まさか,のまさか。逮捕はあるだろうと読んではいたが,詐欺罪だとは。
となると,強制執行妨害や公正証書原本不実記載とはそもそもがまったく異質な事件である。総連は共犯ではなく,被害者。これが小説なら,奇想天外,破天荒なストーリー。よほど特殊な人格だとの設定をしなければならない。私自身は幸か不幸かまったく接点がなく名前くらいしか知らないのだが。
いわゆるヤメ検の中には派手な生活を送る人が結構いる。弁護士報酬も相場とは桁違いだったりする噂はよく聞く。とはいえこの人の異常さは別格である。
強制執行妨害の弁護についた被告人(大物詐欺師らしい)と,あろうことか以後組むようになり,まさに一蓮托生,様々な事件に関与していたという。非行が万引きから始まるように,快楽殺人が小動物殺害から始まるように,これほどの大事件を起こすまでには経過がある。今回,投資者があるように装い,まずは物件の移転登記が必要であると騙し,代金の支払いなく移転登記を完了(物件の詐欺)。別途4億8000万円を詐取(緒方容疑者はうち1億3000万円を領得)。これが本当であれば,物件の登記は元に戻したものの,また金はこれから工面して全額返すとしても,実刑は免れない。
これほどに金銭感覚も遵法意識も麻痺できるとは一体なぜか。いつから狂いだしたのか。あるいはもともとおかしいのをトップにつけていたのか。この異常さは公安調査庁が監視していたオウムと同レベルのように思われる。特捜部には身内の犯罪を徹底的に捜査することを望む。
おごり,勘違い,人間性の欠如──これはある種の特権意識と裏腹なのだろうか。
山口県光市の差し戻し高裁審理の模様に,おぞましさを感じた人は多いはずである。
以前このホームページでも取り上げたが,少年には殺意や強姦を否認できる状況にはない。実際これまで否認はしていない。それを21人の弁護団は否認に転じさせたのではないか。母親に抱かれるつもりだったとか,その弁解には人間性のかけらも見られない。本村さんが法廷で睨み付けられ,社会に戻してはいけないと思ったのは当然だ。
本村さんは私も知っているが,非常によく出来た方である。この度も心中の怒りを抑え,慎重に言葉を選んでいた。立派なことである。一方で,なぜ遺族がそこまで我慢しなければならないのか,その理不尽さがやりきれない。
こうした事件でいつも思うのは,犯人やそれを徒らに弁護する人には最低限の想像力さえ欠けているということだ。自分の家族が何の落ち度もなく,殺され,強姦され,それでいて死刑を望まないか。いや犯人が悔い改め,謝罪することをさえ望まないのか。犯人が殺すのは当の被害者だけではなくその家族もなのだ。遺族は生涯その重荷を背負って生きる。今回の審理は,死者を,遺族を,再度殺すほどの冒涜というほかない。
宮澤元総理死去。財務大臣時の答弁をずっと聞いていたが,とにかく抜群に頭のいい方であった。数字のみメモを出して見ておられたが,それ以外は何でも明瞭に記憶しておられた。皮肉屋で有名であったが,私は優しい言葉をよくかけてもらった。外国で暮らした経験はないが,流ちょうな英語を話された。合掌。