トランプ大統領がエルサレムをイスラエルの首都と認め、アメリカ大使館を(まだ先になるが)従来のテルアビブからエルサレムに移転する旨宣言した。親イスラエル(ユダヤ人国家)のアメリカ政府が従来口にしながら実行に踏み切れずにいたことを、選挙公約に掲げたトランプ大統領としては、自らの実行力をアピールしたのだと思われる。
長引くパレスチナ問題を抱える中東諸国はもちろん、ヨーロッパ各国からも大きな非難を浴び、騒動や暴動がすでにあちこちで起きている。収束は見えず、パレスチナの和平交渉がますます遠のくのは必至である。政府でも否定的見解が多かったらしいが、トランプ氏は今この時期に踏み切った。渦中のロシアゲートから人々の目を逸らしたい故ではないか。
親ロシアとされるトランプ氏には様々な疑惑がある。昨年10月には、米国土安全保障省が、ロシアが民主党全国委員会へのサイバー攻撃と内部メール流出に関与したと断定した。12月末、オバマ大統領がその報復として外交官35人の国外通報などの制裁措置を発表、今年初め、米情報機関がプーチン大統領が大統領選でトランプ氏を後押しするため、サイバー攻撃を指示したとの報告書を発表した。トランプ氏最側近の一人フリン氏は、昨年末、駐米ロシア大使との電話で対ロ制裁などについて協議をしたが、していない旨FBIに嘘の供述をし、今年2月に辞任。翌3月、FBIコミー長官がトランプ陣営とロシア政府の共謀関係捜査を公言したが、5月、トランプ氏は(捜査から手を引くように迫った挙句に)長官を解任した。そのことが、司法省をして特別検察官にモラー元FBI長官を任命してロシア疑惑捜査に当たらせることになる。
その後、このブログでも取り上げた、トランプ氏長男がロシア人弁護士と接触するなどの疑惑が表ざたとなり、トランプ氏周辺に事情聴取が及び、周辺の公職者がモラー特別検察官に訴追される事態になっている。ついには今月1日、フリン氏が上記偽証の罪で訴追され、法廷で有罪答弁をする急展開となったのである(アメリカで盛んに行われる司法取引に応じたことで、彼の罪は格段に軽くなる)。
トランプ氏は、フリン氏の証言が虚偽だったと知っていたのか否か。知っていてコミー長官に圧力をかけたのだとすれば、司法妨害罪に問われる。司法権が優越するアメリカにおいてこれは非常に重い罪であり、大統領である故に訴追されないにしても、議会で弾劾決議をされるおそれが現実味を帯びる(ニクソンがそうだったように、弾劾決議をされる前に辞職するだろうが)。現に事態の進展に沸き立つ世間の目を逸らすために‥「首都エルサレム」は素晴らしい演出ではないか!? 加えて、北朝鮮に戦争をしかける、なんてことにならなければよいのだが。核のボタンを押すには(軍人出身の人格者であり冷徹とされる)マティス国防長官を通さないといけないので、そうならないとは思っているのだが‥。
アメリカという国は、個人の色の強い国である。誰が大統領か、特別検察官に誰が指名されるか、国務長官は誰か、国防長官は誰か。はたまた最高裁の顔ぶれはどうか(政党色が強く、かつまた終身なので、裁判官次第で判断はまったく変わってしまう)。日本では検察庁の特捜部部長が誰になったからどうとか検事総長が誰だからどうとか、最高裁の裁判官が誰だからこうだとか、首相が、大臣が、といった個々の顔ぶれでそれほど変わることはない。何でもが大体、組織で一体となって動くし、先例やら一定性が重視される国である。
さて、前回のブログを書いた翌日、日馬富士が突然、引退を表明した。師匠ともどもに歯切れの悪い、また感じの悪い引退会見では、貴ノ岩を思って善意の指導をしただけなのに、なぜこんなことになってしまったのか不思議で仕方がないということらしかった。自分より悪い奴がいる、嵌められたと感じる時、人はえてして、こうした態度を取りがちである。その心中を察すると、大きな事件にしてしまった貴乃花親方が悪い?(貴乃花が嫌悪していた相手は白鵬であって日馬富士ではなかったのだが) もっと言うならば、悪いのは白鵬だ。日馬富士は鳥取城北高校の石浦監督を囲む会に出る予定がなく、それをあえて誘ったのは白鵬だったという。白鵬が貴ノ岩に説諭中、スマホを弄った貴ノ岩の態度に腹を立て、日馬富士に目配せして暴力をふるわせたという情報は信ぴょう性が強いと思われる。白鵬が止める気であれば簡単だっただろうからだ。
元を正せば、モンゴル人力士間でつるみ、その先輩後輩での指導というのがそもそもおかしくはないか? 日本人力士の場合、指導は同じ部屋の先輩か師匠が行うものである。他の部屋の力士を、ただ番付が上、年が上、同窓ということで指導できないことは、他のどの組織を見ても分かることだろう。他の部署の者を、その上司を差し置いて直接に指導することは許されないことである。
日馬富士は、安馬であった100キロ以下の時から知っている。スピードがあり天性の身体能力を生かし、辛い稽古を耐えて、最軽量級ながら幕内最高位まで駆け上がってきた。絵も描き、夜間大学院で経営を学ぶ。4人の横綱の中でまず辞めるのが日馬富士とは想像もしなかった。一番は鶴竜だと信じていた。残念だが稀勢の里も危ないかもしれない。となると、言動に多々問題があり、横綱相撲などどこ吹く風の白鵬が1人最後まで残るというのも本当に悲しいことである。
日馬富士は略式請求(罰金)で終わるだろう。前科がなく、怪我も10日程度と軽い。示談が出来れば起訴猶予になるが、貴乃花の強硬姿勢で示談は望めないらしい(本来被害者は貴ノ岩なのだから、おかしなことである)。怪我の程度は、10月29日の被害届提出時に10日、11月に入って(受傷時から)2週間、いずれにしても軽い。11月場所を休ませるような怪我ではなかったし、また今月の巡業場所を休ませるのに診断書も提出されないとは大きな問題である。1月場所に出たとして十両転落は必至、弟子を守るべき立場の者が弟子の力士生命を奪ってどうするのか。とにもかくにも後味の悪すぎる事件としかいいようがない。
折も折、相撲にも由緒ある富岡八幡宮の女性宮司が前宮司だった弟に日本刀で刺殺されるという血生臭い事件が起こった。被疑者である弟は共犯の妻を刺殺して、自死した。背景に様々なことがあるらしいが、江戸時代から続くこの歴史ある神社はどうなるのだろうか。氏子や参拝者ら多くの関係者にも何とも寝覚めの悪い事件である。