言っても仕方がないのだが,本当に暑い。「熱中症警戒」のテロップがずっと流れている。避暑地で有名な軽井沢も最近はあまり涼しくはないそうで,千葉県の勝浦市が涼しいと聞くようになった。実際30度を超えることも滅多になく,夜は窓を閉めないと寒いくらいだそうだ。一度行ってみたいと,勝浦に窯を構えて久しい陶芸家の知り合いに電話をしたら,明日から九州に帰り(老母が施設で一人暮らしをしているので毎年恒例だという),戻るのは1ヶ月後とのこと。避暑検証が目的なので是非暑いうちに行ってみたい。
この暑いのに,考えたら,私は滅多にタクシーを使わない。運動目的でせいぜい歩く,のはいいのだが,暑いときや雨のときや荷物の多いときにはタクシーを使えばよさそうなものだ…で思い出した。10年以上前の猛暑の夏,通勤の行き帰りはもちろん,裁判所に行くにもどこに行くにもタクシーを使ってほぼ歩かず,その額たるや月20万円にもなった。毎日1万円ほど使ったわけである。後にも先にもそんな額はないので覚えているのだが,なぜあのときはずっとタクシーで今は違うのか。その理由を思い出した。汗をかくとクリーニング代がかかるからである。すっかり忘れていたが,その頃私は猛暑でもスーツを着ていたのだ。他の季節と同様,マックスマーラかアルマーニ。高価なだけにクリーニング代も高い。それ以上に,クリーニング店に毎日持参し,取りに行くなど大変な手間である。比べればタクシーを使うほうがよほど合理的だったのである。
徐々に夏のスーツは,麻やサマーウールではなく,ポリエステルなど家で洗える類のものに代わっていった。素材の開発が進み,数年前からは冬のスーツですら家で洗えるものが主流となった。それに拍車を掛けたのがコロナである。オンラインでは良い物を着ている必要はなく,猛暑の夏はワンピースで十分である。昨年は今年ほど暑くはなかったので,薄手のスーツも着ていたが,今年は暑すぎるので日替わりワンピースである。もちろん家で洗えるものしか買わず,毎日洗う。すぐに乾いてアイロンも不要だから,便利このうえない。家事のうち料理と洗濯はとても好きである。
という次第で,クリーニング屋にはもう3年以上,行っていない。年に20万円位は浮いたかもしれない。美容院もカラーとトリートメントを止めてグレーヘアのカットだけになって1年半,これまた年に20万円位浮いたように思う(何より時間が浮いたのが有り難い)。ブランドの服も買わなくなり,どころか通販ばかりになって3年,アパレル代がまさに桁違いに安くなった。その分着物に使っていたはずが,これも嵌まって8年が経った今年,バタッと,熱が醒めてしまった。着付けのコツがマスター出来,一応すべての着物が揃い,TPOでの選び方・コーディネートの仕方も会得したのが原因と思われる。
着物は極端だったが,熱が醒めることはよくある。例えば,一時盛り上がった『鬼滅の刃』もすぐに醒め,映画も行かずじまいだった。そもそも映画自体,もう何年も行っていないし行きたいとも思わない(映画祭などの情報にはついていっているが)。一時嵌まってよく行っていたミュージカルもオペラもさっぱりである(コンサートはもちろん,歌舞伎や芝居は今でも行くが)。グルメ熱もない。珍しいものはほぼ食べてしまったし,有名なお店も,遠い所にある店は別として,たいてい行ったように思う。料理や店の記事があっても味の予想はついてしまい,食べたい行きたいとの熱が起こらない。健康のためにも,太らないためにも,自分で体にいいもの,美味しいものを作って食べるのが一番良いと思っている。
寒いのはどうにかなるけれど,暑いのはどうにもならない。あまり無理せず,体を大事にして,やり過ごしたい。