実は彼のことはよく知っている。今を去る15年以上前の議員時代、田中真紀子の対抗馬として自民党から出馬した彼の応援弁士として長岡に行ったのである。彼はそのあとまた落選し(自民党は連続落選者を公認しないので)次は維新だかどこかに鞍替えして、計4回落選をしたという。医師及び弁護士という最高の資格を持ちながら、なぜあえて政治家を目指すのか。理由はよく分からないままだった。苦節15年、すっかり国政選挙は諦めたはずだったが、一昨年の新潟県知事選に共産党などの支援を得て、まさかの当選を果たしたのである。それまで原発推進派だったのを慎重派に鞍替えしたのは、よく知られたことである。
私方事務所にも2度訪ねて来たことがあり、弁護士仲間(同じ第一東京弁護士会所属)でもあるので、そのうち新潟を訪ねる際に機会があれば、県庁にも寄ってみようかと思っていた。その機会は永久に失せた。県知事は辞任、もう選挙も当選もありえない。一体どういう優秀な知能なのか、医者兼弁護士であり、医師派遣業で稼いでいたらしいので商売のセンスにも長け、食べて行くのに困ることはないだろうが、今回の醜聞で、まっとうな人はみな離れていく。
18歳未満の女性を対象にしなければ法律違反にも条例違反にもならないが、ことは違法云々の問題ではなく、人格に根ざす問題である。2つの問題があると思う。一つはやったことそのものであり、もう一つはあまりに無防備な危機管理のなさである。
彼が50歳になるまで独身だったのは結局のところ、若い女と刹那的な肉体関係を持つのが好きだからであり、口説くとか付き合うとか恋愛とか、つまりは親密な人間関係の構築に喜びを見い出さないのであろう(そういう人がいないから若い女に…というのは言い訳である)。人間は結局のところ好きなことしかしないし続かないので、つまりは精神的にどうしようもなく貧困で哀れな男だと証明したわけだ。
世の中は広いのでそういう人はいるが、超一流の頭脳の人ではありえない(はずだ)。なぜならそういう人は知性を満たすことに満足を覚えるからだ(そのはずだ)。音楽や美術、読書でもいい、知的な人はそういう趣味を持ち、それによってストレスを解消している。かつて検事時代、覚醒剤の常習犯にある共通性を見いだした。どの人にも趣味がないのである。覚醒剤には身体的依存性はなく、ことのほか強い精神的依存性を持つ。出所して何か嫌なことが起きると、すぐに覚醒剤に走る理由はここにある。
一躍有名になったハッピーメールとやらを開いてみると、まさにこれは援助交際を仲介する場である! 登録には顔写真も載せるだろうし、身元もある程度はばらすことになるのだろう。相手がどんな人間かも分からないのに(同じ大学や職場で知り合っても、家庭も分からないし、裏に何があるか分からない)、のこのこと出て行って関係を持ち、そのことを理由に脅迫されない保障はどこにあるのだ? 録音だってされているかもしれないから、それなりの立場のある人は警戒する。妻があればもちろんのこと、独身であっても、例えば大手企業のサラリーマンであれば近づかない。公務員や資格のある人はもちろんだ。まして彼は知事なのである。ばりばりの公人。よくまあこんな怖いことを続けていたものだと呆然とするほかはない。
彼は彼女たちの父親の年齢だ。普通のまっとうな大人であれば、もしそういうことを知れば、こういうことをしては駄目だよと諭すのが筋である。もし自分の娘が売春に手を染め、自分の年頃の男が娘を買春していたら、どう言うのだろうか。それは娘の自由だから構わないのだろうか。まさか。おそらくはそういうことを考えたことすらないのだろう。バランスを持って物事を捉えられないのは、法律家ではない。真っ当な大人ですらない。まして人の上に立つべき人ではない。金銭スキャンダルであれば名誉回復は出来るだろうが、この醜聞はどうしようもない。