23日夜の開会式はいい加減にしか見なかったが,24日以降はよく見ている(居間の大型薄型テレビが急にうつらなくなったので,買いに行かなくてはいけない。もう1台ありはするのだが)。
まずは柔道。48キロ級渡名喜選手は帝京大学出身だ(私はなぜだか帝京大学柔道部の部長である)。世界選手権金の逸材であり,東京オリンピックの代表になることは早くから信じていたが,若いビロイド(ウクライナ)が俄に頭角を現し(この階級では珍しい172センチの長身),彼女に負け続けていたのを,今年初めて勝ち,そして今回準決勝戦で当たり,延長の末一本勝ちを収めた。残念ながら決勝戦でコソボの選手に負けてしまったのだが,この銀メダルが日本選手初のメダルとなった。おめでとう,本当に嬉しいです。
翌25日は阿部兄妹が同日金メダルを取り,昨日26日は大野選手がリオに続く連覇を成し遂げた。勝ってあくまで冷静沈着な態度は柔道家の鑑であろう(大相撲も本来,こうでなくてはいけないのである!)実況解説の穴井隆将氏は天理大学監督で,大野の師匠に当たる。彼は世界選手権で金を取り,ロンドンオリンピック100キロ級でも金を期待されたが,2回戦敗退となったので,オリンピックへの思いはひとしおであろうと思われる。ちなみに,この時のオリンピック,日本柔道の金は57キロ級松本薫(帝京大学)のみ,男子は一つも取れず,後に井上康生が監督となって抜本的な立て直しを図った成果が,今の隆盛に繋がっている。ちなみに穴井氏の妹穴井さやかは帝京大学女子柔道部の監督だ。177センチの長身であり,168センチの私が身近で唯一,大きい!と感じる女性である(笑)。武道家でありながら字がうまく,事務能力も高くて,大変助かっている。
そしてそして…なんと言っても私が昔から一番好きな競技は,体操である。ことに男子体操。スーパースター内村がいなくなっては,たぶん日本ももう残念ながら大したことはないのだろうと思っていたのだが,なんのなんの,橋本大輝というスーパースターがいつの間にか成長していたのである。そして,日本人選手4人で,団体・個人共に予選トップの成績を収めたのである!
昨日の団体戦はロシア,中国と三つ巴で鎬を削り,はらはらどきどきしながら見ていたが,日本人選手最後の演技となった橋本の鉄棒は,内村と見紛うばかりの完成度難度の高い演技で,見ていて鳥肌が立った。見事な着地に大拍手を送る。15.1点。ロシアは最後,エースの床運動が素晴らしい出来で,日本はわずか0.1点差で及ばず2位だったが,一度は3点差に開いていたのをよくぞまあここまで詰めたものである。本当に素晴らしかった。18歳,19歳,あとの2人も24歳・25歳。全員オリンピック初出場だが,そうは全く思えないほど,ミスなく,それぞれのベストの演技をやり終えたのである。
日本の体操はずっと世界一と感じていたのだが,そうではなかった。世界一は内村個人であり,団体では2位だったのである。北京オリンピック(内村が日本人選手中最年少の19歳で個人総合銀メダルを獲得)の時1位は中国,続くロンドンオリンピックもそうだったのだ。内村が団体での金メダルをと言い続け,リオでようやく団体金を成し遂げた。今回感想を聞かれて橋本が「航平さんですら1度しか手にしていない」と言ったのはそういう意味である。今回また2位(ただし1位はロシア)。次はきっと…金が取れる。なにせ圧倒的に若いのだ。そして,内村ら指導者に恵まれ,どんどん新しい才能が育ってくる土壌が存在するのだ。
体操もフィギュアももともとはヨーロッパのものである。ところがどちらも日本と中国とロシアのお家芸となり,ヨーロッパの選手はメダル争いに滅多に出てくることはない。体格的なものなのかなんなのか。もちろん野球やテニスやサッカーに行ったほうがお金は稼げるだろうから,稼げもしない競技に興味が湧かないのかもしれないが,しかし体格的にそうした球技には向いてない人もいるはずだし,体操やフィギュアが好きな人もいるはずなのだ。それなのに,いつもいつも日本中国ロシアで上位を争い,参加こそしているが,アメリカ(女子は強いが),イギリス,ドイツ,フランスなどはその下で争って,嬉しいのかなあという感じが,失礼ながら拭えない。
あといろいろな競技で日本人選手が頑張って結果を出していて,やっぱりオリンピック,やってよかったよなあと思っている(単純な日本人の典型!?)。少なくとも選手たちはそれを目的に毎日を励んでいるのだから,貴重な機会が飛ばされることは絶対に避けてもらいたかったはずだ。始まった以上,あとは大きな事故もなく,コロナが猛威を振るうこともなく,関連の重症者死者が出ることもなく,成功裏に終えてもらえたらと切に願う次第である。政治がどうなるのか…それはその次のことである。