ノーベル賞4人受賞の快挙

 暗いニュースが多い世の中に,久々嬉しいニュースを聞いた。
 どの方もこつこつと,それぞれの専門分野で,地道にたゆまぬ努力を重ねてきた人たちだ。その成果が(30年後の評価だったりもしたようだが)世に報いられた。
 なぜクラゲは発光するのかという疑問。それを解き明していく人生。陶芸や芸術や料理など,精進する道は何でもいいのだが,そうした我が道を行く,職人的な生き方が,実は私は一番好きである。

 この世の中,何かおかしくはないか,ずっと割り切れないものを抱いていた。
 株の売買や為替レートで巨万の富を得る。何かを産み出すのでも,誰かを幸福にするのでもない。もちろんそこに人類の発展があるのでも,文化があるのでもない。そんな実体のないことに血道を上げ,儲けた損したと大騒ぎする。それが一体,何になるのだろうか。空しい。
 といったことを,マスコミは投げかけただろうか。その結果が,ホリエモンや村上ファンドである。あるいはリーマンブラザーズの破綻。元はといえばサブプライムローンだった。不動産をローンで購入した人たちに,その価値の値上がり分を担保にさらに金を貸しこむ。土地の値段は上がり続けるという幻想は,そう,日本でかつて弾けた,あの狂乱バブルである。バブルは必ずや弾ける。不可解なことには,これが証券化され,危険はどこにもないこととなり,莫大な投資がなされた。そんな実体のない話がいずれ吹っ飛ぶことは,少し考えれば簡単に分かることである。

 地道にこつこつと生きる。そういうまっとうな生き方がどこかで小馬鹿にされていないか。自らは汗水垂らすことなく,人が垂らしている汗を横目に見ながら,濡れ手に粟で儲けることが,賢いことだと賛美されてはいないか。そうではない人たちが,自分たちは損をしている,何の能もない人間なのだと思い込まされてはいないか。
 実体のある産業は,農林漁業(第1次産業)であり,製造業(第二次産業)なのだ。体を動かして物を作り,人のお役に直接に立つことが正当に評価されない風潮は,とても浮薄だし,危険である。

 4人のうち,2人はアメリカ在住だ。
 好きな研究が日本ではできなかったのだろうか。人類のために役に立つ,地道な基礎研究にこそ国の限られた大事な予算はつぎ込まれなければならないのではと思う。外国から有為な人が来日して研究に没頭できる,そんな国に是非なってほしいものである。
 また,思う。アメリカで研究してきたのに,日本人受賞と取り上げられて,違和感はないのだろうかと。事故であり何であれ,必ずなされる「日本人何名」という報道。だが,アメリカのような人工国家と対極にある自然国家の日本ですら,もはや国境の垣根は低くなり,介護士や看護師も公に受け入れるようになっている。日本からもどんどん人が外に出る。いつまでも「日本人」という一括りでいいのだろうかと。オリンピックが国家意識を俄然高めるように,日本人活躍と喜ぶことで,政治や経済の暗いニュースを逸らすにはいいのだろうけれど。

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