総裁選、夏季休暇は明けた…

 とにかく暑い。すでに1ヶ月以上、熱帯夜でなかったことは、一度もない。暑くても幸い食欲が落ちることはないのだが、ぐっすりとはやはり眠れていないように思う。でも金曜の朝はとても嬉しい。明日・あさってが休み。明日は浅香山親方(元大関魁皇)の部屋創立10周年祝賀会で午後、都内ホテルに行く。創立から10年経ったわけだ。早い! 夏の着物はあるし着物で行くべきだと思うが、あまりに暑いので(それにいつ雨が降るか分からない)、洋服で行きそうな感じがする。6月末に一度単衣を着、そのあと8月の比較的涼しい午前に夏大島を着たっきりである。着物を着ている人を見かける度につい尊敬の眼差しで追ってしまう。皆さん、汗も出さず涼しげに着ておられる。

 お盆の最中、岸田首相の突然の不出馬表明にはびっくりした。誰もがそうだろう。支持率はずいぶん落ちているものの、9月の総裁選には必ず出ると皆が踏んでいた。だがたぶん、出ても落選する(現職が出て落選すれば初めてのことになる)と確信する事態に至ったのであろう。本来であれば政治資金パーティに絡む、いわゆる裏金問題が出たときに、党所属議員を処分するだけではなく、トップ自らが責任を取って辞職するべきだった。タイミングを失したといえるが、ともあれ現職不出馬を受けて、候補がぞろぞろと出ることになる。まずは19日、小林鷹之議員が総裁選の出馬会見を行った。49歳(11月に50歳)、衆院4期(12年在籍し、岸田内閣のときに閣僚就任)。千葉2区。東大法学部(ボート部キャプテン)→財務省、ハーバード大学ケネディスクール、在米日本大使館書記官。186センチ、しゅっとしたイケメン。キャリアと外見がここまで揃っている人は珍しいと期待していた。だがうーん、会見には正直がっかりした。あまりにあっさりしすぎている。熱が伝わらない。まあ、インテリかつエリートは、日本ではこんなものなのだろうか? だが古今東西、政治家たるもの、弁舌で人を鼓舞できる力が必要ではないだろうか。今日昼テレビで、ハリスさんの候補指名受諾演説を聴いていて、やはりこの地位にまで上り詰めた人だけのことはあると思ったものである。

 総裁選に出馬するには自民党所属会議員20人の推薦が必要である。そもそも自民党の派閥とは総裁候補を出す存在だったのだが、近年は派閥とはいえ総裁候補のいないことが多くなっていた。そこに今春岸田さんが突如派閥解消を言い出して(麻生派を除く)派閥が解体。推薦人集めに派閥の拘束がなくなり、自在に集められるようになったため、出やすくなったと言われていた。とはいえ、実際は議員それぞれに思惑があって、推薦人に簡単に名前を連ねてくれるわけではない(もちろん重複推薦は不可)。マスコミの予想が飛び交って、10人近く出馬するのではないかとも言われているが、実際はどうだろうか。推薦人20人を集めて候補になれたところで、国会議員票367票及びその同数の党員票合計734票の過半数を取れないと当選はしない。つまるところ全国の党員票がものを言うので、地方を精出して回って党員に名前を書いてもらう必要がある。もともと知名度の高い議員が有利であるが、都知事選での石丸候補の急激な躍進例もあり、無名であっても支持を増やせないとは限らない。

 第1回投票で過半数を取る候補はおそらくおらず、この場合、上位2人の決選投票となる。その際は党員票が都道府県連票の47票だけとなるため、結局のところ、国会議員票367票の帰趨でほぼ決まることになる。日程は9月12日告示、27日投開票。誰が次の自民党の顔となるか。自民党の顔、つまりは来る総選挙に勝てる人かどうか。選挙に弱い議員ほど、トップの顔が誰になるかは死活問題である。というわけで、若手議員たちの多くが早々と小林議員を推す方向で固まったようにも聞く。議員票は若手も比例も衆参も問わず、同じ1票である。推薦人はわずかに各20名。それ以外の議員票をどれだけ積み上げられるか。党での政策論戦も行われるし(女性局長時代、その司会もさせて貰った)、そこで誰が抜け出して誰が脱落していくか。

 ところで立憲民主党は自民党議員の3分の1しかいないにかかわらず、推薦人は同じく20人と聞いて、驚いた。いくらなんでもハードルが高すぎるだろう。だからかどうか、昔の名前ばかり出てきて、代表選の時期が同じということもあり、埋没しているように感じられる。日本はそもそも二大政党に馴染む国ではないはずだが、対抗馬がもっとしっかりしてくれないと、政治が弱くなるばかりである。昨日は久々、歌舞伎座での観劇を楽しんだ。ランチはこれまた久しぶりのナイルレストラン(1947年創業、日本初のインド料理店)に。夜はカープ巨人戦をテレビ観戦。カープは戸郷をさっぱり打てなかったが、9回表、きっとココゾノ小園がなんとかしてくれるとテレビを消さなかったら、本当に同点打を打ってくれた(彼は報徳学園出身の甲子園スターだが、何球団もがドラ1競合した中で本当に活躍できているのは小園だけである)。来週は兵庫県人会に東京自彊会(明石高校同窓会)会長として出席する。悪名高い兵庫県知事の話もたっぷりと出ることだろう(こうなってもまだ辞めないのは強心臓に過ぎる…)。

 

カテゴリー: 執筆 | 総裁選、夏季休暇は明けた… はコメントを受け付けていません

『夫との生活が苦痛です。どうすれば離婚できますか?』

自由民主党月刊女性誌『りぶる』2024年9月号

カテゴリー: 執筆 | 『夫との生活が苦痛です。どうすれば離婚できますか?』 はコメントを受け付けていません

初めての付審判決定、ハリス氏副大統領候補を指名

 今朝の新聞で面白い記事を見つけた。「プレサンス元社長無罪の事件 担当検事を刑事裁判へ」の見出しで、下に「付審判請求の流れ」チャートが載っている。何のことやら、刑事司法関係者にしかたぶん分からないだろう、それくらいレアな事件だ。

 分かっている人には不要だが、一般の人向けに以下説明をする。日本の検察は大きな起訴裁量権を持つ。起訴便宜主義と言われるもので、有罪が確保できるだけの証拠が揃っていても、若年だ、初犯だ、軽微な犯罪だ、被害弁償がされている等々、様々な事情を考慮して不起訴(=起訴猶予)にすることができるという権限である(刑訴法248条 対して証拠が揃っていれば起訴しなければならないドイツは起訴法定主義である)。日本は前科者のレッテル貼りを出来るだけ避けるべく、実に3分の2の犯罪を不起訴で処理しており、その大部の理由が起訴猶予である(それ以外で多いのは嫌疑不十分)。検察が適正に裁量権を行使していればよいのだが、もし不当に不起訴にした場合、被害者(告訴人など)にはどういう救済方法があるか、は刑事訴訟法の基本的な論述問題である。その答えは2つ。1つは検察審査会への申立て。もう1つは付審判請求(準起訴手続ともいう。刑訴法262条)である。前者は結構マスコミに登場するので知っている人は多いと思われるが、後者はほとんど出てこない。なぜならば、罪名が刑法193条~196条などに限定されているからである。すなわち公務員、ことに裁判・検察・警察関係者(=特別公務員)の職権濫用が対象なのだ。つまり、検察はこうした者たちを庇い、起訴しないことが考えられるため、その場合の特別な救済方法が企図されているのである。具体例はほとんどなく、それでも警察関係者についてはこれまであったが、今回の事件は検察官であり、初めての事例だ。特別公務員暴行陵虐罪(刑法195条1項)は、「特別公務員がその職務を行うに当たり、被告人、被疑者その他の者に対して暴行又は陵辱もしくは加虐の行為をしたときは、7年以下の拘禁刑(懲役)に処する」。

 大阪地検特捜部が捜査した学校法人を巡る業務上横領事件で、プレサンスコーポレーション元社長が逮捕・起訴されたが、2021年10月、大阪地裁で無罪判決が言い渡されている。元社長の元部下については有罪が確定しているが、19年12月8~9日、大阪拘置所で取調べを受けた際、取調べを担当した検事(現東京高検検事)から一定時間にわたって怒鳴られ、威迫を受けて一方的に責め立てたられた事実について、これを陵虐に当たると認定したのである。ちなみに大阪地裁は23年3月、同じ事実を認定して陵虐に当たるものの継続性がないとして請求を棄却したが、高裁がこれを取り消し、審判に付す決定を出したというわけである。この決定は検察の起訴と同じ効力を持つので、この後は検察審査会による「起訴相当」決定と同様、裁判所が弁護士から指定検察官を選び、起訴された検事が被告人となって法廷で裁かれることになる。「陵虐」は警察官が女性被疑者を調べるに当たって性交渉を持つなどのイメージがあり、本件のような(ある意味程度の差こそあれ、普通に行われているのではないかと思われるような)暴言や威迫のような類いまで含められることになるのだろうか、今後の成り行きを見守りたい。 

 さてハリス氏。副大統領候補にミネソタ州知事ティム・ワルツ氏を選んだとのこと。ハリス氏と同じく60歳。テレビを通しても温厚そうな感じが伝わってくる。世評名高かったペンシルベニア州知事シャピロ氏はユダヤ系なので、対イスラエル問題がある中、選ばれないような感じもしていたが、その通りだった。激戦区という意味では後者のほうが良かったのだろうが、相性もあるし、こればかりはなんとも…。結果良ければ、である。アメリカの各州は(一部を除いて)過半数の得票で代議員総取りなので、得票数が上回ったからといって当選するとは限らないのである。ヒラリーの時がそうだった。たまたま私は開票速報のとき参議院にいて、皆で固唾をのんで見ていた。まさかでしょ、うそー、ありえない、と皆で言い合った記憶が生々しい。悪夢のようなトランプ勝利からまもなく8年になるのである。早い!

 ところでネットを見ていて、驚いた。ハリス氏の夫エムホフ氏の離婚理由は、子供2人を引き取っている?ことからして、妻の不倫ではないかと想像していた。普通は子供を妻が引き取るからである(もちろん法的には共同親権だが)。ところがどっこい。なんとエムホフ氏の不倫が原因だそうだ(氏も認めている)。相手女性は子供2人が通っていた小学校の教師(助手)かつ娘の子守。しかも妊娠させたそうである。その子がどうなったかは不明だ。中絶が簡単には認められない国なので、産んで里子に出したのか、あるいは流れたのか。そうした状況で、子供は(特に女の子は)父親を許せて、その後も一緒に暮らせるのだろうか。普通は母親についていくのではないだろうか。ハリス氏と再婚したのは離婚後4~5年だし、ハリス氏も夫の不倫については知らされているそうだから、大統領選に不利になることはないだろうが、有利なことでも決してない。

 今日9日で夏季休暇に入る。一応今のところしなければならないことは、した。来週一杯休みを取って、19日から業務再開。その頃には少しは涼しくなっていてほしいが、この焼け付くような暑さはなんだかずっとそのままのような感じもする。

 

カテゴリー: 最近思うこと | 初めての付審判決定、ハリス氏副大統領候補を指名 はコメントを受け付けていません

パリオリンピック、アメリカ大統領選など

 日本は記録的な酷暑続きであちこち自然災害にも見舞われているが、パリは30度に達さず快適だとのこと。あそこも非常に暑い時があるので、本当に良かった。3年前の東京オリンピックの時も暑さ対策が大変だったと思い出す。そもそも8月に開催するのは(この時期だと他の大きなスポーツイベントがないという)アメリカの大スポンサーの意向によるもので、1964年の東京オリンピックは10月開催だった。日本は今や10月でも残暑が残るが、それでも8月とは比較にならない。

 連日オリンピックの毎日である。私は男子体操競技が大好きなので、団体決勝の30日(火)午前2時頃~、そして個人総合の1日(木)午前2時頃~とリアルタイムで観戦してしまった。団体決勝は最後に鉄棒のみを残す時点で中国に3点以上離されていたので、ああ残念ながら金はダメだなと諦めた。各種目3人の試技で決まるところ、各人が中国選手に1点以上の差をつけるのはほぼ不可能だと、ほとんどの人が思っていたはずである。ところが、その後奇跡の逆転が起こり、最終的には中国に0.5点の差をつけて金メダルに輝いた。中国の2番手選手が2回も落下してマイナス2点となったからで、もし落下が(通常ありうる)1回に留まっていたら、この逆転はなかった計算である。目前にしていた金メダルをすっと逃してしまった中国選手・関係者・中国国民の無念さはいかばかりだろうか(2番手選手が無事に帰国でき、あと平穏に生活できることを祈る)。ところで今回気がついたのだが、前回の東京オリンピックで団体金に輝いたのはロシアだったのだ(ロシアオリンピック委員会として出場)。0.1点差で金を逃した日本は銀、そして中国は銅。今回ロシアは出場しておらず、もし出場していれば、日本金、中国銀だったかどうかは分からない。ロシアは伝統的に体操及びフィギュアスケートの強豪国である。

 東京オリンピックでの個人総合金メダリストは新星・橋本大輝19歳だった。種目別鉄棒の金も取り、今回の連覇を狙っていたのはみな周知だったが、彼は団体予選の時から不調が明らかだった。東京オリンピック以降互いに世界選手権の金を争うライバル関係にあった一つ上の張博恒が1位、2位岡慎之助(20歳)、3位橋本。橋本は、団体決勝あん馬で落下し(それが中国に引き離される大きな原因になった)、それを引きずったのか、個人総合のあん馬でもやはり落下、結局6位に終わった。だが、初出場の岡がミスなく6種目を終え、初金メダルに輝いた。張は床運動での失敗が響いて、岡に0.2点ビハインドの銀。銅の肖若謄(28歳)は東京オリンピック個人総合で、橋本に継ぐ銀を取ったベテランで、穏やかな笑顔が印象的な人である。岡選手、本当におめでとうございます! 橋本選手もどんなにか悔しいだろうに、岡の快挙を我が事のように喜んでいたのが心に残る。まもなく23歳。まだまだ十分に若いのだから(内村航平選手が初めて個人総合金メダルを取ったのはロンドンオリンピック、23歳の時だった。4年後リオで連覇。なお19歳での初参加北京オリンピックでは個人総合銀だった)、岡選手たちと切磋琢磨して体操競技を盛り立てていってほしいと願っている。選手層の厚い日本で代表に選ばれるのはそれだけで至難の業(柔道も同じ)。そのうえでのいざ本番で、どれほど良い成績を挙げても、個人総合に出られるのは各国2人が限度なので、大変なハンディだと思われる(ということで国籍を変えた選手もいた)。

 共和党副大統領候補のヴァンス氏がネットで大いなる話題になっていて、面白い。この人は、女性は子供を産んでなんぼのもの、家族とはそういうものなのだという古い価値観の人である。3年前、ハリスら民主党議員を槍玉に、「childless cat ladies」と公に宣った映像が世界中で多数回再生されている。いわく、子無しの猫好き女は、子供に恵まれず、猫を可愛がるしかない惨めな人生で、周りの人も惨めにする。民主党はそうした議員たちに牛耳られている、と。日本でこんなことを言ったら、それだけでアウトであろう。副大統領候補になったお陰でこれが蒸し返され、真意を問われた氏は「それは単に皮肉だ。だが言っている内容は真実だ」そうだ。ちなみに彼は2歳下のインド系エリート弁護士との間に3人の子供を儲けている。妊娠中絶は、たとえレイプであろうと近親間であろうと、絶対に許されない(近年共和党主導の連邦最高裁で、これまでの扱いを覆すそうした判決が下り、全米を巻き込む大問題になっている)。体外受精もダメだそうだ。カチカチの価値観の人で、女性票は大幅に減るであろう。なにせトランプはせいぜい1期。次の大統領候補は(順調にいけば)彼になるのだから、こわすぎる。

 ハリス氏は49歳で、同い年の弁護士と結婚した。自分自身の子供はいないが、夫に先妻の間の男女の子供がいる。10年前にはまだ10代だった彼らは、ハリスを「ママラ」と呼んで慕っているという。ヴァンスの上記発言に対して、彼らがネット上で反論し、また夫の先妻(映画制作者として有名らしい)が「ハリスは素晴らしい女性で、我々3人が親となってblended familyを作っている」と反論した。ヴァンスのいう「子無し」は継子や養子を含まないようなので、これら反論は痛くもかゆくもないのだろうが、しかし、不妊は一定数いて、子供を持ちたくても持てない人もたくさんいるのだし、そういう人たちへのシンパシーが全くないというのは、彼の人間性の欠如を窺わせる。子供を産まないということで切り捨てるくらいだから、障害のある人などは当然のように切り捨てるのだろう。多様性が叫ばれている昨今、伝統的な家族しか認めないというのはあまりに狭量である。子供なんかいてもいなくても、関係ないでしょ。そんなことは全くもって私的なことで、政治家としての力量とは無関係だわと面と向かって反論してやればよいと思う。ちなみに、子供がいない女性と同数の子供のいない男性がいるので、そういう人たちも差別されているのかと思いきや、男性の場合はbachelor として賞賛されるのだそう。なんだ、その男女差別は! アメリカはすごい男女差別だとは聞くけれど、確かにそうなのである。

 ハリスが副大統領に就任したときに、彼女の自伝を読んだが、あまり心には残らなかった。夫が50歳近くでの再婚なのに、花束を持ってプロポーズするんだとびっくりしたくらいである(笑)。今回、『カマラ・ハリス物語』(岡田好恵著)と『カマラ・ハリスの流儀』(ダン・モレイン著 土田宏訳)を図書館から借りてきて、前者は薄いし一気に読んだ。後者を読み始めたばかりだが、女性かつアフリカ・アジア系として初の副大統領になり、大統領候補に指名される運びになった希有な人のことは、アメリカを理解するうえでも知っておいたほうがよいと思うのである。ただ、いくら検察官としてのキャリアが長いとはいえ、トランプを犯罪人、自分はそれを糾弾する人といった演説は反感を買うのではと危惧するが、それは日本人的感覚なのかもしれない。彼女は2年間の上院議員のときも続く副大統領のときもトランプを糾弾することで存在感を示してきたのだし、またアメリカは相手を個人的に徹底的に攻撃するのが普通である(このやり方が好きでないのは、きっと日本人的感覚なのだろう)。ハリス氏の支持は上がっているが、しかし、ロシア問題、中東問題、安全保障問題など、実際どこまで分かっているのか覚束ない感じがして、何かの折りに急に風船が萎むように、一気に支持が下がってしまわないか、それが不安である(杞憂であれば嬉しい)。

カテゴリー: 最近思うこと | パリオリンピック、アメリカ大統領選など はコメントを受け付けていません

バイデン氏撤退、ハリス氏が後継

 ペロシ氏もオバマ氏もバイデン撤退を示唆していたが、本人がそれで素直に納得するようならば認知症ではないよね、と思っていた。だが彼は、「国と党に最善の利益」だとして残り任期を大統領として全うし、選挙戦から退くとの素早い決断を下したのである! やはりそれだけの政治家だったのだ。なんであれ人間、引き際が肝心である。

 そして自らの後継として、ハリス副大統領支持を表明。もちろん順当である。そもそも任期中自分に何かあれば、副大統領が自動的に大統領に昇格することを前提にした人選なのだから。わずか1日にして彼女は支持を拡大させ、記録的な額の寄付を集め、来月の大統領候補指名がほぼ確実になったとの報道が流れている。やるねえ。ここでゴタゴタしていたら、共和党を利するだけだ。ハリス氏に不満があるとしても、内輪もめは避け、民主党内で一致団結しなければ、次の4年共和党にアメリカが牛耳られる。しかも法治国家って何?!といった風情のトランプなのである。トランプを排除し、民主党政権をさらに続けることこそが党の利益であり、国の利益だと、多くの民主党員が考えた結果のハリス支持だと思えば、非常に分かりやすい。

 選挙戦で大事なのは副大統領候補を誰にするか、である。伴走者は大統領を補完する人であるべきだから、男性であり白人、そしてハリス氏出身の西部ではなく、中部か東部の人で、なおかつできたら知名度の高い人が選ばれるべきである(個人的には大統領候補として名が挙がっていたカリフォルニア州知事のニューサム氏がいいと思っていたが、大統領と同じ州だから、外れる)。というだけで適格者はおのずから限られてくる。共和党員でもトランプを支持しない人も多いから、そういう人も取り込んでいく姿勢で臨んでいくだろう。

 ハリス氏はトランプよりほぼ20歳若い。トランプにしてみれば、認知老人を相手に戦うのとは様相がまるで異なってくるのだ。バイデンにしても、トランプが指名されてほっとしていたのだ。もし50代のヘイリーさん(元国連大使のインド系女性)だったら世代交替が印象づけられて、それだけで民主党に不利益だと恐れていたのである。しかしバイデンさん。4年前も実は認知機能の衰えが、今ほどではもちろんないにしろ指摘されていて、1期だけの中継ぎで出馬していたはずなのに、いつの間にか(普通の大統領のように)再選を目指す形になっていた。適当な候補者がいなかったといえばそうだろうが、寂しい話である。日本でも「次の総理は誰?」で誰も挙がってこないのだが、アメリカだってどこだって…と引き合いに出されるくらいである。フランスもイギリスも政治がごたついている。一つにはネット社会になって情報が拡散していること、及び移民も増え貧富の差が拡大していることが背景にあると思われる。

『ようこそ、難民!(100万人の難民がやってきたドイツで起こったこと)』という児童書?を読んだ。ドイツ人が書いたのを翻訳したのかと思っていたら、著者はドイツ在住の日本人・今泉みね子さんだった。ドイツが国家の基本姿勢として憲法にも取り入れ、積極的に難民を引き受けているのは、ナチスドイツの蛮行を反省していることが大きいだろう。国民がさらなる難民引き受けに強硬に反対するのにメルケル首相が珍しく声を荒げて、公に怒りを示していた映像の記憶が鮮明である。難民とは直接関係はないが、ドイツは10歳時(小学4年生)でギムナジウム(日本の中高校の普通科に当たる学校。5年生から12・13年生)に進むか、レアルシューレ(実科学校、10年生まで)かハウプトシューレ(基幹学校、9年生まで)に行くか、生徒の能力や将来の希望によって決定されることを、改めて認識させられた。将来職人になるか、大学に進んで知的職業に就くかが、早期に決まるのである。日本のように、大学に行きたければ誰でもいつからでも行けるという自由は、ないのである。

カテゴリー: 最近思うこと | バイデン氏撤退、ハリス氏が後継 はコメントを受け付けていません