このところ、実に堅実な生活を送っている。顧みてこれまで、夜の飲み歩きは当然のこと、ブティックも気分転換にしょっちゅう覗いていた。結果、時間もお金もずいぶん無駄に使った。
堅実になったのは、残りいくらの有限の時間を大事にするようになったからである。また、自由業は給料生活の時よりお金の有り難みが如実に実感されるからである。加えてこと服に関していえば、自分に似合う物、似合わない物がようやくに分かったことが大きい。
私はお洒落とたいそう縁が深い。神戸育ち。洋裁を仕事にしていた母。物心ついたときからモードは私の生活の一部だったのだ。以来、膨大なエネルギーと時間を費やした。使った金でマンションの一つや二つは買えたはずである。
実に半世紀近い試行錯誤の期間を経てようやく、自分という素材を最大限に生かせるパタンが会得できた、そんな感じがする。体型の長所・欠点、雰囲気、個性、そしてTPO。すべてに合格する物を自分の目で確実に選べるようになった。一つ大きなサイズを着ていたことも分かり、ジャストフィットにしたら、断然スリムにも見える。
初秋、今年の流行色、黒とグレーのスーツを各1着、購入した。そして持っていたスーツを8着、人にさしあげた。シンプルなワードローブだ。そう、これからは本当に自分に合う物を丁寧に、着ていこう。
身近なお洒落ですら神髄を極めるのは大変なのだから、まして趣味や学問の奥は深いはずである。積み上げた経験を生かすことで、人生が充実していくのだと思えば、年を取るのも悪くない。
自由民主党月刊女性誌
『りぶる』