まさかそこまで悪くはあるまいと思っていたのが外れ,総選挙の結果はほぼメディアの予想通りだった。民主党308,自民党119(嘘のサンパチ対百十九番!?)。
小選挙区制導入の効果が如実に現れたという点では4年前の小泉劇場と同様だが(得票率50%未満で獲得議席70%以上),今回は正真正銘の政権交代となった。前回は「郵政解散」,今回は「政権交代」,キャッチフレーズ選挙という点でも同じである。
国民は,自民党に愛想を尽かしたのだ。
2度続いた政権投げ出し,閣僚の相次ぐスキャンダル。景気対策といっては箱物を作り,借金を膨らますばかりの無策さ。このままでは日本はダメになると,国民が憂慮するのは当然である。
裁判員はあくまで素人である。それでも1年下げて懲役15年としたのは切りがよかったからか。評議の模様が分からないので何とも言えないが,裁判官は相当な苦労をしたのではないか。
祇園精舎の鐘の声……驕れる者久しからず。まさに平家物語の世界が彷彿とする。9月4日付け朝日新聞で作家の高橋源一郎さんがうまいことを言っていた。父「自民党」の放蕩に妻「国民」は長らく耐えていたが,ついに離婚届を提出。「民主党」は父から脱皮して生まれた子であると。分かりやすい喩えに思われる。
自民党は慢心し,ついに引導を渡された。とくに小泉さんの時くらいから,目の前の選挙に勝利することばかりを念頭に,人材を育成せず,国家の進むべき道も示されなかった。
危機的状況を実感したのは,実は選挙に敗れたこと自体よりも(勝敗は時の運,敗れることもある)敗戦処理のまずさである。記者にさえむくれている首相。特別国会まで2週間もあるというのに(本来これは,自民党が新総裁を選出するのに必要な期間として設けられたはずだ),誰も手を挙げず,誰をも押し立てず,首班指名は白紙投票だという。政党政治において首班を指名できないなんて,そんな無様なことが許されるだろうか。内輪もめや足の引っ張り合いをしている場合ではおよそない。人の品性は勝ったときではなく負けたときにこそ表れる。
民主党にはこの際,日本をよくするために是非頑張ってほしいと思う。
私がどうしてもやらないといけないと思うのは,雇用の保障である。規制緩和の名の下に,製造業にさえ派遣を解禁したのは誤りだ。人間は物ではない。景気のいいときに増やし,悪いときには切り捨てては,心がすさみ,犯罪も増える。真に少子化対策を言うならば,安定した生活を保障することが必須である。いつ切られるか知れない雇用状況では,人は結婚することもできない。実際,生活の保障がないので結婚できない若者は大勢いるのだ。その現実にこそ政治は目を向けてほしい。優しさのある政治。そもそも政治とは若者に夢と希望を持たせる社会を作ることではなかったのか。今こそ長年の間に貯まった膿を出し,政治の原点に立ち返ってほしいと願う。
さて,開始1か月になる裁判員制。青森地裁で初の性犯罪(強盗強姦)が裁かれた。現行では無期懲役・死刑が含まれる犯罪は裁判員対象であり,性犯罪も一部,対象となってしまう。裁判員は素人故,書面ではなく口頭審理が必須ということで,被害状況も公開法廷で読み上げられた。被害女性の苦痛は計り知れない。告訴をしない女性,示談をして告訴を取り下げる女性が増えるであろう。対象から外すことを考えてしかるべきであろう。