新年を迎えて

 1月があっという間にもう終わる。早い。
 16日夜,かつしかシンフォニーヒルズで,ポーランドのバイオリニスト・チェリストと,ベートーベンのピアノ3重奏第3番を披露した。私にとっては一大イベントだった。なにせピアノパートが非常に難しく(ことに,速い4楽章),あちこちつかえる箇所があるうえ,弦楽と合わせるのである。しかもリハーサルは直前の1回のみ。
 しかし,本番ではなぜだか見事に呼吸があって(超プロなので,見事に合わせてくれて?),丹念にリハーサルをしたように聞こえたらしい。実際は私は数えられないほどのミスを冒したのだが,エネルギーと音楽大好きの心と,そして何より合奏が上手くいって,拍手が続いた。弾いている間,もちろん緊張はしたけれど,楽しくて仕方がなかった。音楽の醍醐味,ここに極まれりである。

 突然,予想しなかったことが起こった。この試練を経て急に,自分のピアノ奏法の欠点が明らかになったのである。
 細かく言うとキリがないが,初歩の基本がなっていないということが今頃,分かったのだ。4歳から始めて,一体今まで何をしていたのか。自らの出す音に耳を澄ますこともなく,楽譜を見て,ただ鍵盤を叩いていた。楽器だから当然,適当には音は出る。果ては人におだてられるまま,プロ級かもと錯覚していた自分が,限りなく恥ずかしい。
 今ゆっくりと,一から指練習をやり直している。これまで先生から何度も「ゆっくりと練習しなさい。10回速く弾くより,1回ゆっくり弾くほうがどれほど効果的か」と言われた。それをせず,指は幸いよく動くからと,最初から速く弾いていたのは,自分がちゃんと弾けていると思い込んでいたからである。今はゆっくりとしか弾けない。ちゃんと弾けないことが分かったからである。
 音楽はまずは耳である。そして,謙虚さ。好きであるという気持ちだけでは人に聞かせられるものにはならない。

 これはすべてに言えることかと思う。
 井の中の蛙,大海を知らず。知らない者ほど天井の高さが見えず,自分が大したレベルであるかのように錯覚をする。僕は仕事柄よく法律が分かっているなどと言う法律の素人がいるが,それと同じである。
 今始まった国会を見ていても,そんなことをつい思ってしまう。
 ちゃんと分かって言っているのか? 政策の一部じゃなく,全体が見えているのか? 国際的なこと,日本の将来が見えているのか?……もちろん政治家は政治のプロであるべきで,アマチュアであることは断じて許されない。ひとり自分や選挙民の問題ではなく,国民,国家の存亡がかかっているのだから。

 オバマ大統領が就任した。演説が上手い。内容はもちろん,感動がある。心と魂が籠もっている。内容だけでは人の心に響かない。国民に感動を与えてくれる政治家が欲しい。こんな世の中だからこそ,国民に元気を与えてくれる政治家が欲しい。もちろん内容の伴う政治家。そんな人が出ないだろうか。

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