都知事選の結果、砂原浩太朗作歴史小説に思うこと

 週末は猛暑だったので(静岡では40度を超えたとか)期日前投票に行っておいて良かったと思った。新人石丸さんの参戦で盛り上がり、投票率は60%に達したという(それでも60%…70%は欲しいところである)。小池さんの当確は午後8時早々に出(最終291万8015票)、2位は石丸さん(同165万8363票)、3位が蓮舫だった(同128万3262票)。

 蓮舫にすればまさかの3位だっただろう。「2位ではダメなんですか」で一躍知られるようになった彼女にしてみれば2位がせいぜいで、知名度ほぼゼロの新人(しかも広島の人である!)に大敗を喫するなどよもや予想の外だったはずだ。大敗の原因について、共産党と組んだからと言う人も結構いるようだが、組まなかったとしても、石丸さんに負けていたと思う。結局のところ、蓮舫は一言で言って、「感じが悪い」のだ。顔も表情も品がないし、知性と性格がもろに出る発言もとうてい聞くに値しない。女性に嫌われる女性はダメである。女性票の5割は小池さんに、蓮舫・石丸は2割ずつの得票とのこと。石丸さんは20~40代の男性票をかなり取ったと思われる。

 炎天下の中実際に出向かなくても、スマホを検索して再生することにより、何度でも、またどの討論会でも演説会でも心ゆくまで聞くことが出来る。短期間に無名の新人がこれだけ広く厚く支持を得られたのは、この文明の利器を活用したことによる。人に訴えるだけの内容を持つ人にすれば、これからの選挙戦、これを大いに活用しない手はない。近くある自民党総裁選の選挙民は自民党党員であり、国会議員であるが、それでも一般市民である党員の意向は大きく国会議員にも影響すると思われる。49歳イケメン長身、キャリア出身、スポーツマン、閣僚経験者…という申し分のない国会議員がいるのだから、彼を一気に総裁に立てるのも良いのではないか。もちろん(石丸さんのように)口を開いて、一気に人を引きつけるだけのものを持っているというのが前提ではあるのだが。

 たまたま、砂原浩太朗さんの『いのちがけ(加賀百万石の礎)』を知り、読んだ。前田利家の側近であった村井長頼という人の話が、連作の形で綴られている。ちょっとこの構成はあざといなと思うところもあったが、文章に品格があり、最後まで飽きずに読むことができた。利家はもちろん、周囲の小さな役どころまで手抜きをせずに血肉を与えられている。歴史小説は好きなのだが、なかなか良いと思うのに巡り合わなかったところ、気に入ったので、『高瀬庄左衛門御留書』を手に取ったら、止まらない止まらない…で一気に読み切ってしまった。かつて耽読した藤沢周平に似たところがある。主人公は名もない武士だがその清廉さで人を惹きつけていく。何気ない台詞が哲学めいていて、ふと立ち止まる。これがこの作者の第1作、第2作だそうだ。時として、すごい新人が現れるものである。

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