バイデン氏撤退、ハリス氏が後継

 ペロシ氏もオバマ氏もバイデン撤退を示唆していたが、本人がそれで素直に納得するようならば認知症ではないよね、と思っていた。だが彼は、「国と党に最善の利益」だとして残り任期を大統領として全うし、選挙戦から退くとの素早い決断を下したのである! やはりそれだけの政治家だったのだ。なんであれ人間、引き際が肝心である。

 そして自らの後継として、ハリス副大統領支持を表明。もちろん順当である。そもそも任期中自分に何かあれば、副大統領が自動的に大統領に昇格することを前提にした人選なのだから。わずか1日にして彼女は支持を拡大させ、記録的な額の寄付を集め、来月の大統領候補指名がほぼ確実になったとの報道が流れている。やるねえ。ここでゴタゴタしていたら、共和党を利するだけだ。ハリス氏に不満があるとしても、内輪もめは避け、民主党内で一致団結しなければ、次の4年共和党にアメリカが牛耳られる。しかも法治国家って何?!といった風情のトランプなのである。トランプを排除し、民主党政権をさらに続けることこそが党の利益であり、国の利益だと、多くの民主党員が考えた結果のハリス支持だと思えば、非常に分かりやすい。

 選挙戦で大事なのは副大統領候補を誰にするか、である。伴走者は大統領を補完する人であるべきだから、男性であり白人、そしてハリス氏出身の西部ではなく、中部か東部の人で、なおかつできたら知名度の高い人が選ばれるべきである(個人的には大統領候補として名が挙がっていたカリフォルニア州知事のニューサム氏がいいと思っていたが、大統領と同じ州だから、外れる)。というだけで適格者はおのずから限られてくる。共和党員でもトランプを支持しない人も多いから、そういう人も取り込んでいく姿勢で臨んでいくだろう。

 ハリス氏はトランプよりほぼ20歳若い。トランプにしてみれば、認知老人を相手に戦うのとは様相がまるで異なってくるのだ。バイデンにしても、トランプが指名されてほっとしていたのだ。もし50代のヘイリーさん(元国連大使のインド系女性)だったら世代交替が印象づけられて、それだけで民主党に不利益だと恐れていたのである。しかしバイデンさん。4年前も実は認知機能の衰えが、今ほどではもちろんないにしろ指摘されていて、1期だけの中継ぎで出馬していたはずなのに、いつの間にか(普通の大統領のように)再選を目指す形になっていた。適当な候補者がいなかったといえばそうだろうが、寂しい話である。日本でも「次の総理は誰?」で誰も挙がってこないのだが、アメリカだってどこだって…と引き合いに出されるくらいである。フランスもイギリスも政治がごたついている。一つにはネット社会になって情報が拡散していること、及び移民も増え貧富の差が拡大していることが背景にあると思われる。

『ようこそ、難民!(100万人の難民がやってきたドイツで起こったこと)』という児童書?を読んだ。ドイツ人が書いたのを翻訳したのかと思っていたら、著者はドイツ在住の日本人・今泉みね子さんだった。ドイツが国家の基本姿勢として憲法にも取り入れ、積極的に難民を引き受けているのは、ナチスドイツの蛮行を反省していることが大きいだろう。国民がさらなる難民引き受けに強硬に反対するのにメルケル首相が珍しく声を荒げて、公に怒りを示していた映像の記憶が鮮明である。難民とは直接関係はないが、ドイツは10歳時(小学4年生)でギムナジウム(日本の中高校の普通科に当たる学校。5年生から12・13年生)に進むか、レアルシューレ(実科学校、10年生まで)かハウプトシューレ(基幹学校、9年生まで)に行くか、生徒の能力や将来の希望によって決定されることを、改めて認識させられた。将来職人になるか、大学に進んで知的職業に就くかが、早期に決まるのである。日本のように、大学に行きたければ誰でもいつからでも行けるという自由は、ないのである。

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