小沢不起訴に思うこと

 先月来,小沢はどうなるのかと聞かれる度に,私は「在宅起訴になるでしょう」と答えていた。これだけの証拠があるからというよりむしろ,起訴しなければならないという理由からである。現職国会議員を国会開会直前に逮捕し,その絡みで与党幹事長をまさに鳴り物入りで取り調べたのだ。もちろん参考人としてではなく,一般市民からの告発を受けての被疑者としてである。そこまでやる以上,起訴なしでは済まないと考えた。
 だが結論は,周知のとおり,今月4日の勾留満期(延長して20日間)当日,逮捕された3人は起訴になったものの,小沢は不起訴であった。朝青龍の突然の引退劇が重なり,この日マスコミはてんてこ舞いだったそうだ。

 不起訴の理由は当然ながら,起訴するに足るだけの証拠がなかったからである。そこはさすがに法治国家。ことに日本は,英米とは違って,起訴基準が有罪基準とほぼ同じレベルである。つまり,起訴するときにすでに,合理的な疑いを容れない程度の確証(一般人が誰も疑わない)がそろっていなければならない。無罪が出にくい仕組みになっているのである。
 今回,小沢の指示もなく,秘書が勝手にそんな大それたことをするはずもないと考えるのは常識的だが,常識で裁判ができるのであれば証拠は要らない。秘書の一人は「小沢の了承を得た」と喋ったようだが,「上の了承」があったことをもってして上との共同不法行為(民事事件)とするのはよいが,刑事事件の「共謀」とするには薄弱だ。加えて,密室での取り調べでは心弱くなったとしても,裁判になれば供述が覆るのは必定である。
 おまけに,問題の4億円の原資が分からないままであった。政治献金→銀行融資→個人資産と弁解が変遷し,疑わしいこと限りないが,疑わしいのは被告人の利益となる。うち5000万円についてはちょうどその頃ゼネコンから裏献金をされたと見込んだとはいえ,その供述の信ぴょう性が不明であり,貰ったとされるほうは認めない。そもそも前回私が指摘したように,残額については不明のまま,関係者を逮捕をして何か吐かせて出てこないかという乗りで強制捜査を始めたのだとしたら,非常に問題である。

 そして,やはり何も出てこず,当然の結論となったというわけだ。
 それでも,検察は小沢の金権政治の危うさをあぶりだしたからいいじゃないかという意見もあるようだが,その役割はマスコミが担うことである。検察は自らが強大な国家権力であり,であるが故に抑制的にその権力は行使されなければならない。国民から選ばれていない検察が,自分たちが国家を変える,国を正すという意気込みを持っているとしたら,誤りであり,危険なことである。

 この間,日本が世界からどう見られているか,気になって仕方がなかった。永田町も霞が関も,ひとり国内ではなく世界における日本をどうか考えてほしいと切に願う。
 財政破綻をしたギリシアの例にみるまでもなく,日本の財政も危機的状況であるという。
 先行きが不安である。羅針盤がなく,日本丸がどこに行くのか,不安である。

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