初めての付審判決定、ハリス氏副大統領候補を指名

 今朝の新聞で面白い記事を見つけた。「プレサンス元社長無罪の事件 担当検事を刑事裁判へ」の見出しで、下に「付審判請求の流れ」チャートが載っている。何のことやら、刑事司法関係者にしかたぶん分からないだろう、それくらいレアな事件だ。

 分かっている人には不要だが、一般の人向けに以下説明をする。日本の検察は大きな起訴裁量権を持つ。起訴便宜主義と言われるもので、有罪が確保できるだけの証拠が揃っていても、若年だ、初犯だ、軽微な犯罪だ、被害弁償がされている等々、様々な事情を考慮して不起訴(=起訴猶予)にすることができるという権限である(刑訴法248条 対して証拠が揃っていれば起訴しなければならないドイツは起訴法定主義である)。日本は前科者のレッテル貼りを出来るだけ避けるべく、実に3分の2の犯罪を不起訴で処理しており、その大部の理由が起訴猶予である(それ以外で多いのは嫌疑不十分)。検察が適正に裁量権を行使していればよいのだが、もし不当に不起訴にした場合、被害者(告訴人など)にはどういう救済方法があるか、は刑事訴訟法の基本的な論述問題である。その答えは2つ。1つは検察審査会への申立て。もう1つは付審判請求(準起訴手続ともいう。刑訴法262条)である。前者は結構マスコミに登場するので知っている人は多いと思われるが、後者はほとんど出てこない。なぜならば、罪名が刑法193条~196条などに限定されているからである。すなわち公務員、ことに裁判・検察・警察関係者(=特別公務員)の職権濫用が対象なのだ。つまり、検察はこうした者たちを庇い、起訴しないことが考えられるため、その場合の特別な救済方法が企図されているのである。具体例はほとんどなく、それでも警察関係者についてはこれまであったが、今回の事件は検察官であり、初めての事例だ。特別公務員暴行陵虐罪(刑法195条1項)は、「特別公務員がその職務を行うに当たり、被告人、被疑者その他の者に対して暴行又は陵辱もしくは加虐の行為をしたときは、7年以下の拘禁刑(懲役)に処する」。

 大阪地検特捜部が捜査した学校法人を巡る業務上横領事件で、プレサンスコーポレーション元社長が逮捕・起訴されたが、2021年10月、大阪地裁で無罪判決が言い渡されている。元社長の元部下については有罪が確定しているが、19年12月8~9日、大阪拘置所で取調べを受けた際、取調べを担当した検事(現東京高検検事)から一定時間にわたって怒鳴られ、威迫を受けて一方的に責め立てたられた事実について、これを陵虐に当たると認定したのである。ちなみに大阪地裁は23年3月、同じ事実を認定して陵虐に当たるものの継続性がないとして請求を棄却したが、高裁がこれを取り消し、審判に付す決定を出したというわけである。この決定は検察の起訴と同じ効力を持つので、この後は検察審査会による「起訴相当」決定と同様、裁判所が弁護士から指定検察官を選び、起訴された検事が被告人となって法廷で裁かれることになる。「陵虐」は警察官が女性被疑者を調べるに当たって性交渉を持つなどのイメージがあり、本件のような(ある意味程度の差こそあれ、普通に行われているのではないかと思われるような)暴言や威迫のような類いまで含められることになるのだろうか、今後の成り行きを見守りたい。 

 さてハリス氏。副大統領候補にミネソタ州知事ティム・ワルツ氏を選んだとのこと。ハリス氏と同じく60歳。テレビを通しても温厚そうな感じが伝わってくる。世評名高かったペンシルベニア州知事シャピロ氏はユダヤ系なので、対イスラエル問題がある中、選ばれないような感じもしていたが、その通りだった。激戦区という意味では後者のほうが良かったのだろうが、相性もあるし、こればかりはなんとも…。結果良ければ、である。アメリカの各州は(一部を除いて)過半数の得票で代議員総取りなので、得票数が上回ったからといって当選するとは限らないのである。ヒラリーの時がそうだった。たまたま私は開票速報のとき参議院にいて、皆で固唾をのんで見ていた。まさかでしょ、うそー、ありえない、と皆で言い合った記憶が生々しい。悪夢のようなトランプ勝利からまもなく8年になるのである。早い!

 ところでネットを見ていて、驚いた。ハリス氏の夫エムホフ氏の離婚理由は、子供2人を引き取っている?ことからして、妻の不倫ではないかと想像していた。普通は子供を妻が引き取るからである(もちろん法的には共同親権だが)。ところがどっこい。なんとエムホフ氏の不倫が原因だそうだ(氏も認めている)。相手女性は子供2人が通っていた小学校の教師(助手)かつ娘の子守。しかも妊娠させたそうである。その子がどうなったかは不明だ。中絶が簡単には認められない国なので、産んで里子に出したのか、あるいは流れたのか。そうした状況で、子供は(特に女の子は)父親を許せて、その後も一緒に暮らせるのだろうか。普通は母親についていくのではないだろうか。ハリス氏と再婚したのは離婚後4~5年だし、ハリス氏も夫の不倫については知らされているそうだから、大統領選に不利になることはないだろうが、有利なことでも決してない。

 今日9日で夏季休暇に入る。一応今のところしなければならないことは、した。来週一杯休みを取って、19日から業務再開。その頃には少しは涼しくなっていてほしいが、この焼け付くような暑さはなんだかずっとそのままのような感じもする。

 

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