裁判員制始まる,ノリピー逮捕

 この3日,ついに裁判員制裁判が始まった。
  その様子はこまめに報道されたのであえて記さないが,感じたことがいくつかある。

 1.量刑が重くなることが分かった。
  求刑が懲役16年であれば普通,判決は懲役12年?13年である。求刑の20?30%減が判決の相場だからである。これはしかし現場感覚であって,私自身,思い起こせば司法修習の当初,相当に違和感を覚えた。
  検察官は公益の代表者として被害者の落ち度もすべて勘案したうえで求刑をしている。事実をその通りに認定したうえであえてそれを下げる理由がどこにあるのだ? 私の問いに,指導係検事は答えた。「弁護士の弁論代や。何も下がらんのだったら,弁護士は何のためにおったんか,弁論したのかということになる」。ふ?ん。納得したわけではなかったが,そのうちに慣れてきた。もちろん今は弁護士として,下がらなかったらエライことである。
  裁判員はあくまで素人である。それでも1年下げて懲役15年としたのは切りがよかったからか。評議の模様が分からないので何とも言えないが,裁判官は相当な苦労をしたのではないか。
  さてこの後被告人側は控訴をするだろうから(72歳で15年なんて,実質終身刑である),控訴審がどう判断をするか見ものである。控訴審では裁判員制はないが,だからといって量刑を普通の相場観に変更したのでは何のために裁判員に裁判をしてもらったのか分からなくなる。この控訴審が一つの試金石になるはずだ。

2.裁判員制裁判の弁護士は大変だ。
 国選弁護士報酬を上げて1人40万円としたそうだが,それでもとても割に合わない仕事である。裁判が始まって丸4日,その前に公判前整理手続きで何日か取られた上,記録の精読,加えて裁判員用にパワーポイントなどの準備にどれほどかかるか,考えるだけで気が遠くなる。
  とはいえ,これ以上報酬を増やすのは困難である。今回2人つけて,80万円。裁判員裁判は年間2300件ほどあって,単純計算をしても大変な額になる。殺人はケースによるが,強盗事案で私選弁護士を頼めるほど金を持っているケースはゼロである。

 さて,ノリピー騒動。そもそも私は芸能情報に疎いのでよく知らなかったのだが,清純派として国際的人気も高かったという。とはいえ弟が暴力団員(先月覚せい剤で逮捕)であったというのになぜ法務省や厚生労働省はシンボルに起用したのだろう。
 夫が職務質問されたとき,その所持品検査に猛反対した彼女は,夫が覚せい剤所持の現行犯で逮捕された後,署への出頭要請を無視して行方をくらました。尿を出して覚せい剤が検出されるのを避けるためとしか考えられず(夫婦や恋人は一緒にやっているのが普通である),6日経って出頭して検出は免れた。事務所はなぜ失踪声明など出して騒ぎを大きくしたのだろう。
 マスコミで作られた像の虚しさ,また薬物汚染に深刻さに思いを致す。

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