過去形になったから言うのだが、世が選挙戦一色の時期、私はかなりのスランプ状態にあった。
はじめに仕事の失態ありき。今思えば大したことではなかったのだが、ずっと順風満帆で自信があっただけに激しく落ち込み、自己を全否定するほどだった。
「弁護士って大変だねえ」
司法修習同期の友人に零した。
友人は理系出身。独学で司法試験に合格し、弁護士を独立開業して20年経た2年前、仕事はもう充分やったと廃業した。今は悠々自適の趣味生活だ。
彼女は、ははと笑った。「今頃分かったか。そう、孤独な職業だよ。だから、できるだけこうやって、話せる人に喋ることが大事よ」
だがその後、仕事ではないが悪いことが二つ続いた。後ろ向きの思考や自信喪失が呼びこんだことだろう。
「よくお嬢さんだと言われるけれど、ようやくそうだと分かったわ」
愚痴ると、大学の同期がかかと笑った。彼は知る人ぞ知るの為替ディーラーだ。
「分かっただけで偉いよ。ずっと分からん人間が結構いるから。大丈夫だよ、そんなに元気な声が出せるんだから。来年になったら絶対、昨年はこんなことがあったのよって、笑ってるさ」
ふっと視界が開けた。ずっと今しか見ていなかったが、1年後、笑う自分が見えた。30年来私をよく知る人が断言するのだから、間違いない。
翌日、偶然かどうか、仕事でいいことが二つあった。
その翌日、昼食にカツを食べたい自分にはっとした。ずっと食欲がなく、昼は麺類で済ませていたのだ。早速カツ定食を食べ、夜はイタリアンのフルコースをきれいに平らげた。食が細くなったと思っていたが、違ったらしい。体が心を映していたのだ。ストレスで免疫抵抗が落ちて癌になる──これはきっと本当の話だろう。他人のストレス肩代わり業がストレスに潰れていては、そもそも仕事が成り立たない。
世の中には、今回のマドンナ候補はじめ、気力・体力・知力ともに充実した、すごい人がいるものである。私はその足許にも及ばないが、人と比べても仕方がない。人はそれぞれ。各持ち場で最善を尽くすことだ。持って生まれた自分は変えられないが、せいぜい努力をしなくては。人に必要とされ頼りにされて、有意義な人生を送るために。少しだけだが、今回悩んで成長したと思う。
教訓その一、本音を話せる友人を大事にすること。
その二、健康であること。自らが心身共に健康でなくして人に優しくなんかできっこないのだから。
自由民主党月刊女性誌
『りぶる』