稀勢の里関、本当におめでとう!

稀勢の里、この初場所、見事に優勝しました! 14勝1敗という立派な成績。途中琴奨菊に負けただけで、千秋楽は白鵬にも見事に逆転勝ち(土俵際のすくい投げ!)、初優勝かつ横綱昇進を自らの手で勝ち取りました。14日目、結びの一番で白鵬が貴ノ岩に負けたと支度部屋で付き人から聞かされ、稀勢の里の右目に流れた一筋の涙。なんともいえず胸に迫るものがありました。

12年前大相撲に通うようになったとき、幕内には稀勢の里18歳、安馬19歳の2人がいました(もちろん白鵬もいました)。安馬は100キロにも満たない痩せ型で、いくら才能がありかつ努力しても大関止まりだよねと思っていましたが、あれよあれよと言ううちに上り詰め、全勝すら続け、そして見事横綱に昇進しました。日馬富士です。片や体格からしてもすぐにでも横綱になるよねと期待していた稀勢の里は足踏みを続け、ようやく5年前に大関に昇進、以後何度も優勝争いに絡みながら準優勝12回を重ねるのみ、下位に取りこぼしたり、白鵬との直接対決に敗れたりして、優勝には手が届きませんでした。挙げ句は、昨年初場所琴奨菊が先に優勝(14勝1敗)、9月場所では豪栄道がこれまた先に優勝(全勝)、照ノ富士はすでに優勝しているので、勝率では圧倒的に勝っている稀勢の里だけが全大関中優勝経験がないということになりました。

能力ではなく、努力でもなく、メンタル。彼のその弱さだけはどうしようもないと、皆が半ば諦めながら、それでも諦めがつかず期待を続け、そして裏切られ続けながらのこの5年間でした。稀勢の里はようやくメンタルの強さも身につけ、期待を裏切らない男に成長しました。一番苦しんだのは本人です。どれほど悩み、苦しくて、寝られない日もあったことでしょう。それら多難の日々を乗り越えて、今の栄光がある。まさに金太郎のような、「気は優しくて力持ち」。曲がったことは嫌い、真っ向から正々堂々と勝負する、誰にも負けない稽古量、まさに力士の鏡のような力士がようやく誕生しました。

稀勢の里は、怪我をしない。休場もわずかに1日だけ。包帯のない綺麗な体で土俵に立っています。相撲の神様はもう十二分に彼を強く鍛えたので、今後はきっとずっとほほえんでいてくれるでしょう。努力した者こそが報われる。正直者が勝つ。稀勢の里は私を含め数え切れない多くの人たちに希望を与えてくれました。これから多くの若い力士たちが稀勢の里を手本にして地道に精進を続けることでしょう。本当に、おめでとう。稀勢の里の上にますます幸多きことを心より祈ります。

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