日馬富士暴行事件、貴乃花がおかしい

日馬富士、酒乱だわ、これで懲戒解雇か最低でも引退だと思ったのが3日前、スポニチのスクープで事件が明るみになってのことである。今はそれをはるかに超えて、貴乃花親方はどうかしていると思う。行動が不可解過ぎるのである。

時系列にまとめると、事件は巡業先の鳥取で、10月25日深夜から26日未明、モンゴル力士らが会食をした二次会でのこと。日馬富士が貴乃花部屋の貴ノ岩に対して説教中、貴ノ岩がスマホに気を取られているのに激高、ビール瓶で頭を殴り、そのあと馬乗りになって20発?30発殴りつけたというのだ。大けがになりそうだが、貴ノ岩は26日以降、予定通り巡業に参加、11月2日に貴乃花部屋の宿舎のある福岡県田川市の市長を親方らと表敬訪問。その際の写真では何の怪我の様子も見られない。貴ノ岩は「2桁勝利を目指します」と場所への意気込みを語った。。

ところが、貴乃花親方は10月29日、福山からわざわざ鳥取に行き、警察に被害届を提出済みだったというのである。県警から連絡を受けて協会が事件を把握したのが11月2日、翌日鏡山危機管理部長が伊勢ケ浜親方及び貴乃花親方に電話を入れたところ、双方とも「分からない」との返事だったので(怪我について貴乃花は「階段から落ちた」と言ったそうだ)、事情聴取はなされなかった。被害届を出しておいて、そういう対応はないだろう。貴ノ岩は5?9日福岡市内の病院に入院、9日付けの診断書には「右中頭蓋底骨折、髄液漏の疑い」などとあるが、10日に休場が発表されたときにはこの診断書は提出されず(なぜだ!?)、場所2日目の13日になってようやく発表に至る。14日のスポニチスクープ以降、日本中の大ニュースになっているのは周知の通りだ。誰がスポニチに漏らしたのか、経過からして、推察は容易である。

まるで分からないのは、暴力事件の真相以上に、今肝心の貴ノ岩はどこにいて、実際どういう症状なのか、である。上記診断名では大層な印象を受けるが、骨折も疑いにすぎず、実際はなかったという。でなければ「全治2週間」はありえない(2週間は交通事故の怪我でも一律起訴猶予になるほど、非情に軽いレベルである。)、被害届を出した時にも当然診断書はあったから、その時の診断名は何だったのか。そもそも被害届というのは本人が出すものであって、親方にしろ社長にしろ他人が出せるものではない。本人も同行したのか、本人の委任を受けた弁護士が同行したのか、それも分からない。貴乃花は「被害届は取り下げない」と言うが、出すのも取り下げるのも被害者本人の意思であって、他人が決めるものではない。

貴乃花は巡業部長の役職にある。相撲協会という伝統ある組織の、立場ある人である。当然ながら、巡業先での不祥事については協会に報告する義務がある。まずは組織内で対応を協議し、それがうまくいかなくなって初めて警察の出番になるのは、どこの組織でも同じだ。喧嘩や傷害の場合、知り合い同士だと警察は、当人らが「話し合う」といえば自主解決に任せ、何が何でも刑事事件として扱うようなことはしていない(刑法は謙抑的に使われるべき性質のものである)。

これら経緯からすると、貴乃花は、たまたま起こったこの事件を奇貨として、弟子である貴ノ岩の気持ちさえ無視し、あえて休場に持ち込んだのではないかとの疑いが濃厚である。全治2週間が事件後からカウントしての2週間であったとすれば(怪我を負った時を起算点として加療ないし全治期間を判断するのが通常である)、貴ノ岩はもちろん、出場できた。全休すれば来場所は十両転落となる。全治2週間といわず1か月であったとしても出場したいのは力士の本能だ。それを自らのために、弟子をさえ捨て石にしたのではないか。

貴乃花は、場所前にそれなりの決着をつけることもできた。というより、そうすべき立場にあった。なのに処理をあえて場所中に持ち込んだのである。協会にたとえどれほどの不満があるとしても、弟子を犠牲にし、協会にとって最も大事で神聖な大相撲場所に、こういう形で、あえて混乱を持ち込むのは許されないことのように思う。真面目に日々ひたすら相撲道に邁進している力士たち──自分もかつてそうだったはずだ──のことに思いを馳せないのでは、親方なり協会理事としての資格を欠くというほかはないだろう。協会は、警察任せにするのではなく、自浄能力を発揮し、事実を明らかにすべきである。

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