対正義を考えていればよかった。だが、弁護士は、初めに依頼者ありき。例えば、法的には払うべき筋合いはないと考えても、依頼者がとにかく早く穏便に、そのためにはお金も払うからという場合もあれば、反対に、当方にも落ち度があるのでいくらか払うべきだと考えても、依頼者がそれでは納得ができないからとことん争うのを望む場合もある。
 昨今よく医者のインフォームドコンセントと言うが、弁護士もまた依頼者への説明義務を尽くさなければならない。法的に出来ること出来ないこと、各選択肢ごとの得失を説明したうえで、決めるのは依頼者である。でなければ、たとえ法的には最善の解決方法だとしても依頼者には不満が残ってしまう。

 来年の夢。
 法律をもっと勉強して、何にでも的確に答えられる弁護士になること。
 時間的にも余裕を作って、弁護士会の法律相談に参加できるようになること。
 趣味としては、ピアノをもっとずっと上手になること。

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