昨日,名古屋地裁で判決があった。
闇サイトで知り合った男3人が,通行人を拉致(逮捕監禁),お金を奪ったうえに残忍に殺害した(強盗殺人)事件の判決。被害者は一人だが,死刑になるかどうかが注目されていた。検察の求刑は3人ともに死刑。これに対して判決結果は,2人を死刑とし,自首をした1人について無期懲役とした(こちらは実行行為にもあまり携わっていないようである)。結論からいうと,この判決は私が予想した通りである。
なぜならば一つには検察が死刑と求刑をした以上,それを下げる理由はあまりないからであり,その一方で,自首をした人には罪一等が減じられであろうと考えたからだ。
自首は減軽理由となりうるので,本来死刑であるならば無期懲役となる。彼が自首をしたのは死刑をおそれたからで反省なんかしていないのに,という向きも多いようだが,自首を減軽事由としている理由は刑事司法に寄与するからである。実際,彼の自首により,捜査は容易に進んだ。
刑事政策的配慮として今後,自首をすれば罪一等が減じられることを周知させておく必要はある。自首をしてもどうせ死刑だというのであれば,自首はなくなり,迷宮入りになる事件は増えこそすれ減ることはないからである。
ともあれ,背筋が凍るほどの残忍な事件であった。たまたまそこを通りかかったという,誰であっても被害者になりえた事件で娘を殺された母親は,夫を31歳で亡くし,以後女手一つで彼女を育て上げてきた。たとえ3人全員が死刑になったところで報われないが,まして1人は生き,そのうちに仮釈放される。
いつも思うことだが,凶悪犯罪は,その人を殺すだけではなく,その人に親しく連なった人をも同時に殺すのだ。彼らは生きている限り事件に囚われ,死ぬまで忘れることはできない。それは,犯人が更生を期待され,社会に戻っていけるのとまったく対照的な姿であり,だからこそ犯罪は憎まれなければならない。
強盗殺人はそもそも利欲犯で,被害者には落ち度がないため,刑罰が重く,法定刑は死刑・無期懲役しかない。。一方,殺人には様々な事情がありえるので,下限は「懲役5年」。格段に軽いのである。死者の数だけで量刑を云々するマスコミ論調が結構多いが,これは誤りで,強盗殺人かそうでない殺人か,まずは罪名を峻別する要がある。強盗殺人であれば死者1人でも死刑とされることは珍しくなく,一方殺人だけの罪名であれば,これに放火や身代金目的誘拐や保険金詐欺が付かなければ,死者1人で死刑になることはめったにない。
その意味で,最近相場が重くなった感がしている。先に判決のあった江東区の遺体ばらばら事件。死者は1人,罪名は殺人・死体遺棄であったが,検察は死刑を求刑し,あれっと思ったら,判決はやはり無期懲役であった。もちろん残忍極まりない事案であり,遺族感情や社会に与えた戦慄を考えると素人的には死刑が妥当と思われるのだが,こうした凶悪犯罪にこそ今後裁判員が立ち会うことになる。昨今の審理促進といい,遺体などの画像の多用といい,裁判員制を睨んで全体に刑罰が重くなっているのではないだろうか。