新年度を挟んで,実に2ヶ月も空いてしまった。
気にはなっていたのだけど,これといって特筆すべきネタがないまま,連休前,身柄事件を続いて2つ,受任した。こういう事件は突如起こり,以後勾留満期までの22日間が勝負である。故に何事にも優先する。民事でいえば保全(まずは相手の財産を押さえておくこと)がそうである。
連休の私的な日程はほぼすべて,キャンセルした。連日警察署(2つとも遠隔地に所在),検察庁,被害者との示談交渉など,で明け暮れた。土日・祝日は警察署が弁護人以外の接見は許さないため(立ち会いの人手がいるからであろう。弁護人が立会い人なしで接見できるのは法定の権利である),接見禁止がついていない案件であっても弁護人しか接見・差し入れができないため,行かなければならない。
だが,ひとしお苦労した甲斐があって,ともに公判請求必至の両事案であったが先週,1つは罰金(略式請求),1つはまさかの起訴猶予となり,身柄はともに釈放された。本人・家族の喜びはもちろんだが,あるいはそれ以上に弁護人の喜びは大きかったかもしれない。この達成感,充実感は格別で,何ものにも替えがたい。弁護士になってまもなく5年。検事よりも国会議員よりもこの職業がいい。真にそう思える出来事であった。
さてこの2ヶ月,世間にはいろいろなことがあった。
小沢さんの秘書は当然のように起訴され,また私が予測したとおり,余罪は何もなかった。大山鳴動して鼠一匹。これを機会に検察のあり方そのものが見直さればいいと思う。マスコミも世論も迎合することなく,きちんとした意見を述べてほしいものである。
草薙君の事件報道もひどかった。公然わいせつ罪は最高で懲役6ヶ月の軽罪である。同じ「わいせつ」でも,強制わいせつ罪とは違うのだ。こちらには被害者もいて,法定刑の最高刑は懲役10年だ。それを何を勘違いしたのか,法律を知らないのもいいところ,「最低の人間」だと公然に述べた某法相は「侮辱罪」にあたると思われる(こちらも軽罪だが)。そもそも草薙君は酩酊していて(だからこの種犯罪に至ったわけだが)責任能力に問題があった。それを有名税というのか,極悪犯人のように報道したメディアの見識が問われる。
いつも思うことだが,凶悪犯罪は,その人を殺すだけではなく,その人に親しく連なった人をも同時に殺すのだ。彼らは生きている限り事件に囚われ,死ぬまで忘れることはできない。それは,犯人が更生を期待され,社会に戻っていけるのとまったく対照的な姿であり,だからこそ犯罪は憎まれなければならない。
安倍さんもそうだったが,小沢さんも辞め時を間違えた。辞めるのであればもっと前に辞めるべきだったが,後継者選びは予想通りの出来レースだった。世襲ではない岡田さんにやらせれば民主は選挙に勝てただろうに。インフルエンザ騒ぎはすごいが,本当にそんなにひどい症状のものなのか,よく分からない。相変わらずメディアが乗って騒ぎを拡大させている感じを持つのは私だけではないだろう。
福岡市職員による飲酒運転,幼児3人ひき逃げ事故の判決。
一審は危険運転致死傷罪の適用を否定して,懲役7年。検察控訴に対し,二審は適用して懲役20年。上告審は二審を支持すると予想する。一般予防の観点から重くてもいいのだが,その構成要件に当てはまるかはまらないかの事実認定でここまで極端に刑が違うとなると,法的安定性を欠くことを危惧している。