今年は「源氏物語」千年紀である。レディ紫の物語は世界初の長編小説なのである。
以後世界中で数え切れない小説が生まれたが、依然、世界十大小説の一つに挙げられる。それほどの傑作が日本で、しかも女性の手に成った。誇らしいことである。現代語訳で何度か読んだが、たしかに面白い。古今東西の名作すべてに共通することだが、時代・文化の相違を越え、そこには人の普遍性が謳われる。
天皇に寵愛され、嫉妬を買った挙げ句、早死にした美貌の母。光り輝く貴公子・光源氏はドンファンで、亡母に似た義母(藤壺女御)とも通じる。義母は不義の子を出産。源氏は、義母に似るその姪を幼少時から引き取り、理想の女性に仕立て上げる(紫上)。だが、腹違いの兄の頼みを断り切れず、その幼い娘を正妻に据えるのだ(女三の宮)。紫上の限りない悲嘆。そして、逝去。正妻は若い貴公子と通じ、不義の子を産む。因果応報こそが源氏物語最大の主題である。紫上に先立たれた源氏は女性にも関心を失い、やがて出家する。
当時の風俗も面白い。高貴の女性は外を出歩かないから、美しさはあくまで噂でしかない。恋心を募らせ、歌を交わし、従者が女中をうまく手なずけて、ようやく忍び込む。恋の成就である。だが、朝見たら醜女でびっくり、ということもある(末摘花)。女としては男が来なくなったらお終いなのだが、源氏は、一度契った女の面倒は見続けるという律儀さを持つ。
我々はもっと自国の文化を誇っていい。いや、誇るべきだ。金や経済ではなく、文化こそが世界共通の財産であり、最も尊敬を得られるものなのだから。まずは我々自身が知るべきなのだ。
自由民主党月刊女性誌
『りぶる』