週末、久しぶりに(2~3年ぶり?)に麻布十番に行った。港区のチイバスが15分おきに我がマンション前に停まり、所要15分で着く(さらに5分で六本木ヒルズ着)。所要は最速で終わり、少し歩いていたら(街歩きは「趣味」の一つ)、長蛇の列が出来ている。それぞれが持つ赤いカゴには野菜やフルーツが大量に入っていて、店先に近づくと、並んだ品々は種類が豊富なうえ、信じられないくらいに安い。店前は「スターフルーツ」。私もレタスや春キャベツなど欲しかったが、いくらなんでも嵩張るので止めた。場所は以前高級食パンの店で、当初やはり列が出来ていた。確かに美味しいが一度買えば十分で、すぐにブームは去っている。
このブログのプロフィール欄の「趣味」には「ピアノ」しか書いていないが、これは英語のhobbyに拘ったからだ。娯楽とか気晴らし(=pastime)という意味では「大相撲観戦」「プロ野球観戦」「音楽鑑賞」「料理」「着物」「お洒落」、そして何より「読書」がある。プロ野球が始まったので、毎日がとても楽しい。別に球場に出向く必要もなく、自宅で美味しい食事をしながらテレビ観戦をしていればよいのだから、安上がりでもある。特に私は広島カープファンなので、対巨人戦3連勝だったこの3日間はハッピーだった。野球が休みの今日月曜も穏やかな気持ちでいられる。
巨人は昨季15勝の菅野投手がメジャーに行ったので先発が必要だったはずだが、補強はしていない。戸郷ほか各選手で間に合わせるつもりだったのだろうが、開幕投手でもあった戸郷は3連敗をし、二軍に落とされた(彼はドラフト6位。この年のドラ1は甲子園で活躍した吉田輝星、根尾、藤原、小園だったが、カープの中心打者となった小園以外はパッとしない)。3戦目がこの度のカープ初戦で、4回途中で10失点の大炎上である(すでに100球超え)。阿部監督は中日の絶対的クローザーだったライマル・マルティネスを、年俸20億円ほどもかけて獲得したが、先発の勝ち星なしではクローザーに出番はない(それが嫌で彼は中日から移籍したのに、皮肉なものだ)。加えて、呆れるばかりに外野がスカスカである(内野も坂本が劣化して綻んでいるが)。昨日も40歳の長野(カープからの出戻り)をスタメン2番で起用してレフトに。ライト若林は西武産、センターのヘルナンデスは小園の打球を後逸して実質ランニングホームランにした(両翼がヘルプに行かないのには呆れた)。この球団は金を出して他の球団から引き抜くか外人を頼むかするだけで、ドラフトで自ら獲得した若手の育成が全く出来ていない。センターの丸が怪我から復帰すればって…丸はカープが育てた選手だし、そもそももう36歳だ。丸頼みというだけで、すでに終わっている。ドラ1浅野は一時活躍していたが、今は二軍で打率1割を切るそうだ。一体どうなっているのだろう。カープも阪神も基本的に自前の選手で外野も内野も賄っているし、投手だってそうである。巨人は打線もパッとせず、岡本がメジャーに行った後はどうする気なのだろうと思う。多くの巨人ファンは多かれ少なかれ私と同じように感じていることと思う。
日本の小説が海外でずいぶん読まれているという。と日経新聞にあったので、中でまずは『BUTTER』(柚木麻子著)を図書館で予約して、早速読んでみた。木嶋香苗の連続殺人事件がモデルだということに興味を持ったからである。若くも美しくもない女性が結婚願望の強い中年以上の複数の男性から大金を巻き上げた挙げ句に殺害したとされるこの事件は、ずいぶんとセンセーショナルに扱われた(同じ頃鳥取でも同じような事件が起こっている)。この小説は、被告女性と同じ年頃の30代の雑誌記者が東京拘置所まで面会に行き、被告の真相に迫っていく過程で、己の来し方や人間関係を振り返って…という話である。これはありえないでしょ、という設定や展開あり、あちこちに視点は飛ぶしで、小説としてはあまり出来が良いとは思えなかったが、特筆すべきは料理の話が満載なことである。なにせタイトルがバターなのである。最初のバターから最後は七面鳥の丸焼きに至るまで、まさに匂いや香りまで漂ってくる。この小説は英国でベストセラー1位となり、何十万部も売れたそうだ。たしかにこんな小説は他にないと思われる。
この小説の被告はグルメであり、料理の腕を誇っている。マーガリンは許せない、バターはエシレバターをと。以前よく通っていた近くのフレンチ(ワインレストラン)がエシレバターを出していたのでその味が抜群なのは知っている。炊き立てのご飯に冷蔵のエシレバターと醤油を載せて…ああ、いかにも美味しそうだ。ブランドに拘らなくても雪印のバターでもきっとそれなりだろう。これは試してみようと思う。バターと鱈子を混ぜ合わせて(なにせ魚にバターはよく合う)ゆでたてのパスタに和えて紫蘇をまぶして、海苔はダメよ色彩的に、と彼女は言う。うーん、私もパスタの中では鱈子パスタが一番好きだが、私はバターと鱈子は同じだが、それにレモンを絞って、紫蘇は香りがきついから貝割れと海苔を塗す。絶品なので、是非お試しあれ。鱈子スパを考えた人は天才かと思う。シラスでも美味しいし(ちりめんじゃこでもオリーブ油で炒めれば可)、納豆スパも美味しい。もちろん本来のトマト味も美味しいが、クリーム味はそれほど食べたいとは思わない。毎日食べるのであれば和風がベスト。
さて、『神なき時代の「終末論」』(佐伯啓思著、PHP新書)から。プーチンによるウクライナ侵攻は国際法違反であり戦争犯罪責任を問われるのは当然であるとして、「気になるのは、『自由・民主主義、法の支配、公正な市場競争などの普遍的価値を守る』という西側のいい方である(84頁以下そのまま引く)。
もともとロシア・ウクライナ戦争は一種の領土争いである。そこには長い歴史的経緯があった。帝政ロシアの時代からの確執に始まり、ソ連に編入された社会主義時代のウクライナの苦渋があり、2014年のロシアによるクリミア併合もある。どちらもスラブ系民族とはいえ、歴史のなかでそれぞれ独自の民族意識が形成されてきた。その結果ウクライナ東部地域にはロシア系住民が多く、彼らはウクライナ人による圧迫も経験してもきた。欧州とロシアにはさまれたウクライナにも親西欧派とロシア派の対立があった。われわれ日本人には容易に理解しがたい、こうした歴史的背景のもとで、ロシア・ウクライナ戦争は始まった。…ところが、ゼレンスキー・ウクライナ大統領による国際世論への強い訴えかけ、支援を求める欧米への直訴、それに、病院や学校、公共施設、文化施設や市民に向けたロシアの無慈悲な攻撃など、悲惨な非人道的映像がメディアを通して世界へ流された。
その結果、欧米、とりわけアメリカは、これを単なる領土戦争ではなく、ロシアによる「世界秩序」への挑戦だといい、それはまた、ロシアという「権威主義体制」による世界の「自由・民主主義体制」へ向けた攻撃である、という。そうなるとこれは「新たな冷戦」ともいうべき「体制間の戦争」であり、「価値観をめぐる戦争」だということになる。端的にいえば、独裁政権が自由・民主主義の世界秩序を破壊しようとしている、というわけだ。…しかし、これはあくまでひとつの見方である。…
佐伯教授いわく、これは善悪二元論であるが、「西側の論理に寄りかかったものであり、プーチンに攻撃されているはずの「国際社会」に含まれる多くの新興国は、決して西側の価値観に賛同してはいない」。そう、インド始め多くの国は表だってロシアを支持しないまでも、西側に賛同するわけでもない、いわば中立的立場を取っている。西側のいう価値観は決して人類の絶対的価値感ではなく、ましてアメリカが絶対的な存在ではない。なんでもアメリカに依拠してきた日本であるが(たぶんそのほうが思考停止状態で簡単だったからであろう)、トランプによってグローバリズムは都合良く押しやられ、自由・民主主義、法の支配、公正な市場競争の普遍的価値などどこに行ったかと思われる昨今、日本の立ち位置を誤たないようにしなければならないと切に感じる次第である。
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