ある程度予想していたが、共和党トランプが当選した。8年前はヒラリー・クリントンに得票総数で負けながら、州総取りというアメリカの選挙制度のおかげで選挙人獲得数で勝ったのだが、今回は得票総数でも圧勝し、揺れる州(スウィングステート)7州もすべてトランプが勝利した。一時はリードしているようにも報道されたハリスの敗因は、予備選を経ていないこと、また能力的に根強い懸念があること(経済については答えられなかったし、副大統領としての実績も何もない)、またハリス個人が魅力に乏しかった。なんという笑い方…! やはり女性初の米国大統領になるからには、エレガンスが欲しい。サッチャークラスの出現は望むべくもないが、やはり女性としての魅力があることが人間としての魅力にも繋がる。なにせ国の代表、どころか世界の代表になるのである。
トランプのやり方は皆がもう知っている。アメリカ第一主義で国際協調などどうでもよい。日米同盟など歯牙にも掛けないだろう。ウクライナ支援からも手を引くだろう。日本はこの後どうするのだろうか。安倍さんとは個人的に仲が良かったが、石破さんとはケミストリーが合わないし(自民党の中でも友達が本当にいないと言われている)、まして長くもちそうもないときては、カウンターパートとして重宝されるとはとうてい思えない。政府を支える外務省はもちろん民間にも是非支援をしてほしいと願っている。
ところで今回の総選挙で俄にキャスティングボートを握る立ち位置に立った国民民主党の玉木さん。11日の特別国会召集に合わせて、ウェブフラッシュに女性関係のスキャンダルが掲載された。相手の女性は39歳(玉木さんより16歳下)で元グラビアアイドル、高松観光大使を務めている。掲載内容は、この7月末、高松のホテルで同宿したこと、加えて10月30日(総選挙の3日後)新宿のワインバーで密会したこと(フラッシュなので当然ながら写真付きである)。玉木さんは即日釈明会見を開いたが、二人の関係は結構長く(記事では2年来噂になっていたとのこと)、自ら相手に好意を抱いていたことなどが明らかになった。玉木さんは結婚指輪をしておらず、実はずっと前からしていないとの指摘もある(よく見ているなあ)。
私の周りの男性は、「モテ期だね」「羨ましい」「いい男だし仕方がない」(←全然思わないけど、それは個人の趣味なので)…女性のほうは「奥さんに選挙区守らせて、老いた両親の面倒も見させて(立派な日本家屋に同居しているようである)、自分は勝手なことをやってひどすぎる」「9月に催された政治家15周年パーティには奥さんも女性もよんでそれぞれ挨拶させているって、気持ち悪すぎる」と不評である。おそらくこの記事が総選挙前に出ていれば、玉木さん個人の党ともいえる国民民主党がここまで票を伸ばすことはなかったはずだ。有権者もすっかり騙されていたわけである。
ここで話を整理しないといけないと思うのだが、不倫は民法では「不貞行為」(770条)といい、配偶者以外との性行為はすべて不貞行為となって離婚原因になるのである。不法行為なので、もちろん慰謝料も取れる。「ええっ? トルコに行くのもそうなんですか!?」と聞いてきた知人がいたので、「もちろんよ」と答えたら本当にもうびっくりしていた。つまりそういう一過性のものは単なる性欲の処理であって離婚原因になどなりようがなく、対して不倫というのは恋愛感情などを伴う継続的な関係を意味し、許されないと思っていたようなのだ。この感覚だと、例えば女性から誘われてたまたまそういう関係を持ってしまったことは後腐れさえなければよいのである。もちろん政治家がハニートラップに引っかかれば由々しき問題であり、玉木さんもハニートラップに引っかかるのはダメだと公言していた。
配偶者以外の異性と親しくなり、継続的に性関係を持つ場合は、徐々に家に帰らなくなり夫婦関係にもひびが入っていく。なにせ今は3組に1組の夫婦が離婚するのである。玉木さんは自分でも認めていたし(奥さんにとっては辛いことだが)、そうでなければ何年も続かないので、彼女を好きなのである。大好きなのであろう。だからこそ、総選挙後の、皆に注目されている最中でもわざわざ彼女に会いに行くという危険を冒したのであろう(仕事をドタキャンまでしたらしい)。夫婦がたとえ熱烈な恋愛で一緒になったとしてもそんな感情などいつまでも続くはずはなく、そのうちに別の人に恋愛感情をもつに至ること自体はよくあることである。夫婦の間にあるのは「生活」であり、よくて「尊敬」であって、これは恋愛感情という大きなエネルギーとは比較にならない。玉木さんが一般人であれば、妻との間は自然と遠ざかり、離婚して新しい女と再婚するということは十分にありえると思われる。
ところが、彼の場合はそうはいかない事情がある。高松に選挙区を持ち、そこに妻子がおり(成人して大学を卒業しているはずの一人息子はもう家を出ていると思われるが)、なんと妻には自分の両親と同居してもらい、面倒を見てもらっているのである。もちろん彼が東京にいる間、妻はいわば城代家老として選挙区の活動に鋭意関わっている。断っておくが、地方に選挙区がある国会議員の場合それが普通の形態かといえば、全くもってそうではない。そもそも女性国会議員であれば夫に選挙区に詰めてもらうことなどできないし、男性議員でも独身あり、やもめも離婚した人もいる。また普通に妻がいても選挙には一切関わらないと公言して表には一切出てこない人もいる。それはそれでいろいろな人が政治活動を手伝い、当選もさせているのである。まして老親と嫁を同居させて面倒を見てもらうなど普通のこととは思えない。娘がいれば娘と同居するのが世間一般の風潮だし、長男だから親と同居して面倒を見なければならない道理もない。玉木さんの奥さんは滅私奉公的な、本当に出来た人だと思う。まあ、それだけ玉木さんを好きなのだろうし、尊敬もしているのであろう。それこそが彼女の選んだ生き方なのである。
玉木さんがその妻の特別な厚情に心から感謝し、一個の人格として尊重しているのであれば、誰にも恋愛感情をもたないままでいるべきだった。もし誰かを好きになっても決してそれ以上深入りすることはないよう精神的なものに留めておくべきであった。もちろんそうはいっても相手もいることだし、もちろん政治家以前に人間ではあるのだから、不幸にもそうはいかなかった場合は、決して周囲にばれないように、細心の注意を払うべきだった。もしずっとばれなければ、それはなかったことと等しいし、それだけの努力をしたことは尊重に値すると考えるからである。だが、今回明らかになった行動を見ていると、容易にばれる。つまり、本人がどう弁明したところで、ばれてもいいやくらいには思っているのであろう。はっきりいって浅はかである。政治家以前に、そもそも人間として信頼できないなあというのが率直な感想である。
自分の欲望の赴くままに行動し、奥さんに(たぶん相手の女性にも)多くの負担を強いている人が、国民の面倒は見られるのかといえば、およそ違うだろう。最も身近にいて大切にすべき人を裏切る者が、直接には関係のない国民を大事にできるはずはないのである。自分はとても優秀でこの国を率いていくだけの力量があるとおそらく考えているのであろうが、それが自惚れに過ぎないということが今回図らずも露呈されたと感じる。夫婦間の話であるから妻が形だけは許してこれからもやっていくという結論を取るのかもしれないが、いったん生じた夫婦間の大きな亀裂は修復できるものではない。奥さん次第として、ここはきっぱり別れて人生をやり直すという選択肢もあり、もちろんそうなったら、もう当選は難しいだろうが、それは身から出た錆というものである。人間は誰であれ自分のやったことに責任を取らねばならない。中でも国民の代表たるもの、当然そうであろう。