執筆「人が生まれて,最初に接する大人は親。子の生き方で,親の生き方は評価される。」

それは実に素晴らしい結婚披露宴であった。ことに最後、新婦が両親に述べた挨拶が出色だった。
「物心ついたときには、両親は会社を作り、いつも一所懸命働いていました。お父さんはよく、『俺が今あるのは〇子(母親の名前)のお陰だよ』と言います。私もずっと後に、旦那さんから『俺が今あるのはお前のお陰だよ』、そう言ってもらえるよう、努力したいと思います」。
 会場がしんとした。母上が泣く。父上も涙をこらえている。
 ご両親は共に、人間として素晴らしい。連れだってよくあちこちに出かける。お二人と知り合って数年後、私が娘さんの結婚披露宴での唯一の来賓にと見込まれたのだ。当日当人と初対面にならないよう、事前に引き合わせてくれる心遣いもさすがだった。
 私は、以下のような祝辞を述べた。
「ご両親は端で見ていてとても仲がいいのですが、本当にいい結婚生活だということは、子どもさん3人を見ればよく分かります。
 今、結婚しない人(残念ながら、私もその一人!)、結婚してもあえて子どもを持たない人が増えていますが、ご長男はすでに3人の子持ち(この子たちは、誘拐したくなるほどに可愛い)、ご次男は少し前に結婚して、もうすぐ最初の子どもさんが産まれる。そして今日、長女の〇子さんが晴れて結婚」
 人が生まれて、最初に接する大人は親である。親のすべてを見て、真似て、子は育つ。良くも悪くも親はモデルとなるのだ。
 その親が仲が良く、家の居心地が良いのなら、子は長じて、何のためらいもなく、同じような人生を歩むはずである。
 彼女は30歳で結婚、この度妊娠が分かってご両親は大喜びである。おめでとうと電話をした私に、彼女が言った言葉がまた素晴らしかった。
「本当に良かったです。私ひとり、親に孫を見せてあげられないのじゃないかと心配していたのだけれど、これで私も無事、孫を見せてあげられる」
 互いに助け合う夫婦。子どもを真に思いやる親。そうした家庭を作れば、子孫は自ずと繁栄していくのではないか。深刻な少子化の原因について、経済性とか仕事との両立等々が言われるが、自らを顧みるに、それは単に後からの理由づけのように思える。前にも書いたように、人は、優先順位でしたいことをするものだからだ。
 子がどう生きるかで、親の生き方はある意味、評価されるのかもしれない。

自由民主党月刊女性誌
『りぶる』

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