7月末で、国会議員をやめてちょうど2年になる。つまり、弁護士業を始めて、2年。
今だから言うが、始める前は大いに不安もあった。ひとつは弁護士業務への不安。もうひとつは、経営者業務への不安。どちらも私には初めての経験になる。
長い間検事をやっていたから刑事事件は大丈夫だが、民事事件はそのうちの2年、国の代理人として大きな事件に携わっただけだ。大学時代は民法を専攻していたし、適性は未だに民法のほうにあると思っているが、そうした基本法さえ昨今はどんどん変わる。加えて、実務は、法律や判例の知識や理論だけでは動かない。
だが、同業の友人らは「そんなことはすぐに慣れるから心配がないよ」と言う。それよりも、事件が来るかを心配すべきだと。だから、最初は堅実にどこかの事務所で働くべきだと言うのである。
しかし、切りよく後半生に切り替えた私としては、自分のペースで過ごせる、自分の事務所でなければ意味がなかった。最初から独立開業の選択肢も「無謀」とは思わなかった。なんとかなると思っていたのだ。
そして実際、本当にありがたいことには、なんとかなっているのである。口の悪い向きには、弁護士をやるために国会議員になったのだ、とまで言う人がいるが、まさか。
先日、親しい女性弁護士に言われた。「検事のうえに国会議員なんて、いくらお金を積んだからって出来るものじゃなし、すごいことよ」。たしかに、この経歴は、本業に役立つばかりか、今や役職は優に10を越える。無償のものが多いが、人から必要とされるのは嬉しいことである。
弁護士業務への心配は、友人らの言どおり、杞憂に終わった。法律家の基本は同じなのだ。人の話をよく聞き、書類を検討し、事案を見極めること。もっとも弁護士業には、これに独自の難しさが加わる。以前にも書いた、依頼者との距離感の取り方。そして、お金の取り方。始めて1年くらいしたときに友人にそう言うと、「へえ、もう分かった? 早い」と感心された。それももちろん、年の功、経験であろう。
、女子学生が言う。「先生って、職を転々としているのね」
「それはちょっと日本語が違うんじゃない(笑)」
そう、たぶんに偶然がなさしめた職業遍歴なのだが、面白い人生を歩ませてもらっていると思う。
開業2年を機に、皆様方にもただ感謝である。
自由民主党月刊女性誌
『りぶる』