「不倫」と公人

不倫とか浮気とかいうから軽く聞こえる。ではなく姦通といえば、違うはずだ。戦前の刑法には姦通罪があった(183条)。北原白秋が人妻と関係して獄に繋がれたのはよく知られた話である(弟らの奔走により夫からの告訴は取り下げになった)。現行刑法は明治40年制定、100年を軽く超えるため、この間いくつかの大改正を経ている。代表格が昭和22年の改正だ。日本国憲法施行により、憲法の精神にそぐわない条項がいくつも出てきたのだ。まずは皇室に対する罪(第2編第1章)が丸ごと削除された。

姦通罪いわく「有夫ノ婦姦通シタルトキハ2年以下ノ懲役ニ処ス其相姦シタル者亦同シ」。つまり、基本的に女の貞操を問うものであり、男の場合は既婚女性を相手としない限りお咎めはなかった。憲法14条は男女平等をうたっているので、この規定は違憲になる。そこで一部には「妻ある男性にも平等に適用するように改正すれば憲法に違反しない」との意見もあったが、結局、削除となったのである。だが──ここが大事なところだが──処罰されなくなったというだけで、違法であることは変わらない。違法には様々なレベルがあって、中で、よほどの違法行為だけが処罰の対象となるのだ(法秩序維持のために刑法はあえて出しゃばらないことを、刑法の謙抑性ないし補充性という)。不貞行為は、当然ながら離婚理由だし慰謝料の根拠である。相手が既婚であれば、その配偶者からも慰謝料を請求される立場である。つまり、賢い人、尊敬されるべき人が行うべきことでは断じてないのである。

ことに公人。公人に私生活はないと思ってよい。公人については、何をどう書いても言っても、それが嘘でない限りは名誉毀損にはならない(刑法230条の2)。幾多の損害賠償訴訟敗訴例を経て、今やマスコミは、確実な裏を取らない限り報道はしなくなっている。つまり、報道事実=真実と考えて、およそ間違いはないのである。国会議員は、公人の頂点に立つべき立場である。なのに、昨今、国会議員の不祥事、中でも不倫報道があまりに多すぎる。自民党の当選2回生に頻発するので魔の2回生とも言われ、公認の仕方に問題があると言われている。ただ、私自身はこれは最近の公認問題というよりむしろ、もっと遡って、選挙制度を中選挙区に戻さない限り、候補者の劣化は止まらないだろうと思っている。

さてこの度は、自民党ならぬ民進党2回生の不倫不祥事である。元検事が売りだそうだが、司法試験合格は遅く、5年ほどしか経験はない。夫と6歳の子供がいる。名前を全国に売ったのは「保育園落ちた日本死ね」に始まる待機児童問題を取り上げたからだが、自らの子供を放って、男と朝までホテルで泊まり、週4回も会っていたというのでは、これはお笑いである。以前、自民党の宮崎某が国会議員の育休などとぶち上げながら、妻の出産時に自宅に女を引き入れていたときの嘲笑と相通じるものがある。目前の欲望が、公人であることにも人間としての規範意識にも勝る人間は、およそ規範意識に欠け(犯罪者によくあるタイプである)、公人である資格などおよそ存しない。宮崎某が潔く?議員辞職をしたように、彼女もまた議員辞職に値する。他にも、離党ではなくきちんと議員辞職をして欲しいと思う議員がたくさんいる。

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