「祇園精舎の鐘の声……」
愛唱している平家物語の一節が浮かんだ。開票速報の夜のことだ。
「平氏を滅ぼす者は平氏なり、 鎌倉を滅ぼす者は鎌倉なり」
こちらは家康の言葉である。
家康は人質時代、相当に勉強したという。愛読書の一つに鎌倉幕府の盛衰を描いた「吾妻鏡」がある。鎌倉(源氏→北条氏)はなぜ滅びたか。平氏はなぜ滅びたか。家康は考える。外の敵に滅ぼされたのではない、内部から崩壊したのだと。奢って慢心する、初心を忘れて贅沢になる、内部がばらばらになる、そして滅びたのだと。
今回はまさしくそれであったと私は思う。国民は決して民主党を信任し、まして英国発祥のマニフェストなるものを必ず履行してもらうべく、民主党に票を入れたのではない。自民党に嫌気がさした、その受け皿が民主党であった。度重なる総理職の投げだし、閣僚のスキャンダル、もう嫌だというのが国民の偽らざる気持ちであろう。
長らくかけて悪くしてきたものを良くするのは至難の業である。だが自民党は今こそ原点に立ち返り、国家国民に責任を持つ、毅然とした保守政党にならなければならない。健全な与党には健全な野党が必要だ。かつての某党のように、与党の揚げ足取り、批判に終始してはならない。二大政党制は政局ではなく政策が肝要である。人材を育てなければならない。
最も大切なことは、一致団結することだ。子どもに危機が生じれば普段は仲が悪い夫婦でも結束をする。外国に対して国が一つにまとまらなければ戦う前から敗北である。誰が悪い、これが悪いといった批判は誰の尊敬も得られない。内部すらまとまらないのでは組織の信用を甚だ害し、自滅につながることをまずもって銘じ、目を覚ますことが党再生の一歩であろう。
自由民主党女性誌 『りぶる』