弁護士の質

  週末辺りから更新が気がかりだったが,やはりちょうど1ヶ月が経っていた。

  会う人から,ホームページ見ているよ,と言われることがよくある。中には毎日見て下さる方までいるらしい。毎日更新ができるブログにしようかと考えた時期もあったが,きっと追われるようになると諦めた。それでよかった。日々何かと忙しい。
 もっともこの世の中では,誰であれ,幼児でも老人でも,ゆったりのんびりした気分に浸れることはもはや難しい。世相が落ち着かないからだ。動きが速すぎる。子どもの頃,世の中はもっとずっと落ち着いていた。時間がゆっくりと流れていた。まるでセピア色の写真のように。時間の質こそが人生であるのに,本当に勿体ないことだと思う。

  さて,先月から綱紀委員会委員を務めている。弁護士に対する懲戒申し立てを審理し,懲戒委員会に請求するかどうかを議決する委員会である。懲戒申し立ては増える一方だ。訴訟狂から訴えられて気の毒といった類のものもあるが,預かり金の使い込み,非弁提携(究極は名板貸し),受任案件の放置(控訴期間や出訴期間を徒過するのまであり!),セクハラ・わいせつ事案など,多岐にわたる。先般,久しぶりに食事をした弁護士がつい最近,懲戒請求になったことをあとで知った。この人はとにかく何でも訴訟にするらしい。そうしないと事務所経費が回らないのであろう。
  大体が,そうやって問題になる弁護士の多くは金銭感覚にずれがある。そこまでいかなくても,よく出来る弁護士のほうが少ないのが現状だ。弁護士(法律家)の能力は書面に一目瞭然だ。何をどう主張し,構成しているか,文章くらいその人を表すものはない。

  先般,知人が訴訟を起こされたとのこと。訴状と証拠を見たら請求棄却になるのは明らかな事案なので,答弁書の書き方を教え,相談料だけ貰った。後日,再度相談に訪れた。知人と同じ立場にある別の被告に弁護士がついた(訴額からして着手金50万円は貰った?),その弁護士から反訴を提起するので一緒に加わらないか,半額でいいと言われたとのこと。 「反訴?」「なんでも慰謝料だとか」「ああ,不当訴訟を起こされて応訴を強いられたから不法行為による損害賠償請求をするということね。それは理論的には認められるけれど,認められてもせいぜい30万円程度よ。そんなことに弁護士をつけていたら着手金は50万円(半額でも25万円)くらいかかるわよ。おまけに訴訟なんて時間もストレスもかかる。やめなさい」。裁判所に出すべきことを指示し,今後は欠席でいいと伝えた。
 素人は分からないから,専門家(例えば医者)からあれこれ言われるとパニックになるものだ。「いい弁護士さんでよかった」との言。それはそうだと自負しているが,ただ私がいい弁護士というより,悪い弁護士が多すぎると感じる。友人の裁判官いわく「起こさなくてもいい訴訟が8割方ある」と。実際そうだろうと思う。

  さて,様々な案件を通し,世の中には結構な数,人格障害者(異常性格。ドイツでは精神病質)がいると認識するようになった。境界性,依存性,自己愛性,演技性,反社会性……。病気とまではいかなくても限りなくそれに近い人を加えるとどれくらいになるだろうか。法律家には精神科の知識が必要不可欠だ。刑事事件ばかりか,ドメスティックバイオレンスなど家事事件もそうだし,ストーカー案件などもある。

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