149 閉会後 決算委員会 2000/9/06   [ BACK ]
○佐々木知子君 自民党の佐々木知子でございます。
 実は、文部省には歴史教科書の問題や英語教育の問題、パソコン教育に関連してなど、聞きたいことは山ほどあるんですけれども、時間が限られておりますので、現在問題になっております少年非行の観点に絞らせていただいて質問をさせていただきたいと思います。
 御存じのように、与党の少年法改正原案というのが出されております。少年非行の処遇というのはもちろん法務省なり裁判所なり警察庁なり、また十四歳未満であれば少年法ではなくて児童福祉法ですから児童相談所等厚生省の管轄ということでございますので、専ら文部省に対しては少年非行の予防という観点からお伺いをすることになろうかと思います。
 非行を生むのは、基本的には、私は一義的には家庭だと思っております。親のしつけが問題だろうというふうに思っている、私も検事を十五年間やっておりましてますますその感を強くしたわけでございますけれども、いかんせん家庭の機能というのは、喪失とまでは申しません、かなり弱体化している。戦前は家制度というものがございましたし、核家族でもございませんでした。今は親と子が一対一で向き合っている。中にはかなり父親の不存在という家庭もございまして、そして地域社会というのが全然機能していない。そういうような中で親だけが子供に対してのしつけなり教育を担うというのは非常に難しかろうと。それで、その分、非常に残念というか大変でしょうけれども、学校にその機能というのがある程度委託なり移譲されなければいけないという事態に至っているのが現状だろうと思うわけでございます。 〔委員長退席、理事鹿熊安正君着席〕
 私、このたび、切れる子の背景調査を文部省がやることになったという報道に接しまして、ああ、やっとやってくれることになったのかというふうに実は思った次第でございます。成人犯罪の場合は、御承知おきのように、捜査官がどこまで調べられるかわかりませんけれども、どういう生育環境で育ったかというのをもちろん聞きます。そして、それは公判に出されますし、冒頭陳述書なり判決という形で報道されることもございますし、報道されなくてもある程度の事件については、判例時報とか判例タイムズ、一般の方でも入手して調べることはできます。
 ところが、少年の場合には、かなり大きな事件でも、御存じのように少年審判は非公開でございます。で、審判決定というものは報道されないのが建前になっております。三年前の神戸児童連続殺傷事件につきましては、極めて特異な例であるということで、裁判官が英断をされまして審判決定の要旨というのが報道されましたが、これは極めて特異な例でございまして、ほかのことに関しては、なぜその少年がそういう特異な事件を起こしたのか、どういうことが問題の背景にあったのか、どういう家庭でどういう育ち方をしたのか、また精神障害というのはどんなものであって、それは治るものなのか治らないものなのか、これが全然わからないというのが実態でございます。
 だからこそ、あの少年Aの事件につきましても、少年Aはどこにでもいるというような、私からすれば、ちょっとひどいのではないかと。学校とか社会に問題があるというような論調も、マスコミも非常に責められるべき点は多々あると思いますが、そういう報道も随分なされて、一般国民は不安にも陥ったものなんです。
 私はそういう意味で、非行少年につきましては何が本当に問題だったのか、特に最近は切れるとかむかつくというようなことがキーワードになっております。切れる子というのは頭が真っ白になると言います。そのときに全然言葉がなくなって、自分が何をしているのかわからなくなるというようなことも言っております。自己抑制力がないというのは、カルシウムが欠如するとそういうことになるという報告もございますけれども、本当のことはよくわかりません。
 切れる子の背景調査をするという報道がありましたけれども、具体的にどういう事件を選ばれて、どういう方がどのような調査方法をされるのか、それについて御説明いただきたいと思います。
○政府参考人
 (本間政雄君)
 この調査研究でございますが、現在社会的に大変憂慮されております子供たちの切れる状況。切れるということの定義は、余り厳密な定義はこの調査研究においては考えずに、一般的に衝動的な暴行の経験があるというふうにとらえまして、この切れる状況について、科学的な事例分析を通じてその原因とか背景というものを明らかにしよう、そういうねらいを持ったものでございます。 〔理事鹿熊安正君退席、委員長着席〕
 具体的な調査の観点といたしましては、社会との関連を踏まえつつ、家庭や学校での生育過程、その子供の生育のプロセスにおきます親とか学校あるいは先生方のかかわりを究明するということにしております。
 具体的な調査方法でございますが、今後、有識者によりまして組織をいたします研究委員会におきまして検討するということになっておりますが、現段階では、まず第一番といたしまして、学校、家庭裁判所、警察、児童相談所といったような関係機関の協力を得ながら、四百から五百程度の切れる子供の事例の検討。それから、この事例に関して親に対する聞き取り調査。三番目に、子供の生育歴に関する百程度の事例。四百、五百ぐらいの事例についてその事例の検討をしまして、さらにそこから百程度選びまして詳細な分析、考察を加えたいというふうに考えております。
 この調査研究でございますが、平成十三年度中に取りまとめるという予定でございまして、今後の家庭教育への支援、あるいは学校教育の充実を図る上で示唆に富んだ有意義な結果が得られるものと期待をしているところでございます。
 文部省としましては、この結果の内容を踏まえまして、参考情報の提供をするというようなことを通じまして適切な対応を図っていきたいというふうに考えております。
○佐々木知子君 平成十三年というのは随分先のような話でございますけれども、できるだけ早く有効な調査を行って、それをぜひ現場の教育で役立てていただきたいというふうに思っております。
 次に、スクールカウンセラーについてお聞きしたいんですけれども、現在はモデル事業ということで選ばれた中学校にのみ配置されているということですが、次年度からは補助事業ということで正式にどんどんふやしていって、五カ年で小規模中学校を除いて全中学校に一人ずつ配置するというふうに報道では聞いておりますけれども、スクールカウンセラーというのはどういう資格を持っている方で、現在どれぐらいの学校にどの程度配置されて、常勤か非常勤かよくわからないんですが、どういうような形でカウンセリングに当たっているのか、ちょっと現状をお聞きしたいと思います。
○政務次官(鈴木恒夫君) お答えを申し上げます。
 スクールカウンセラーのまず資格でございますけれども、一つは臨床心理士と言われる資格を持っている方々、この方々が大体スクールカウンセラーの八割を占めていると御認識いただいて結構でございます。もう一つは精神科の医者、そして心理学系の大学教授あるいは助教授、常勤講師、この三つの資格を持っていらっしゃる方々から選ばせていただいているということでございまして、現在二千二百五十校、小中高に配置済みでございます。
 全国に四万校ございますので、まだほんの五%程度の数字でしかございませんけれども、具体的にじゃどういうことをやっているかと申し上げれば、一人のカウンセラーが、例えば精神科のお医者さんの場合、自分の医院の医者のお仕事を終えられて学校に来ていただいて、一週間に二回程度、人によってさまざまなようでございますけれども、八時間程度部屋にいていただいて、そこに主として子供たち、どういうわけか教員も結構おるようでございますけれども、あるいは保護者、そうした方々の御相談を受けている、こういう現状にございます。
 やはり悩みや不安を持っている子供たち、あるいは教師、保護者は意外に多いようでございまして、相談相手としてスクールカウンセラーが果たしている役割は非常に大きいと私たちは評価をいたしておりますので、来年度、とりあえず予算措置も伴うものでございますから、ほとんどの中学校に一人ずつぐらいはスクールカウンセラーを配置できないかと。今、そのための努力を続けているところでございます。
○佐々木知子君  全中学校ということで、小学校とか高校、また特殊学校のようなものについてはまだ考えていないということでございましょうか。
○政務次官
 (鈴木恒夫君)
 予算に限りもございますもので、とりあえず中学校を対象に全部やってみようと。しかし、当然のことながら、中学校でスクールカウンセラーをやっていらっしゃっている方でも小学校から御要請があれば機動的に動いていただくと。高校についても同様のことを考えておりますし、その他の特殊学校についてもできるだけ柔軟に対処していきたいと考えております。
○佐々木知子君  今、評価はなかなかいいようだというふうにおっしゃいましたけれども、私が接したのでは余りいいように言っていない人もいるようなんですが、どういうような観点から評価がいいというふうにおっしゃるわけでしょうか。
○政務次官
 (鈴木恒夫君)
 さまざまな御相談事があるように想像を容易にできるわけでございますけれども、例えば学校内暴力につきまして我々がつかんでおりますデータを申し上げれば、全国で二九・二%も学校における校内暴力がふえている中で、スクールカウンセラーが置かれている学校では〇・七%減っていると。あるいは、不登校について申し上げれば、全国平均が二二・六%でございますところ、スクールカウンセラーを配置してございます学校では九・二%の増加にとどまっていると。そうした効果が顕著に数字にも出てきている段階でございます。
○佐々木知子君  今、学校内暴力と不登校というのが出ましたけれども、スクールカウンセラーが対象としているのは恐らく不登校とか校内暴力だけではないんだろうというふうに思いますが、ほかに私が把握しているところでは、いじめの問題だとかそれから学級崩壊の問題などがあろうかと思いますが、いじめというのは、非行少年を処遇している方の感覚のいじめと文部省が定義されているいじめというのは多分違うんじゃないかと思うんですけれども、どういうような形のいじめというふうに把握されておられて、今いじめは小学校、中学校、高校、そういうところでふえているのかふえていないのか、どういうふうな問題点が今顕著にあるのか、そういうものについての御認識はいかがでしょうか。
○政府参考人
 (御手洗康君)
 文部省につきましては、いじめということで学校現場の実態を昭和六十年から全校の調査をいたしているわけでございますけれども、そこでは調査の対象といたしまして、まず一つは、自分より弱い者に対して一方的に身体的あるいは心理的な攻撃を継続的に加えて相手がそれによって深刻な苦痛を感じているものという形で、学校の内外を問わず各学校が把握したものについて、各都道府県教育委員会を通じて小中高等学校及び特殊学校について調査しているわけでございます。平成十一年度の発生状況は三万一千件ということで、対前年度一三・八%減ということで、いじめにつきましては四年連続で減少しているという状況でございます。
 こういったいじめがとりわけ深刻に考えられる事態といたしましては、継続的に一方的に加えられるということは、やはり従来の子供同士の人間関係から比べますと非常に深刻な問題として浮かび上がってきているという状況であろうかと思っております。
○佐々木知子君  いじめというのは、いじめ非行というのがございまして、究極の場合はいじめて非行をさせる、万引きをさせるとかですね。それから、いじめ非行というのは、この前の名古屋の五千万円恐喝事件に顕著にあらわれておりますけれども、いじめというのではもう済まないような事件になっているというようなものもございます。
 ところが、学校は余り把握はされておられなかったようで、学校で把握されておられるいじめというのは恐らくもう本当に一部のものでしかないんだろうというふうに思うんです。かなりそこをすくい上げるような努力をしないと、たまたま上がってきたものだけを把握していたのでは、本当に重大なものは恐らく見過ごされているのだろうというふうに思うんですけれども、そこら辺の認識はいかがですか。
○政府参考人
 (御手洗康君)
 確かに、各学校が主観的につかんでいるというものを上げていただきますので、教師や校長等が掌握していないということが調査の実態上、当然私どもはあり得るものと承知しております。また、各都道府県から上げられております数字につきましても、各県によりましてかなりいわば発生率といいますか、差がございますので、現場におけるいじめの把握の状況、あるいはそのいじめに対するとらえ方というのは、やはり地域によっても学校によっても随分違うだろうという気は私どもいたしております。
 特に、名古屋の事件にいたしましてもあるいは岡山の金属バットの事件にいたしましても、どうもああいう問題が深刻化いたしたケースにつきましての学校のとらえ方を見ておりますと、現場の感覚としてもう少し、からかいというような形で受けとめて、いじめというものが子供にとってどういう形で影響を与えているかということについて担当の教員等が必ずしも十分受けとめていない、そういったところが深刻な事態の発展を招いているというようなケースが見られるわけでございます。
 文部省といたしましては、この調査は一つの調査でございますけれども、いずれにいたしましても、各学校において教科担任、学級担任、あるいは生徒指導担当、あるいはスクールカウンセラー、あるいは家庭との連携、そういった組織的な対応ができるようにということで、生徒指導の手引あるいは事例集等も各都道府県でつくりながら、具体的なケアができるような指導には努めてまいりたいと思っております。
○佐々木知子君  先ほど学級崩壊というのが出たかどうかわかりませんけれども、学級崩壊というのはマスコミの用語がひとり歩きしている感もあるんですけれども、どういうものを学級崩壊ととらえて、どういうふうな問題点があるというふうに認識されておるのか、それについてお伺いしたいと思います。
○政府参考人
 (御手洗康君)
 学級崩壊につきましては、いじめや校内暴力等の調査を文部省はいたしていないわけでございますけれども、先ほども出ましたけれども、国立教育研究所を中心に平成十年度に研究委嘱をいたしまして、百五十ほどの事例を克明に分析した研究会の報告書が出されて、平成十二年三月に最終報告書が出されているわけでございます。
 ここでの研究会では、いわゆる学級崩壊ということにつきましては、集団教育という学校の機能が成立しない、こういった状態が一定期間その学級で継続している、それからもう一つは学級担任による通常の手法では問題が解決できない状態に至っているということで、従来、どこの学校でもやはりある学年、あるクラスは非常に学級経営が困難だという状況は多くの学校で見られたわけでございますけれども、いわゆる学級崩壊という形で指摘されております近年の状況は、まず一人一人の子供がどうだということではなくて、学級全体が集団として教育が成り立たないような状況になっているということでございます。
 これにつきましては、各都道府県におきましてもそれなりの調査あるいは事例集の作成等を行っておりまして、全体、各県の調査結果を見ますと、全学級数のおおむね〇・一%から一%ぐらいの間でそういう状態が見られるということで私ども承知しているところでございます。
○佐々木知子君  先ほど、スクールカウンセラーの内訳として八割は臨床心理士で、それ以外には精神科医もいるというようなお話がありましたけれども、神戸の児童連続殺傷事件も、何か親が児童相談所に行ったりとか、いろいろやったんだけれども有効な手を打ってもらえなかったということで、今回のバスジャックの事件も、精神病院にちょっと入ったりとかいろいろしているんですけれども、もっと精神科医との連携がとれれば未然に防げ得ただろうなと思う事件というのもかなりあるんだろうというふうに思うわけですが、とある報道によりますと、都道府県の教育委員会に精神科医を非常勤で配置するというようなことがございましたけれども、これについてはいかがでございましょうか。
○政務次官
 (鈴木恒夫君)
 二千二百人ほどいらっしゃいますカウンセラーの中で精神科医は現在九十三人でしかございません。精神科のみならず、少年非行あるいは問題児の存在の背景に、極端に申し上げますと、例えば化学物質の影響さえあるんじゃないかという議論もございますほどに、さまざまな角度からの分析も少年非行の問題には出てきております。
 したがいまして、このカウンセラーに限らず、もうありとあらゆる機関、子供にかかわる部分が総力を挙げてこの問題に総体的に取り組むということが必要であると考えておりまして、冒頭、委員御質問の、少し分析の会を国立公衆衛生院の力もかりて立ち上げることにいたしましたけれども、そこの分析を担当する方々の中に例えば少年院の方とか警察の方とか、あるいは精神科医に限らずお医者さんであるとか、そういう現場の方になるべく入っていただけということを今事務当局には指示してございます段階でございます。
○佐々木知子君  次に、薬物教育についてお伺いしたいと思います。
 覚せい剤は、御承知のように、今は第三次乱用期に入っているというふうに言われております。少年の占める割合が一〇%に今満つるか満たないかぐらいですけれども、増加しているのではないかと言われておりますし、また特筆すべきことは、中学生、高校生で検挙される者がかなりの数見られるようになったということがございます。
 覚せい剤がこれだけ蔓延しているというのは、実は世界じゅうを見ましても日本だけと言っていいぐらいかと思いますが、ほかの国では薬物といえば麻薬なんですね。普通はヘロインであり、コカインであり、ハードドラッグと言われているものなのですが、日本場合は、なぜか頭すっきり体しゃっきりと言われる覚せい剤が蔓延している。これはハードドラッグではなくソフトドラッグなんですけれども、なぜかといえば、非常に日本人は勤労意欲が高いので、寝ずにずっとその間トラックを運転していたいとか、寝ずにずっと夜中じゅうマージャンをしていたいとかいうのに役に立つので覚せい剤がはやっているというのがまことしやかに言われておりまして、私も本当ではないかというふうに思っておりますが、少年は普通、薬物といえば毒物劇物取締法違反、つまりシンナー等の有機溶剤がほとんどだったのですが、それに覚せい剤がかなりふえてきたというのが特徴的な現象でございます。
 これについて文部省の方ではどのような問題認識というのをされておられるのか、まず伺いたいと思います。
○国務大臣
 (大島理森君)
 覚せい剤の検挙者数は、先生が御指摘のように、平成十二年上半期に十一年に比べて倍増しております。大変憂慮すべきことであると思っております。
 いずれにしても、そういうことにどのように対応しなければならないかということでさまざまな観点からやっておるところでございますが、意識調査、それからビデオの作成、やっぱり実際に目で見せてそういうことがいかに体に影響あるかということ、それから乱用防止の教室を推進したり、シンポジウムを開催したり、ポスターをつくったり、いずれにしても各般のことをやっております。
 私どももこの問題は大変憂慮すべき問題という認識でなお一層そういう対策に努力してまいりたい、このように思っております。
○佐々木知子君  薬物教育は、今さっきおっしゃいましたけれども、実際に継続的になされておられるんでしょうか。警察庁からそういう方を呼んで実際に薬物を見せながら、この薬物を使用するとこういうことになるんですよということを教えているのか、それとも学校の先生が何らかの形で教えておられるのか、どういうような形なんでございましょうか。
○政府参考人
 (遠藤純一郎君)
 薬物乱用防止の教育につきましては、平成九年の調査によりますと、高等学校では保健体育科あるいは家庭科、理科、ホームルーム、学校行事と、いろんな時間の中で教えている。中学校でも同様でございまして、保健体育あるいは学級活動、理科、道徳、社会科、学校行事と、こういったような中で教えている。小学校でも学級活動、体育科、理科、道徳と、こういうところでも教えているわけでございますけれども、それだけではなくて、今、大臣がいろんな施策を申し上げましたけれども、中学
校、高校におきまして薬物乱用防止教育というのをぜひ全学校でやってくださいとお願いをしておりまして、その防止教室には警察官あるいは麻薬取締官のOBの方に来ていただきまして、実際の恐ろしさといったようなものを子供たちに身をもって教えられるようなそういう教室もやらせていただいている、こういうような状況でございます。
○佐々木知子君  現在は余りまだやっていないんじゃないかなというふうに聞いたんですけれども、これから本当に各学校、私は、もう小学生の段階から警察官に実際に来てもらって、麻薬取締官でもいいですけれども、実際に覚せい剤ってこんなのですよ、それから大麻というのは、マリファナそれからハシッシュと二つありますけれども、こんなのですよというふうに見せてもらって、例えばハワイに行って、ああおもしろいのがあるからというので、おもしろそうだからやってみるというファッションみたいな形でやることは決してないように、小さい段階から教えていただきたいというふうに思っております。薬物で国は滅びますので、アヘン戦争の事例もありますけれども、引くまでもなく、これは本当に小さい段階からきっちりと教育をしていただきたいというふうに思っております。
 そして、他の関係機関、警察とか、今申されましたけれども、いろいろな機関との間の連携というものをきっちりとってやっていかないといけないと思います。
 私、これが非常に深刻だと思いますのは、特に女子の間に援助交際などを機縁として覚せい剤というのは簡単に手に入るようになっております。覚せい剤がなぜこれだけ中高生にも浸透するようになったかと言ったら、イラン人が偽造テレカと一緒に販売するようになって、小口になりましたので一個五千円とか一万円とかで手に入るようになったわけです。そうすると、援助交際を一回やると何回分か手に入るというような感じになりまして、非常に手に入りやすくなった。気軽さというのが今、少年非行の一つのキーワードでござ います、気軽さ、手軽さというのが。それで手に入るようになったと。
 今、少年院に入っている女子、女子に限っていえば二人に一人は覚せい剤なんです。これを成人の女子の場合に見ても、刑務所に入っている二人に一人は女性に限れば覚せい剤なんです。覚せい剤というのは身体的依存度はございませんけれども、精神的依存度が非常に高いと。執行猶予を受けたその足で買いに行くなんというのはもうざらにあるようなことでございまして、やめられない。だから、小さなとき、小さなときというか少女のときに手をつけたが最後、そのときの快感というので、何かがあると、フラストレーション が起こると覚せい剤に逃げてしまうというのが生活体験みたいになってしまって、ずっと成人になっても抜けられない、そして人生をそのままで終えてしまうというようなことになります。
 覚せい剤というのは、御存じのように、非常に危険な薬物でして、覚せい剤を常用しておりますと精神分裂病に非常に似た妄想や幻覚が起こりまして、その幻覚、妄想下で通り魔的殺人をやるというのは非常に多いケースでございますので、ぜひ覚せい剤に対しては厳しい処置で、学校段階で取り組んでいただきたいというふうに思っております。
 次に、生きる力をつける教育ということで、雑駁な表題を立てさせていただきましたけれども、今、少年非行というのは平成七、八年ごろから第四次の波に入っているというふうに言われております。昭和二十五年ぐらいをピークにしたのは生活型非行というふうに言われておりました。生活に困っているので少年が非行に走る。昭和三十年代後半の非行となりますと、今度は反社会型非行だと言われた。昭和五十年代の後半に非常にふえましたけれども、これは遊び型非行だとか初発型非行だとか言われております。
 今は、どう言うんですか、非社会型非行。反社会型ではなく、そういうポリシーがあって非行に走るわけではなくて、何となく適応しにくいから、社会にいづらいから、学校にもいづらいから、何だか家庭にもいづらいし、どこにも居場所がないからというので非社会型非行。そして、精神科医の先生によっては自己確認型非行といううまいつけ方をされておられるのもおりました。つまり、自分というものの生というもの、自我というものが非常に希薄なので、それを確認しようとして非行に走っているというのが今の特徴だというようなことを言っておられました。全体的に当てはまることは決してないと思いますが、確かにそういう傾向というのはあるんだろうと思います。
 私、最初の方に核家族化というのを申し上げました。そうすると、おじいちゃん、おばあちゃん、それからそういう年配の方もおられませんので、人が死ぬということを身近に見るということが余りなくなりました。そして、ちっちゃな子というのもそんなにいなくなりまして、少子化でございますので、生と死というものに対する希薄な概念というのが今特徴づけられると思います。それに加えて、ゲームとかが随分はやっておりまして、バーチャルリアリティーの世界で人はどんどんゲームでは死ぬんだけれどもリセットすればまた生き返ると。生と死というものに対して、本当に自分の実感として感じられない子供たちが非常にふえているということがやはり今の非行の特徴としては挙げられるのではないかと思います。
 その生きる力をつけるためにやはり一番大事なことは、自然に触れ合わさせる、人間というのはいかにちっぽけなものなのか、生きているというのはどういう意味があるのかということを知らせるということが一つ大事なことであり、そして、これは岩城先生も触れられましたけれども、体験教育、体験学習ということで、生と死を身近に見る教育、身近に知る教育というのが私は必要なんだろうと思います。本当はそれは家庭教育がやるべき次元の問題だったんですけれども、なかなかそうもいかなくなったので、もう学校とかそういう地域社会にやってもらわないといけないということになっているわけです。
 これは非行少年の試験観察、試験観察というのは保護処分とかを決める前の段階ですけれども、老人ホームに行かせたりとか乳児院に行かせたりとかしてそういう方たちの面倒を見させる、ボランティアみたいなのをさせるんですけれども。そうすると彼らは、ありがとうとかおじいちゃんに言ってもらえる、おばあちゃんに言ってもらえる、それがすごくうれしかったと言うんです。だれにも感謝されたことがないと言うんです。そういうようなことを体験させるというのは非常に有益だというふうに言われております。
 岩城先生のところのお答えにもあったんだろうと思いますけれども、いま一度そういうようなことをどういうふうに取り組もうというふうにお考えなのかどうか、お聞かせ願いたいと思います。
○国務大臣
 (大島理森君)
 佐々木先生は御本も書いたり、実際に犯罪という問題に対して直面し大変御経験がいろんな意味であって、さっきからの議論を聞いておりまして大変参考になりました。
 いささか時間がないので、本当は今までずっと先生が議論したことにちょっとずつ答えたいと思っておるんですが、私は、実は教育というのはだれでも受けてだれでも苦労している、だから教育論を言うとある意味では国民だれでもできる非常に広範で重要な問題だと、こう言っております。
 そして、今時、いろいろな問題を見ますと、私は一言、今の子供の中に孤、つまり孤立の孤の世界が広がって社会性がなくなっているんじゃないだろうか、文部大臣に就任して以来ずっと言ってまいりました。
 そうすれば、社会性を身につけるためにどうしたらいいんだろうか。国民会議の偉い先生方の御議論もとても参考になりますし、それからいろんな方々の御意見も参考になりますが、実は夏休み中に小学校、中学校、高等学校の主に生徒指導、養護教育をやっている先生方に集まってもらいました。それで、あなたたちがここで言うことは一切だれだれさんがこう言ったからどうだということは言わないから、もう学校の悪口でもいいから、文部省の悪口でもいいから聞かせてくださいと、こう言いました。そのときに先生がお話しされたのと同じようなことを言ったのは、今非常に認識しておるんですが、つまり自己確認ということをやっぱりおっしゃいました。
 実は私自身も、鈴木総括はもっといい子だったかもしれませんが、余りいい子じゃなくて、子供の犯罪というのは、私は、ステレオタイプでこれ型、これ型ということを決めるということよりは、やっぱり自己確認というのは昔から根底にあったんじゃないだろうかという気がするんです。
 それから、先生方の話を聞きますと、実は子供の成長を親が気がつかない。例えば女性でいうと、女性の体の成長が、変化が意識の変化になっている、親は昔からの子供の姿で子供を見ていく、そのギャップの違いで子供たちは疲れたり切れたりということがよくあるんだ。それもある意味では自己確認みたいなものをしたいということなんだ。
 私は、そういう意味で、子供たちに社会性を身につけるために自然体験も必要です、本当に必要だと思います。先般も国立少年自然の家へ行って先生方のお話を聞いていたら、四泊五日ぐらいは最低必要だと言うんです。そうすると、初めて自然というものがわかると言うんです。それから、奉仕活動の件もお話しされました。これもやっぱり人と人の中で人間が生きているということを知っていくためにはもっともっと充実させなきゃいかぬと思っております。それから、今、異年間というか、一年生、六年生一緒になって行動する、こういうことを目を輝かせてやる、そういうふうな事例があります。
 したがって、先生から御指摘いただいたように、全く同意見でございまして、社会性を身につけるためにある意味では教育をやっているのかもしれない、教育の目的というのはそこにあるのかもしれません。そうい
う意味で、私どもは総合学習という、ゆとりのあるというと御批判をいただいている部分がありますけれども、まさに社会性を身につけるために自然体験、奉仕活動、そしてまたその他あらゆることを充実させていかなければならぬ、こういう思いで来年からの概算要求もやってまいりますし、また来年、通常国会における教育改革の大きな柱の法案として、何らかそういうことを形にしてまいりたいとも思っております。
 具体的にどういう施策かということについては、もしあれであればお答えさせますが、方針としてはそういうことをやってまいりたいと思います。
○佐々木知子君  もう時間がなくなりましたので、私はあとは先生の質をやはり高めてほしい、岩城先生もおっしゃっておりましたけれども。
 ことし四月施行の学校教育法施行規則等の一部改正で、教員免状を持たない民間人が管理職に登用されるということになったのは承知しておりますが、これは現場の先生に聞きますと余り評判が芳しくないんですよ。現場を知らない人が上に来ているから、もう理想ばかりを言って、こうやろう、ああやろうと。実際は本当に大変なんですね、親もひどいし、PTAもうるさくて、教育委員会もいろいろありますし。
 大変なので、私はこれはちょっと一概にいいとは思えないので、できたら今度、どんどん教員免状というのを、社会体験をされたような方に現場に携わっていただく、現場の先生になっていただく、本当にやりたい方が、本当に教育に熱情を持っている方がなってもらえるようなシステムにしていただきたいなということと、社会との接点を持たせるためにぜひ職業教育というのを小さなときからやってほしいなというふうに思っております。
 今、フリーターが非常にふえております。それ自体が悪いとは決して申しませんけれども、何になりたいかというもののビジョンが描けなければ、それは自分が生きていく質というものに対して非常にこれは問題を持ってまいりますので、ぜひ職業教育というのを小さなときから社会との接点を持たせるという意味でもやっていただきたいなと御要望いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

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