宮城野親方(元白鵬)に厳しい処分、大相撲協会も立て直さなくては

 すでに先月のことになってしまったが、大相撲初場所には二度行かせて頂いた。連日大入り満員で、両国国技館の入り口も中も人で一杯である。先場所がことに盛り上がったのは、横綱・大関はじめ三役が番付通りに強く、優勝争いもその中で行われたことである。認識させられたのは横綱照ノ富士の圧倒的な強さである。元大関朝乃山はただの一度も照ノ富士に勝っていないからダメだと言っていたが、大関霧島も豊昇龍も関脇(新大関)琴ノ若もそれは全く同じと知った。実際、琴ノ若が善戦したくらいで、あとは一方的に敗れ、霧島の横綱昇進など、もうお話にならないことが分かった。満身創痍の照ノ富士の引退は見えているものの、次の横綱候補はさっぱり見えてこない。

 この23日、衝撃的なニュースが報じられた。幕内優勝44回という、決して破られないであろう大記録を打ち立てた横綱白鵬(宮城野親方)が、臨時理事会の協議の末、2階級降格(降格は解雇、引退勧告の次に重い懲戒処分である)及び3か月間の20%報酬減額となったことである。懲戒理由は、部屋唯一の幕内力士である北青鵬の、他の弟子らに対する執拗な暴力であり(盗みもやっていたという)、親方は監督義務違反を問われる。北青鵬は引退勧告を受けて辞職した(解雇ではないから退職金は払われる)。彼はモンゴル人であるが、5歳から来日して白鵬との関係も深く、2メートルを超える長身であることから将来の横綱候補と言われていたが、伸びないなあとは思っていた。とにかく相撲が面白くないのである。肩越しに上手を取った後は棒立ちのままだったりして、やる気がまるで感じられない。コイツ、相撲を舐めている…とは感じていたが、そんなひどい状況だっだとは知る由もなかった。

 白鵬は、彼の暴力を知らなかったと言っているらしいが、同じ部屋にいて知らないはずはない。被害者らも訴えていたはずだが、親方が取り上げないので、協会に直訴せざるを得なかったのではなかろうか。報道によると、白鵬は長い関係である北青鵬に弱みを握られていて強気に出られなかったとも言われるが、それが本当ならば、情けなさ過ぎてお話にならないレベルである。それで結局、預かった1人の力士を立ち直らせることもなく、潰してしまったのである。一昨年にも、部屋のマネジャーだかが多額の金を持ち逃げしたと言われながら、その件も有耶無耶になっている。脱税絡みの汚いお金の場合は警察に堂々と被害届も出せないのである。お金も人も管理が全く出来ていないのでは、親方業など務まるはずもなく、白鵬は部屋の指導からも外され、今後は一門で見ていくことになるという。横綱だったから協会の役職は副理事の下の委員だったが、今回の処分で一番下の年寄に落とされ、制服を着て館内をガードするような立場になるのではないだろうか。

 理事会ではもっと厳しい処分を主張した人もいるという。引退勧告以上、つまりは廃業である。彼の場合は現役時代すでにいくつか問題を起こして処分を受けており、相撲もだんだんと勝てば良いとばかり、かち上げや張り差しやだめ押しその他、とうてい横綱とは思えぬ汚い取り口に終始するようになり、多くの人の眉を顰めてきた。モンゴルから来日した15歳当初細すぎてどの部屋も取らなかったのに、体の柔らかさに注目してどんどん食べさせ牛乳を飲ませて体を大きくして強くさせてやった親方の言うこともだんだん聞かなくなり、持ち上げる人おもねる人の言ばかりを聞いて、ひたすら傲慢にやってきた。そのつけはやはり結局回ってきたのである。

 今回のことで、貴乃花を思い出してしまった。こちらも大横綱であり、角界のサラブレッドでもあって将来は理事長にと嘱望されていた。ところが、弟子の貴ノ岩が日馬富士などモンゴル一派の暴行の被害者になる一件(もう7年も前になるが、そのドタバタ劇を昨日のことのように思い出すことが出来る)に始まり、しかしながら自らの弟子が暴力を振るう事件が発生し、結局、廃業に至ってしまった。部屋にいた貴景勝は師匠貴乃花にどのような思いを持っているのか、と思うことがある。貴乃花には誰か、的確な意見を述べてくれる人がいないのだろうかと思ったものである。親とも兄とも疎遠だったようだが、妻とも疎遠だったのか、あるいは誰の言うことも聞かなかったのか。いずれにしても人間関係において孤立していた感が否めない。

 白鵬も貴乃花も相撲には邁進し、無敵の強さを誇ったが、人間としては未熟なままだったのだろうと思う。どんな分野にでも言えることだが、業界人や職業人として成功するためにはその以前の人間としての素養がなければ、結局は不幸な道を歩むのではないか。暴力撲滅を謳っている大相撲協会にとって、密室になりやすい各部屋の風通しをどうやってよくしていくのか。問題が生じて初めて個々の親方や力士を指導するなり処分するといったやり方では後手後手に回ってしまう。不祥事が発生すれば社長がそれなりの処分を受けるように、理事長なども自ら処分を科すようにすべきではないかと思ったりするのである。

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