4連休の勉強用に、アマゾンをクリックして、3冊を仕入れた。経営やITの実務書だ。その日のうちに配送されるのは大層便利なのだが、宅配業者さんが気の毒にもなる。
日本中を騒がせた捕物劇で、尾道もすっかり有名になった。先月8日、愛媛県今治市から脱走した受刑者は、盗んだ車を広島県尾道市の向島で乗り捨て、以後潜伏していると思われた。警察犬なども投入しての両県警の大捜索にもかかわらず見つからず、結局、30日に広島市内で拘束された。丸23日の逃走劇である。供述によると先月24日、雨の中を泳いで本州に渡り、その後電車に乗って広島まで来たという。西に向かったのは、出身地の福岡に帰るつもりだったのか。
動機は、当初報じられていたとおり、刑務官に叱られて嫌になったことだという。刑務官と受刑者の関係はいわゆる特別権力関係であり、受刑者に規律や秩序を守らせることこそが刑務官の仕事である。それを、嫌だからと逃げ出すのは、学校や職場を逃げ出すのとは訳が違うだろう。職場では普通、嫌なことが多いので、もし社会復帰ができたとしてもすぐにまた逃げ出し、安易に窃盗稼業に戻っていく姿がつい想像されてしまう。受刑の繰り返しは社会復帰をますます難しくし、家族や故郷での人間関係も根こそぎ奪ってしまう(帰りを待っていてくれるのは老いた親だけである)。刑務所の主たる目的は、応報もさることながら受刑者を更生させることなのだが、実際には累犯者が多く、再犯率を下げることが大きな課題である。
受刑者を逃亡させない、万一逃亡すればすぐに身柄を確保できる態勢にするのは今後の課題だが、逃亡させないために今回の造船作業所のような開放処遇をなくす方向はどうか止めてほしいと思う。基本的には受刑者も社会に戻っていくべき存在だ。受刑のフィニッシュとして、急に娑婆に戻るのではなく徐々に、こうした開放施設で過ごすことは大事なことである。
財務省事務次官のセクハラ辞任は今でも大層後味が悪い。この人は酒に弱く、酒席での下品な発言はよく知られていて、お気に入りの女性記者を呼び出すこともよくあったという。超一流の学力や学歴が教養や知性と残念ながら一致しないのは、先ほどの新潟県知事と相通じるものがある。この女性記者も次官の性癖を知り嫌がっていたというから、まずすべきは、毅然とした態度で応じないことであった。
だが記者は出て行った挙句、予想済みのセクハラ発言を録音した。意図は、これを証拠に次官の首をとることだったと思われる(それによる安倍内閣の支持率低下を狙った? 麻生大臣の辞任、果ては内閣総辞職か? 一体、誰と共謀のうえだろうか?)。発表してくれと上司に言うと拒否され(オフレコの場での録音はルール違反であり、その後の取材に明らかに支障をきたすので、発表などできるわけがない)、あろうことか、マスコミに提供した。あとの騒動は知られた通りである。
「正当防衛」(刑法36条)は違法性阻却事由である。「急迫不正の侵害」が要件であり、予期された侵害に対しては成り立たない。本件でのセクハラ発言は「不正」ではあるが急迫性はないので、録音はもちろん防衛のためではない。積極的に利用するためなのを、被害者だとばかりに言うのはおかしいだろう。麻生大臣が「はめられた」と言って叩かれ、下村議員が「犯罪」と言って叩かれていたが、どちらも言葉が足りなかったのであって、その違和感はよく分かる。よく誤解されるが日本にはセクハラ罪はなく、違法な行為・言辞は民事上の損害賠償(慰謝料)の対象になるだけである。もちろん裁判に録音を持ち出しただけでは違法性は認定されず、二人の関係性、これまでの経緯、どういう状況でどういう発言がなされたのか、すべてを明らかにしたうえでの認定となる。
録音は怖い手段である。依頼者に録音を勧めると、「えっ、いいんですか?」と聞かれることもあるが、もちろん構わない。積極的にこちらから反訳を出すというよりむしろ、弾劾用である。相手が録音している場合、やり取りを合成される可能性もあるから、反撃用に証拠にとっておくのである。今回の録音では「被害者」の声音は消えている。一方的に、何の許可もなくされた録音が、編集されていない保証はどこにあるだろうか。もちろん、次官のぞっとするほど下品な発言自体は明白だし、こうした人が高位に就くべきではないという気持ちはよくわかる。だが一般の人であればともかく、記者がとるべき方法ではない。こうしたやり方は報道の自由にとって今後マイナスにしかならないと思われる。
セクハラ=被害者と一方的に決め込み、異議を差し挟むことを一切許さないのは民主主義とはいえないのではないか。民主主義は最終的には多数決によるが、言論の自由や反対意見の尊重があってこそ適性に機能するものである。「被害者」が匿名のまま、一切の動機・経緯を語ることなく、一方的な録音で「有罪」が簡単に決せられた今回の案件。野党などのヒステリックな対応には見せしめにも似たものを感じ、息苦しさを覚える。